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7.

 「あっちゃ~。」


 地面の上で、意識を失い倒れるマリを、一人の魔女が、ニヤニヤと笑いながら見下ろしている。


 魔女は、マリの妹ベラであった。


 「御母様!後は任せて!」とにっこりと笑うベラは、これまた勢い良く、マリを仲間達の方へと放り投げて「おーい!みんな聞こえているかな? この女を牢屋に入れて、強度MAXでお願いね!よろしく頼んだよ‼︎」と群がる魔女達に命令を下す。


 現在、魔女長代行のベラの命令に従い、女を担ぎ上げて、瞬時に黒く渦巻くサークルの中に消えていった。

 ベラが指示する強度MAXとは、拷問に使う魔道具の調整度合いを示していた。


 魔女達に連れて行かれたマリは、これから厳しい拷問が待ち受けていた。


 ベラは再び声を上げて、命令を下す。


 「後のみんなは、バーバラの援護だよ。いいね。」と言い放ち、ベラはというと、黒竜のルーを一瞬で解放した後、レミーの魔力により、体が固まって身動きが取れないロウロを救護していた。


 ロウロは、ギリギリのところで、レミーの瘴気から逃れていたのであった。

 

 ロウロとルーは、ボロボロになった体を奮い起こして「レミーを助ける!」と意気込んでいるが、ベラが必死に説得して、一先ずバーバラやヴァルドと合流してから、救出作戦を練る事で、どうにか了承してくれた。




 「貴方達は何とか無事だったみたいね。はぁ、良かった。」


 安堵するバーバラの傍には、青褪めた顔のヴァルドが横たわっていた。


 「もしかして………え?ヴァルドは……嘘だろ。おい!ヴァルド!しっかりしろ!」


 ヴァルドの体を揺さぶるロウロは、涙目であった。


 体を揺さぶられて、辛うじてうっすらと目を開けるヴァルドは、弱々しい声を出して反応した。


 「五月蝿え野郎だ。勝手に俺を殺すな。」


 いつもの陰険なヴァルドに「ほっとしたよ~、驚かせるなよな。」とロウロは一先ず、安堵した表情を見せたが、ヴァルドの体が危険なことは確かであった。

 ロウロはバーバラに耳打ちして、ヴァルドやルーと共に、西の魔界へと飛び立っていった。




 「ベラ、すまないね。色々と面倒ばかりかけて。」


 「御母様、私は全然良いのよ。それよりレミーを一刻も早く助けないとだわ。」


 「そうね。でもどうしたら………。」



 初めて見る母親の弱気な姿に、ベラは戸惑いを隠せない。


 一気に不安が押し寄せて、足が竦んでしまう。


 目の前に広がる光景は、未だかつてない凄まじい光景であった。


 ベラは、仲間と共に勇敢に立ち向かうが、びくともしない漆黒の巨大な物体に、手も足も出なかった。





 「なっ!なんだと!!」



 魔界政府、公安省、大臣室では、部下から報せを受けた、大臣のウースラが、驚愕の事実に言葉を失う。



 魔界政府は、東西南北の魔界を統括する組織であり、公安省は魔界の治安維持を管理する部署であった。


 報せを受けた公安省大臣のウースラは、急いで、部下達を建物の地下へと移動させて、巨大な魔法石に魔力を込める。

 東以外の魔界に、防御結界を張り巡らせて、被害を最小限に食い止めようとしていた。


 突如、東の魔界に現れた巨大な魔物と、アルヴォスの魔界征服宣言に、政府から緊急招集がかかる。


 正堂には、各省の大臣と、副大臣、そして魔界政府組織の首長ゲルベルンが、集結する。


 直ぐに緊急会議が始まるが、手元に置かれた一枚の紙を見る限り、もう既に、策は講じられていた。


 絶対的な主導権を握るケルベルンに、従わない者はいない。


 今まで、何かあれば必ず、西の魔界だけが圧倒的に不利な条件ばかりを呑んでいた。


 ウースラは、西の魔界出身であり、大事件などが発生すると、自ずと配属場所は西の魔界であった。

 今回も、あの大きな魔物が、西へと移動しているのは、誰かが裏工作しているに違いないが、ケルベルンが辞任しない限りは、体制はまず変わることはない。


 憤りを強く感じるが、ケルベルンのわざとらしい演技や発言を、黙って聞くしかなかった。

 


 「皆も知ってのとおり、東の魔王アルヴォスが、我々に牙を剥いた。よって、法令違反により、アルヴォスに処罰を与える。ここに集まる大臣達よ、北、南、西の魔界の者達と力を合わせて、アルヴォスの討伐に尽力せよ。良いな。私は、魔力を最大限に使い、結界を張り続ける。だが、いつ壊されてもおかしくはない。一刻も早く、巨大な魔物を倒せ!」



 ケルベルンは、巨大な魔法石が設置されている地下へと向かって行ったが、おそらくは行ったように見せかけて、自室に戻るに決まっていた。



 各世界の中央に位置する魔界政府組織の建物は、地下に設置されている魔法石に込められた魔力により、反逆者への攻撃や魔界への敵の侵入を防御するなど、攻撃の主要な力となっていた。

 また、魔力量が少ない魔族の民に、魔力を供給する役割もあり、魔界政府で厳重に管理していた。


 魔法石に魔力を込める役割は、各界の魔王が、定期的に分担して行っていた。

 

 

 副大臣から渡された文書に従い、各々の場所へと一斉に分散していく魔界政府組織関係者達。


 ウースラは、命令に従い西の魔界へと向かう。



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