表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/23

ゲームのエンドロールはスキップする派。


 ※前回までのあらすじ※

 生鮮殿下が、ワケ分からん事を言い出した!

 いつもの事? まあ、そうだね! じゃあ、次行ってみよう!



「……お嬢、あらすじが雑過ぎます」

「え? だってもう、生鮮殿下の言動とか、突っ込むのも面倒じゃん」


「商売、を?」

 あ、あっちは進んでた。

「はい! 商売です!」

 ええ声と、ええ笑顔の殿下。

「何故なら、商売を始めれば、丸いのを侍らせられるからです!!」

 おい、待てぇーー!!


「……殿下のあの『丸いの愛』何なの……?」

「何かの病気なんじゃねっすか? ……主に、頭方面の」

 おい、ハッキリ言い過ぎだ。もうちょっと言葉を濁せ。


「そのような不純な動機で商売に手を出そうなど、笑止! 商いを舐めるでないわ!」

「ではお訊ねしますが、『金を稼ぎたい』という動機と、『丸いのを侍らせたい』という動機に、どれ程の違いがあると仰いますか!? どちらも己の欲を満たすという点において、同じではありませんか!?」

「グっ……」

 ああ、陛下! そこで言葉に詰まらないで!


 やばい。

 陛下が殿下の『丸いの愛』に押されそうだ……!


「人が働く理由、それはズバリ『遊ぶ金欲しさ』でしょう!」

 その通りかもしれんが、言い方ァ!

「ですが私は、金など要りません! ただ、丸いのを侍らせたいだけなのです! それら欲の、何がいけないと仰るのですか!?」


「……そんじゃ勝手に、丸いのハーレムでも作りゃいいんじゃ……」

 言ってやるな、フランツ。

 そんなとこに気付いたら、あの人、マジでやっちゃうだろ……。

 ……そんで、想像すると絵面が酷えな、『丸いのハーレム』……。


 沢山の丸いのに囲まれ、ご満悦の生鮮殿下……。地獄絵図じゃん……。


 ていうか殿下、『商売をしないと丸いのを侍らせる事が出来ない』とお思いなのは、どうしてなの?


「商店街には商店街の、そして私には私の素敵な丸いのが居る筈です! 私はその、『私だけの丸いの』を手に入れたい!!」

 ぐっと拳を握り、力強く言い放つ殿下。


 『生鮮殿下の素敵な丸いの』とは、何だろうか……。

 そもそもあのマスコットたちは、ハナちゃんがマルさんを生み出したのが始まりだ。

 という事は、この殿下の『丸いの愛』を開花させてしまった原因は、ハナちゃんになるのではなかろうか……。


 ハナちゃん、とんでもない事をしてくれたな……。

 いや、これは言いがかりになるのだろうか。


 そんな事を考えている私に、離れた場所から声がかけられた。

 見ると、そのハナちゃんがこちらに駆け寄ってきていた。


「アンさん! 大変です!」

「どうしました?」

 こっちもこっちで、生鮮殿下が大変ですよ? 貴女が生み出した丸いののおかげで。


「ステータス画面の様子がおかしいんです!」

「え?」

 そもそも、『ステータス画面』が存在している事がおかしい、とかは言ってはいけないのだろう。


 少し物陰に寄り、ハナちゃんがステータス画面を開いて見せてくれた。


 ……ん?

 何か聞こえるな?


(♪~(ピアノの音))


「コイツ……、直接脳内に……!!」

 何てこった! 脳内にしっとりしたピアノの音が聞こえ始めた! 何で脳内に!?

 ていうかこの曲、例の『呼び〇みくん』のピアノアレンジver.だな。


 ステータス画面自体は、文字などが一切消え、ただのピンクの板となり果てている。


「脳内に聞こえますよね!? ゲームのエンディングテーマが!」

 ああ、そうか! この曲、エンディングテーマか!


 ゲームが、終わるのか……?

 この『悪ふざけコメディ時空』が、『シリアスドラマチック時空』か何かへと変貌を遂げるのか……!?

「『悪ふざけコメディ』の対って、『シリアスドラマチック』なんですか?」

 黙れ、フランツ。


「一つの商店に、一人の丸いの! それはなんと、夢のような世界でしょう!!」

 脳内のしっとりしたピアノ曲に合わせるように、生鮮殿下のクソみたいな主張が朗々と響き渡る。


 いや、待て。

 『一つの商店に一人の丸いの』?

 もしかして、この人のやろうとしてる事って……。


「つまりは! 沢山の商店の集合体となれば、沢山の違った丸いのを配置出来る! ……そう! 私が目指すのは、ありとあらゆる商店を集めた、複合型の大きな商店なのです!!」

 おい! あいつ、ラスボス召喚しようとしてるじゃねえか!!


「こんな近くに敵が居たなんて……!」

 ぐっと拳を握るハナちゃん。

 ていうかこの『敵』、貴女が目覚めさせたようなものですけどね……。


「こんな事なら……、早めにチェーンソーでバラバラにしておくんだった……!!」

 ハナちゃん! それは『かみ』に対してだけ許される行為だから!

