甘い重い片想い
先輩が好きだ。
どうしようもなく好きだ。
先輩と二人ではしゃいだ次の日の筋肉痛を、先輩とのつながりのように大事にしてしまうくらいに好きだ。
同じ作家さんが好きで。
お互いにディベートが好きで。
本を貸し合ったりして。
いろんな談義をして。
二人きりで何度も帰ったり。
時には先輩に誘われて一緒に帰ったり。
寒い日には手を繋いで温め合ったり。
他の学年の人からも噂になるくらい仲がよかったり。
そうやってマウントを取って、脈ありだって確かめようとしてみたり。
自分なんか好きになるはずがないってわかっているのに。
一緒に帰ろうって誘うのも、先輩が本を貸してくれるのも、先輩がいろんな理由をつけてわざわざ教室まで来たりするのって、全部私だけなんだって思うと。
どうしたって脈ありを信じたくなってしまって。
………時々、時々、本当に、好きで好きでどうしていいかわからなくなってしまうことがある。
筋肉痛につながりを見たり、そういうところにあらわれていると思うけれど、先輩に会えない長い休みはどうしたって辛くて、悲しくて、叫び出したくて、泣き出したくて、なのに泣けないし叫べなくて。
私の心の内を全部相談するなんてできない。
重いなんて思われたくないから。
貯めていく先輩への思いが胸の苦しさに直結して、胸がぎゅっと縮んでいくのが、呼吸が浅くなるのが、悲しくて泣きそうになるのが、全部わかる。
全部わかるのに、その感情を発散する方法がなくて、もっともっと辛くなって。
泣けてしまったらどんなに楽だろう。
告白できたらどんなに楽だろう。
私がすごく可愛くて、自分に自信があったら、きっと告白できたのに。
なのにできなくて。
自信を持つ努力をしてもそれが実らなくて。
あぁ私には無理なんだって、そんな現実。
………私には無理なんだ、私には無理なんだって必死に言い聞かせて見ても。
でも、心の大部分を占めている気持ちは、これは脈ありかもしれない、という思い。
周りのみんなはそう言ってくれる。
でもそれを鵜呑みにするのは良くなくて。
でも鵜呑みにしたいくらいそれは嬉しいことで。
だからどうしたらいいかわからない。
けど、この心のモヤモヤはきっと、先輩が自分を好きじゃなかったらどうしようではなくて、もしかして先輩が私のことを好きなんじゃないかっていう幸福感によるものなんだって、分析してみたらわかった。
今は長期休み。
先輩に会えない。
部活はたった1日しかなかった。
会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて。
喋りたい、先輩の顔が見たい、一緒に笑いたい、先輩の意外に男の子らしい手に触れたい。
あぁ、あぁ、あぁ、あぁ、あぁ。
好きだって、言いたい。
私がどれだけ先輩を好きか伝えたい。
───あわよくば。
先輩もそれに応えてくれればいいのに。
もしそうだとしたら。
もしそうだとしたら?
私はどうする?
先輩には見せていない、愛の思い、重い、想い、そんな私が。
もしそれを先輩に知られたら、先輩は果たして私を好きでいてくれるの?
長期休み明け、少ししたら委員会がある。
そうしたら先輩と一緒に帰れる。
それだけを楽しみにしている。
また寒さを口実に手を繋げたりしないかな?
小説を口実に教室に来てくれないかな?
期待ばかりしている。
どうせ裏切られてしまうというのに。
きっと、先輩に振られて、ずっと後からいまの私を振り返ったら、きっと私はどうしようもない馬鹿なんだろう。
けど。
いまの私は、いま、私が先輩を好きであるという事実を全力で肯定する。
だって好きなんだもの。
どうしたって好きなんだもの。
先輩のために、脚やせ動画を見て頑張ったりしてるんだから。
そうやって努力できる私はどう考えたってえらいんだから。
もし失恋したって。
そんなことになったって。
先輩を好きで、先輩の一挙一動に一喜一憂してる私が、失恋してしまった私の味方になれるから。
でもきっと失恋したらものすごく悲しいし、これから生きていけるかが不安なくらいだ。
───だというのに。
恋をするのは止められない。
不恰好に相手を想うことをやめられない。
あぁ本当に、どうしようもなく甘くて、重くて、そんな想いにどこか居心地の良さを感じているなんて、ばかみたいだ。
読んでくださってありがとうございます。
もう今年最後の日だなんて信じられませんね。
この話の主人公の女の子ははたして”片”思いなんでしょうかね。もしかして、もしかするとひょっとするかも………
この女の子がはたして脈ありかどうか、みなさんがどう思ったか感想でお聞かせいただけると嬉しいです。
楽しいですし。お寿司。
それではまた、今日中に、いくつかの小説で必ずお会いしましょう。