表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/28

8.熱線

 一般的な転移魔法に行先座標の設定が必須なのに対し、おろくの空間跳躍は、地図さえあれば正確にその場所へ移動できる。


 それどころか、ランダムに安全な場所へと跳ぶことすら可能なのだ。転移魔法と違って、座標が狂うとマグマの中や壁の中、なんて恐怖も全くない。


 逃げるにはもってこいの魔法である。


 この魔法を買われて、おろくは魔法連合の末端調査員として、ここ陽本(ヒノモト)の軍事拠点である門海(カドミ)の町へと派遣されて来たのだ。


「出し惜しみしておっ()んだら、始まんねえだろうがよっ」


 ダイダイが焦った声を出す。

 おろくの額に汗が滲む。



 金属製の猫耳をつけた少女は、白地にピンクのラインがあしらわれたケープの背中を捲り上げ、金属製の細い板を何枚も突き出している。


 板は、白と黒との二重構造になっている。白と黒とは分離しており、別々に展開することが可能だ。

 それぞれの板も独立しており、羽のように細かな動きをしていた。


「熱照射装置、充電完了」


 2人が凝視する間も、猫耳金属少女の冷たく平坦な声は続く。


「おろくっ」

「ちっ、跳ぶしかないか」

「早くしろよっ」



 おろくが空間跳躍をするために、渋々意識を集中させ始めた時、ごおっと激しい風音が起こった。


「えっ」

「なんだぁ?」


 2人が辺りを見回すのも構わず、金属の少女は宣言した。


「照射致します」


 次の瞬間、少女の額についた黒い飾りから、真っ白な光の筋がおろく目掛けて発射された。


「あっ」


 おろくの集中力が切れる。

 そこへ風音が近付いて、おろくとダイダイは宙に浮いた。


「ぐえっ」


 お腹を掴まれたおろくが、潰れたカエルのような声を出す。


「ぐっ」


 首根っこを掴まれてぶら下げられたダイダイも、くぐもった声を発する。

 2人が掬い上げられた後の地面には、小さな穴が煙を上げていた。路上のゴミや小石が高熱で焼かれたらしい。ダイダイがぎょっとして息を呑む。



「ぐうぅ」


 おろくがうなる。熱線が掠ったらしく、燃えた肩口に水の魔法を当てて消火している。

 しかし、火傷はしてしまったとみえる。


「しばしの辛抱なされませ」


 頭の上から丁寧な声が降ってくる。おろくとダイダイを助けたのは、先程屋敷から逃げた筈の緑色の羽を生やした鴉だった。


「あんた、あの子は?」


 痛そうに顔を顰めながら、おろくが鴉に問う。


「もう安全にございます」

「へええ、たいした速さで飛んだなあ」


 ダイダイが感心する。


「いえ、抜け道がございまして、ほら」

「え?」

「空に?」


 2人が首を上げると、前方にうっすらと青っぽい魔法陣が見えた。


お読みくださりありがとうございました

続きもよろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