 現実でやったら、ただの猟奇殺人犯だから!!


 ていうか、生鮮殿下がやりたい事(丸いのハーレム)を考えると、複合型商業施設よりもテーマパーク運営の方が良いのでは……。

 それはそれで、別ゲーとしてありそうだが。ていうか、あるが。

 サ〇リオのテーマパークみたいのなら、殿下のクソみたいな夢を叶えられるんじゃない?


「……あんなキャラクターが溢れかえるテーマパークとか、誰得なんすかね?」

 殿下得だろ。

 『採算度外視』って言葉が良く似合うわね。


「お前の言いたい事は分かった」

 うむ、と頷かれる陛下。

 ……分かったんだ? 私、イマイチ良く分かんなかったけど……。

「その上で、敢えて言わせてもらおう」

 陛下が生鮮殿下を真っ直ぐに見据える。


「別に、商売やらんでも良くないか?」


 ビシっと固まる殿下。

 だよなぁ? うん、と頷きあう周囲の人々。

 そして盛り上がりをみせる、脳内BGM。……やべぇくらい、全部がちぐはぐだぜ……。


「商売を……しなくても……」

 何やらショックを受けている風な生鮮殿下に、陛下が不思議そうな顔をした。

「お前が『丸いの』とやらが気に入ったのは、良く分かった。ならば、お前はお前で、その『丸いの』とやらを作れば良いだけなのではないのか?」

「なん、と……!!」

 ああ! 陛下が殿下に『丸いのハーレム』をお勧めになられている!


「殿下に商売さすより、ただ『丸いのハーレム』作らせた方が平和そうではありますよね」

 確かにね。

 大型の商業施設作って、大損害出してコケた……とかなったら、かなりシャレならんしね。


(〽店先に立つ キミの笑顔が眩しくて~ ふと目を閉じた~)


「脳内に歌が!!」

 これはまさに、ゲームのエンディングテーマ!


「兄上……、私は決めました。私は私の、私だけの丸いのを、きっと作り上げてみせる! と」

「まあ、うん。頑張りなさい」

 陛下! 貴方が焚き付けたんですから、責任もってもっと何とかして!


「そうと決まれば、こうしてはいられない! 私は宮へ戻ります! 詳しい計画は、後日城の内務へ提出いたします!」

「ああ……、うん」

 陛下ァ! そんな「え? マジでやんの?」みたいなお顔されないでください!


 まあ……、ラスボス召喚は阻止された、のかな?

 代わりに、丸いのハーレムが実現するみたいだけど、まあそれは私たちには関わりのない事だわね。


「アンさん! 見てください!」

 ハナちゃんの声に、ハナちゃんがじっと見ているステータス画面を見た。

 そこには、ゲームのエンディングらしきものが流れていた。


 実際のゲームのエンディングでは、それまでのイベントスチルの振り返りと、最後に『その後』っぽいスチルが表示される。


 ではこちらはというと……。


 まず出てきたのは、魚屋フローラちゃん。

 柳刃包丁を持ち、隣には料亭か何かの割烹着の男性。どうやら、男性に魚のお造りを教わっているようだ。


 次に出てきたのは、お城のバルコニーで手を振る王太子殿下。

 頭上にはハコフグを模した冠が輝いている。お似合いです! 殿下クンさん!


「これ、もしかしなくても……、ゲームの登場人物の『その後』的な画像でしょうか……?」

 イラストではなく、実写だが。

「そうかもしれません……」

 頷きつつ、ハナちゃんは食い入るようにステータス画面を見つめている。


 八百屋フローラちゃんは、……サイン会?

 会議机にパイプ椅子で、背後には『フローラ・セルシウス先生 サイン会』と書かれた横断幕。壁にあるポスターには『カンタン! 五分でできるお弁当のおかず』や、『野菜ギライをなおす 見て楽しい、食べて美味しいこどものおかず』などの書影が。

 え!? フローラちゃん、そんな仕事に手を出すの!?


 大根ニキは、学生服を着て、両手に立派な大根を一本ずつ持っている。

 ……これ、もしかしなくても、王農大の『大根踊り』だな? ニキ、王農大に入るのか……。そんで、応援団に入るのか……。ニキの大根愛、すげえな……。

 元ネタが分からない人は、『大根踊り』で検索だ!


 そして次はハナちゃんだ。

 ハナちゃんはタウルス君と二人で、笑顔で焼き鳥を頬張っている。

 それを見た現実のハナちゃんは「キャー///」と頬を赤らめているが……。

 ハナちゃんだけ、『乙女ゲーム感』すげえな! ああ、羨ましくなんてないけどな!!


 そして次は、広々とした大自然の中、色とりどりの丸いのに囲まれ、穏やかな笑顔でお茶を楽しむ生鮮殿下……。

 どうやら、丸いのハーレムは無事に実現するらしい……。


 ゲームの登場人物は、これで全部だ。

 けれど、ステータス画面には次の画像が浮かび上がってきた。


 マルさん! マルさんだわ!

