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ノンリアルファンタジーオンライン~ダメ人間×ネトゲ廃人の世界は電子の海の中にある~廃人ギルドの日常風景  作者: にとろ


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「メアリーのコンフィデンス」

「あ! ギルマスぅ! ガチャを回すのでついて来てくださーい!」


 俺にそう声をかけるのは最近ログイン率がやや低めのメアリーだ。シーフをやっているので宝箱を漁ってそれを売却してゲーム内通貨を得ている。


「石が貯まったのか?」


「いえ、この前のバグの詫び石をまだ回していなかったので」


「詫び石かよ……詫び石じゃロクな排出がないって評判だがな……」


「ギルマス! 運営を疑ってはいけませんよ! ちゃんと公平な確率テーブルを使用していると公言しているんですから」


 石によって輩出率が違うのではないかというのはまことしやかに語られていることだ。有償石で回すと無償石で回すより高レアリティが出るというのはこのゲームの都市伝説と化している。


「メアリちゃん、ガチャにギルマスを連れていくのはやめなさい。幸運のお守りじゃないのよ?」


 マクスウェルは人のガチャに興味は無さそうではある。俺としても『お前がいたから外れた』とか言われても困るのでガチャは個人の責任でやって欲しい。


「だって……ガチャって爆死する確率もあるわけじゃないですか……藁にもすがりたいと言いますか……」


 そこにフォーレが口を挟んできた。


「ガチャの爆死が怖くてネトゲができるわけないでしょう! 私なんて詫び石はもらったその日に回して爆死したんですよ!」


「ひぃっ……」


「フォーレ、メアリーがビビってるぞ」


 そもそも歴史をひもとくと初期のネトゲにガチャなるものは存在していなかった。それもこれもガチャなんていう安易な集金方法に走った運営が非難されるべきだろう。


「じゃあフォーレさんでもいいからガチャに同行してくださいよぅ! 一人で爆死したら悲しいじゃないですか!」


「大勢で引いても爆死は悲しいだろ……」


 俺のそのツッコミも聞かないふりをして今度はフォーレにすがっていくようだ。


「フォーレちゃん! お願い!」


 土下座までしているメアリー。このゲームは脳信号をトレースするのだが尊厳を否定するような姿勢はあらかじめ実装するべきではないと思えた。


「しゃーないなあ……分かった分かった、ガチャについていくだけだからな?」


「ありがとうございます! 心強いです!」


「しょうがないですね、ギルマスが行くなら私もついていってあげますよ、丁度一回分くらいの石はありますし」


「フォーレちゃんも来てくれるの? やった! 私、絶対に当たりを引くからね!」


「そんなフラグみたいな事を言わなくても……」


 フォーレがそう言うが正直俺もフラグっぽいなと思った。ガチャに祈祷力は必要無い、すがりたくなるのも分かるが俺は運営側の人間ではない。


「で、なんのガチャを引くんだ?」


「アバターです! 今のアバターも結構気に入っているのですが、Vtuberコラボで美少女Vtuberの星アカネちゃんのアバターが手に入るんですよ! それを絶対引きたいです」


「Vtuberねえ……」


「あ、ギルマス! そこまで嫌な顔をしなくてもいいじゃないですか!」


 だってなあ……


「お前むさいおっさんのアバター作ってた奴が突然ガチャで出たからと美少女アバターに変更してみろよ、違和感ものすごいぞ?」


 なおこれはファラデーのことである。男アバターを使っていたのに突然名前だけそのままの美少女が出てきたときの俺の気持ちを考えて欲しい。


 妹はそんなことには関心がないようで真っ先にポータルに向かっていた。ガチャの神というものがいるならどうかメアリーにアバターを引かせて欲しいと思う。


「行きますよ、ギルマス!」


「分かったよ」


 そうして三人でギルドハウスのポータルに触れてガチャの広場にジャンプする。


 課金への導入は極めてスムースでカクつくことも一切無い。このリソースをゲーム本編にも同じくらいかけて欲しいものだ。


「さて、闇鍋ガチャにいきましょうか!」


「一応キャラガチャって名前なんですけど……」


 メアリーの言葉も無視してさっさとガチャの方に向かう妹。実際キャラガチャはアクセサリとアバターが混じって出てくる闇鍋方式だ。


「細かいことはいいでしょう! グダグダ言ってないで引いちゃえばいいんですよ!」


「うぅ……じゃあ回しますよ?」


「石の準備は十分ですか?」


「三十連くらいなら……」


「よろしい! じゃあ回しましょう!」


「いきますよ……」


 おずおずとガチャのレバーに手をかけるメアリー。勢いよくレバーが回ってアイテムが出てくる。競争煽りのために同じガチャフィールドにいれば何が出るのかよく分かる。


「アクセ八個にアバター二個か……」


 しかもそのアバターが両方ともおっさんのものだった。


「外れましたぁ……」


「まだ二十連あるだろ、最後まで諦めるなって」


 ガチャなんて回せるときに回しておくものだ。無償石なんてぱーっと使ってしまうに限る。


「じゃあもう十連いきます!」


 頬をパシッと叩いてガチャのレバーに再び手を伸ばすメアリー。アイテムがガラガラと出てきて……


「見事にアクセばっかだな……」


「これはひどい」


 さすがにメアリーも心が折れたかと思ったが目を向けるともうガチャに手を伸ばしていた。


「今のがひどかったから次は来る……次は来る……」


 もう引き下がれないところまで来ているのだろううつろな目でガチャのレバーを回した。


 ガチャの機械から虹色の光が出る。最高レアの確定演出だ。


「お!」


「やったか?」


「お願い!」


 三者三様にそれに反応しながら排出を待った。そこには『アバター「星アカネ」』と表示されていた。


「よっっっっっっっっっっしい!!!」


 ガッツポーズをするメアリー。喜んでアイテムが手に入るなりハウスに帰っていった。


「さて、私も一連回しますかね」


「一回を一連とは言わないだろ」


「細かいことはいいんです! そりゃああああ!」


 スコンとレバーをひねると虹色の演出が出て先ほど見たばかりのアバターが排出された。


「えぇ……これはやっちゃいましたかね?」


「頼むからメアリーの前でそのアバター使うなよ? 三十連した人だっているんだからな?」


 そういうことで確率というのは完全に平等であり慈悲は無いと言うことがはっきりしたのだった。

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