ゲームのエンドロールはスキップする派。
※前回までのあらすじ※
生鮮殿下が、ワケ分からん事を言い出した!
いつもの事? まあ、そうだね! じゃあ、次行ってみよう!
「……お嬢、あらすじが雑過ぎます」
「え? だってもう、生鮮殿下の言動とか、突っ込むのも面倒じゃん」
「商売、を?」
あ、あっちは進んでた。
「はい! 商売です!」
ええ声と、ええ笑顔の殿下。
「何故なら、商売を始めれば、丸いのを侍らせられるからです!!」
おい、待てぇーー!!
「……殿下のあの『丸いの愛』何なの……?」
「何かの病気なんじゃねっすか? ……主に、頭方面の」
おい、ハッキリ言い過ぎだ。もうちょっと言葉を濁せ。
「そのような不純な動機で商売に手を出そうなど、笑止! 商いを舐めるでないわ!」
「ではお訊ねしますが、『金を稼ぎたい』という動機と、『丸いのを侍らせたい』という動機に、どれ程の違いがあると仰いますか!? どちらも己の欲を満たすという点において、同じではありませんか!?」
「グっ……」
ああ、陛下! そこで言葉に詰まらないで!
やばい。
陛下が殿下の『丸いの愛』に押されそうだ……!
「人が働く理由、それはズバリ『遊ぶ金欲しさ』でしょう!」
その通りかもしれんが、言い方ァ!
「ですが私は、金など要りません! ただ、丸いのを侍らせたいだけなのです! それら欲の、何がいけないと仰るのですか!?」
「……そんじゃ勝手に、丸いのハーレムでも作りゃいいんじゃ……」
言ってやるな、フランツ。
そんなとこに気付いたら、あの人、マジでやっちゃうだろ……。
……そんで、想像すると絵面が酷えな、『丸いのハーレム』……。
沢山の丸いのに囲まれ、ご満悦の生鮮殿下……。地獄絵図じゃん……。
ていうか殿下、『商売をしないと丸いのを侍らせる事が出来ない』とお思いなのは、どうしてなの?
「商店街には商店街の、そして私には私の素敵な丸いのが居る筈です! 私はその、『私だけの丸いの』を手に入れたい!!」
ぐっと拳を握り、力強く言い放つ殿下。
『生鮮殿下の素敵な丸いの』とは、何だろうか……。
そもそもあのマスコットたちは、ハナちゃんがマルさんを生み出したのが始まりだ。
という事は、この殿下の『丸いの愛』を開花させてしまった原因は、ハナちゃんになるのではなかろうか……。
ハナちゃん、とんでもない事をしてくれたな……。
いや、これは言いがかりになるのだろうか。
そんな事を考えている私に、離れた場所から声がかけられた。
見ると、そのハナちゃんがこちらに駆け寄ってきていた。
「アンさん! 大変です!」
「どうしました?」
こっちもこっちで、生鮮殿下が大変ですよ? 貴女が生み出した丸いののおかげで。
「ステータス画面の様子がおかしいんです!」
「え?」
そもそも、『ステータス画面』が存在している事がおかしい、とかは言ってはいけないのだろう。
少し物陰に寄り、ハナちゃんがステータス画面を開いて見せてくれた。
……ん?
何か聞こえるな?
(♪~(ピアノの音))
「コイツ……、直接脳内に……!!」
何てこった! 脳内にしっとりしたピアノの音が聞こえ始めた! 何で脳内に!?
ていうかこの曲、例の『呼び〇みくん』のピアノアレンジver.だな。
ステータス画面自体は、文字などが一切消え、ただのピンクの板となり果てている。
「脳内に聞こえますよね!? ゲームのエンディングテーマが!」
ああ、そうか! この曲、エンディングテーマか!
ゲームが、終わるのか……?
この『悪ふざけコメディ時空』が、『シリアスドラマチック時空』か何かへと変貌を遂げるのか……!?
「『悪ふざけコメディ』の対って、『シリアスドラマチック』なんですか?」
黙れ、フランツ。
「一つの商店に、一人の丸いの! それはなんと、夢のような世界でしょう!!」
脳内のしっとりしたピアノ曲に合わせるように、生鮮殿下のクソみたいな主張が朗々と響き渡る。
いや、待て。
『一つの商店に一人の丸いの』?
もしかして、この人のやろうとしてる事って……。
「つまりは! 沢山の商店の集合体となれば、沢山の違った丸いのを配置出来る! ……そう! 私が目指すのは、ありとあらゆる商店を集めた、複合型の大きな商店なのです!!」
おい! あいつ、ラスボス召喚しようとしてるじゃねえか!!
「こんな近くに敵が居たなんて……!」
ぐっと拳を握るハナちゃん。
ていうかこの『敵』、貴女が目覚めさせたようなものですけどね……。
「こんな事なら……、早めにチェーンソーでバラバラにしておくんだった……!!」
ハナちゃん! それは『かみ』に対してだけ許される行為だから!