 マール姐さんと手をつなぎ、商店街を散策するマルさん。

 なんて素敵な画像なの……! お幸せに!


 二重マルさんは、書店の店頭でポーズを決めている。

 書店に沢山貼られたポスターには『話題沸騰!! 二重マル ファースト写真集』の文字が……。

 やべぇ。私、うっかり買うかもしんない……。


 そして――。


「アンさんですね!」

 私の画像が出てきた。


 だが、これは何だ! ちょっと待ちやがれ!

 場所は私の自室だ。そして、フランツに炊飯器を取り上げられ、それに追い縋ろうとする私という図だ。

 何故私の画像はコメディなんだ!? ハナちゃんみたいに、何かイイ感じのとかないのか!?


「……へぇ」

 ぼそっと言ったフランツを見ると、フランツはその画面をじっと見たまま言った。

「机の下か何かですかね?」

「違うわ! そんなとこ、何にもないわよ!」

 あるけど。買ったばっかの炊飯器が。


「何にもないなら、見ても構いませんよね?」

「な、何にもないから、見なくても大丈夫よ!」

 やべぇ! これはマジでやべえ!

 帰ったら、速攻で炊飯器を移動せねば……!

 まだ三回しか使った事ないのに、取り上げられたら堪らん!


「あ、終わった……」

 ハナちゃんのそんな言葉が聞こえ、視線をステータス画面に戻す。

 そこには、『恋はサバより輝いて! ~生鮮王国ものがたり~』というゲームのタイトルロゴと、右下に『Fin』の文字が。


 終わるのは構わんが、何故私にだけ爆弾を落としていくのか……。

 私の炊飯器2号を守り切らねば……!


 そんな事を考えつつ、タイトルロゴを眺めていたのだが、やがてタイトルロゴが消えると同時くらいに、ステータス画面もふっと消えてしまった。


 ハナちゃんが消したのかな? と思ったのだが、ハナちゃんの顔が驚いている。

「勝手に消えた……!」

 え? そうなの?

 ハナちゃんが消したんじゃないの?


「ステータスオープン!」

 ハナちゃんがそう呟いてみたが、あのピンクの板は出てこない。


「ゲームが終わったから……ですかね?」

「そうかも、しれません……」

 言うと、ハナちゃんはがっくりと地面に膝をついた。

「折角……、ちょっと便利になってきたところだったのに……!!」

 ……うん。資格の取得年月日とかは、普通に証書で確認しよう? もしくは、一覧をメモとかにまとめておこう?



 とりあえず、何か知らんが『ゲーム展開』は終わったらしい。


 ラスボス……来なかったな。ラスボスの筈が、何故か『丸いのハーレム』になってたしな……。

 て事はもしかして!

 ハナちゃんの『商店街振興計画』が上手くいった、という事になるのか!?


 いった……のか?

 まあ、いっか!


 すっかり陽も落ち、六時半からは花火大会だそうだ。

 花火見て帰ろーっと。

 そんで帰ったら、大急ぎで炊飯器の隠し場所変えようっと。……あのエンディング画像見るフランツの目が、かなりマジだったからな……。


「そういや、お嬢」

「うん?」

 花火大会のプログラムを眺めつつ返事をする。

 ていうか何? まず開始が『商店街よ、永遠に……! (六号三発早打ち) 提供:一丁目商店街 商店会長』て。絶妙にショボいんだけど。


「さっきのエンディング? の、最後に出てきてたサバがどうとか……って、何スか?」

「ああ、『恋はサバより輝いて!』の事? ゲームのタイトルよ」

 略して『恋サバ』だ。もしくは副題の『~生鮮王国ものがたり~』から『生鮮王国』とも呼ばれていたが。


「タイトル、クソダサくねっすか……?」

「そこがいいのよ!」

 クソダサいタイトルとか、意味不明なタイトルとかって、まず一回ストアページ見てみようってなるじゃん!?

 そんで、そのクソダサタイトルのゲームが自分のライブラリに並ぶとか、考えただけで面白いじゃん!?


「……はあ」

 力説した私に対して、このやる気のねえ返事。

 ていうかあれか? もしかしてまた、フランツの『日本』に対する認識が歪んでるか?

 でも実際、『バカゲー』って、愛好家も多いジャンルだと思うんだけどな。かく言う私も含め。


「ま、とにかく終わったみたいだし、後は花火でも楽しみましょ」

「そっすね。……お嬢、腹減ってませんか?」

「ちょっとねー。でもお小遣い、結構減っちゃったし……」

 こういうフェスの恐ろしいとこよな! 気付くと食ってる。そんで、気付くとすげー金減ってる。


「奢るんで、飯食いますか」

 マジか!

「食べる!」

「そんじゃ、何にしますかね……」

 言いつつ歩き出したフランツを追いかけて、私も歩き出した。



 次回、感動の特にない最終回!!(予定)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] あああっぶねー! いつだったか糞弟障害物殿下が実は雑にラスボス召喚してコケて撤退してペンペン草しか残らないフラッグ持ち主なのではと危惧していたのが、本当にその可能性あった…王様が(服装以外は…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