現実でやったら、ただの猟奇殺人犯だから!!
ていうか、生鮮殿下がやりたい事(丸いのハーレム)を考えると、複合型商業施設よりもテーマパーク運営の方が良いのでは……。
それはそれで、別ゲーとしてありそうだが。ていうか、あるが。
サ〇リオのテーマパークみたいのなら、殿下のクソみたいな夢を叶えられるんじゃない?
「……あんなキャラクターが溢れかえるテーマパークとか、誰得なんすかね?」
殿下得だろ。
『採算度外視』って言葉が良く似合うわね。
「お前の言いたい事は分かった」
うむ、と頷かれる陛下。
……分かったんだ? 私、イマイチ良く分かんなかったけど……。
「その上で、敢えて言わせてもらおう」
陛下が生鮮殿下を真っ直ぐに見据える。
「別に、商売やらんでも良くないか?」
ビシっと固まる殿下。
だよなぁ? うん、と頷きあう周囲の人々。
そして盛り上がりをみせる、脳内BGM。……やべぇくらい、全部がちぐはぐだぜ……。
「商売を……しなくても……」
何やらショックを受けている風な生鮮殿下に、陛下が不思議そうな顔をした。
「お前が『丸いの』とやらが気に入ったのは、良く分かった。ならば、お前はお前で、その『丸いの』とやらを作れば良いだけなのではないのか?」
「なん、と……!!」
ああ! 陛下が殿下に『丸いのハーレム』をお勧めになられている!
「殿下に商売さすより、ただ『丸いのハーレム』作らせた方が平和そうではありますよね」
確かにね。
大型の商業施設作って、大損害出してコケた……とかなったら、かなりシャレならんしね。
(〽店先に立つ キミの笑顔が眩しくて~ ふと目を閉じた~)
「脳内に歌が!!」
これはまさに、ゲームのエンディングテーマ!
「兄上……、私は決めました。私は私の、私だけの丸いのを、きっと作り上げてみせる! と」
「まあ、うん。頑張りなさい」
陛下! 貴方が焚き付けたんですから、責任もってもっと何とかして!
「そうと決まれば、こうしてはいられない! 私は宮へ戻ります! 詳しい計画は、後日城の内務へ提出いたします!」
「ああ……、うん」
陛下ァ! そんな「え? マジでやんの?」みたいなお顔されないでください!
まあ……、ラスボス召喚は阻止された、のかな?
代わりに、丸いのハーレムが実現するみたいだけど、まあそれは私たちには関わりのない事だわね。
「アンさん! 見てください!」
ハナちゃんの声に、ハナちゃんがじっと見ているステータス画面を見た。
そこには、ゲームのエンディングらしきものが流れていた。
実際のゲームのエンディングでは、それまでのイベントスチルの振り返りと、最後に『その後』っぽいスチルが表示される。
ではこちらはというと……。
まず出てきたのは、魚屋フローラちゃん。
柳刃包丁を持ち、隣には料亭か何かの割烹着の男性。どうやら、男性に魚のお造りを教わっているようだ。
次に出てきたのは、お城のバルコニーで手を振る王太子殿下。
頭上にはハコフグを模した冠が輝いている。お似合いです! 殿下クンさん!
「これ、もしかしなくても……、ゲームの登場人物の『その後』的な画像でしょうか……?」
イラストではなく、実写だが。
「そうかもしれません……」
頷きつつ、ハナちゃんは食い入るようにステータス画面を見つめている。
八百屋フローラちゃんは、……サイン会?
会議机にパイプ椅子で、背後には『フローラ・セルシウス先生 サイン会』と書かれた横断幕。壁にあるポスターには『カンタン! 五分でできるお弁当のおかず』や、『野菜ギライをなおす 見て楽しい、食べて美味しいこどものおかず』などの書影が。
え!? フローラちゃん、そんな仕事に手を出すの!?
大根ニキは、学生服を着て、両手に立派な大根を一本ずつ持っている。
……これ、もしかしなくても、王農大の『大根踊り』だな? ニキ、王農大に入るのか……。そんで、応援団に入るのか……。ニキの大根愛、すげえな……。
元ネタが分からない人は、『大根踊り』で検索だ!
そして次はハナちゃんだ。
ハナちゃんはタウルス君と二人で、笑顔で焼き鳥を頬張っている。
それを見た現実のハナちゃんは「キャー///」と頬を赤らめているが……。
ハナちゃんだけ、『乙女ゲーム感』すげえな! ああ、羨ましくなんてないけどな!!
そして次は、広々とした大自然の中、色とりどりの丸いのに囲まれ、穏やかな笑顔でお茶を楽しむ生鮮殿下……。
どうやら、丸いのハーレムは無事に実現するらしい……。
ゲームの登場人物は、これで全部だ。
けれど、ステータス画面には次の画像が浮かび上がってきた。
マルさん! マルさんだわ!
マール姐さんと手をつなぎ、商店街を散策するマルさん。
なんて素敵な画像なの……! お幸せに!
二重マルさんは、書店の店頭でポーズを決めている。
書店に沢山貼られたポスターには『話題沸騰!! 二重マル ファースト写真集』の文字が……。
やべぇ。私、うっかり買うかもしんない……。
そして――。
「アンさんですね!」
私の画像が出てきた。
だが、これは何だ! ちょっと待ちやがれ!
場所は私の自室だ。そして、フランツに炊飯器を取り上げられ、それに追い縋ろうとする私という図だ。
何故私の画像はコメディなんだ!? ハナちゃんみたいに、何かイイ感じのとかないのか!?
「……へぇ」
ぼそっと言ったフランツを見ると、フランツはその画面をじっと見たまま言った。
「机の下か何かですかね?」
「違うわ! そんなとこ、何にもないわよ!」
あるけど。買ったばっかの炊飯器が。
「何にもないなら、見ても構いませんよね?」
「な、何にもないから、見なくても大丈夫よ!」
やべぇ! これはマジでやべえ!
帰ったら、速攻で炊飯器を移動せねば……!
まだ三回しか使った事ないのに、取り上げられたら堪らん!
「あ、終わった……」
ハナちゃんのそんな言葉が聞こえ、視線をステータス画面に戻す。
そこには、『恋はサバより輝いて! ~生鮮王国ものがたり~』というゲームのタイトルロゴと、右下に『Fin』の文字が。
終わるのは構わんが、何故私にだけ爆弾を落としていくのか……。
私の炊飯器2号を守り切らねば……!
そんな事を考えつつ、タイトルロゴを眺めていたのだが、やがてタイトルロゴが消えると同時くらいに、ステータス画面もふっと消えてしまった。
ハナちゃんが消したのかな? と思ったのだが、ハナちゃんの顔が驚いている。
「勝手に消えた……!」
え? そうなの?
ハナちゃんが消したんじゃないの?
「ステータスオープン!」
ハナちゃんがそう呟いてみたが、あのピンクの板は出てこない。
「ゲームが終わったから……ですかね?」
「そうかも、しれません……」
言うと、ハナちゃんはがっくりと地面に膝をついた。
「折角……、ちょっと便利になってきたところだったのに……!!」
……うん。資格の取得年月日とかは、普通に証書で確認しよう? もしくは、一覧をメモとかにまとめておこう?
とりあえず、何か知らんが『ゲーム展開』は終わったらしい。
ラスボス……来なかったな。ラスボスの筈が、何故か『丸いのハーレム』になってたしな……。
て事はもしかして!
ハナちゃんの『商店街振興計画』が上手くいった、という事になるのか!?
いった……のか?
まあ、いっか!
すっかり陽も落ち、六時半からは花火大会だそうだ。
花火見て帰ろーっと。
そんで帰ったら、大急ぎで炊飯器の隠し場所変えようっと。……あのエンディング画像見るフランツの目が、かなりマジだったからな……。
「そういや、お嬢」
「うん?」
花火大会のプログラムを眺めつつ返事をする。
ていうか何? まず開始が『商店街よ、永遠に……! (六号三発早打ち) 提供:一丁目商店街 商店会長』て。絶妙にショボいんだけど。
「さっきのエンディング? の、最後に出てきてたサバがどうとか……って、何スか?」
「ああ、『恋はサバより輝いて!』の事? ゲームのタイトルよ」
略して『恋サバ』だ。もしくは副題の『~生鮮王国ものがたり~』から『生鮮王国』とも呼ばれていたが。
「タイトル、クソダサくねっすか……?」
「そこがいいのよ!」
クソダサいタイトルとか、意味不明なタイトルとかって、まず一回ストアページ見てみようってなるじゃん!?
そんで、そのクソダサタイトルのゲームが自分のライブラリに並ぶとか、考えただけで面白いじゃん!?
「……はあ」
力説した私に対して、このやる気のねえ返事。
ていうかあれか? もしかしてまた、フランツの『日本』に対する認識が歪んでるか?
でも実際、『バカゲー』って、愛好家も多いジャンルだと思うんだけどな。かく言う私も含め。
「ま、とにかく終わったみたいだし、後は花火でも楽しみましょ」
「そっすね。……お嬢、腹減ってませんか?」
「ちょっとねー。でもお小遣い、結構減っちゃったし……」
こういうフェスの恐ろしいとこよな! 気付くと食ってる。そんで、気付くとすげー金減ってる。
「奢るんで、飯食いますか」
マジか!
「食べる!」
「そんじゃ、何にしますかね……」
言いつつ歩き出したフランツを追いかけて、私も歩き出した。
次回、感動の特にない最終回!!(予定)




