7.機械仕掛けの猫娘
後書きに挿絵がございます。
苦手な方はイラスト非表示にてお願い致します。
おろくは、入ってきた潜戸からするりと外へ出る。先ほどまでとは打って変わったそそくさとした足取りで屋敷を離れる。
「なんだか嫌な感じだぜ」
「そうだねえ」
魔法エネルギーでもないのに、何か巨大な力が得体の知れない物体を動かそうとしている。
「人の世の理から外れたもんじゃないといいんだが」
「準備して調査にくるか」
おろくが面倒臭そうに言うと、ダイダイは変なものを見るような顔つきになった。
「仕事すんのか」
「するよ。何だと思ってんだい、全く」
「先輩にも連絡とっとくか」
「さっきの青い鳥かい?」
「ああ」
「あのおっさん、信用できんのかね」
「本部職員と上手くやってんだ。それなりだろ」
「余計に胡散臭いねえ」
おろくは斜めにじろりとダイダイを見る。
「連合本部の怪しい鳥なんかと馴れ合うなんざ」
心底嫌そうなおろくは、一旦言葉を止めてはんっと息を吐きだす。それから、改めてゆっくりと続きを口に出した。
「薄汚えゴマスリ野郎じゃないか」
オレンジ色の猫はつぶらな瞳で淡々と見返す。
「お前、本当にいつか追放されっぞ」
「うるさいね。あたしはあんたも信用してない」
「本部職員証みせたろ。偽造出来ないの知らねえのかよ」
おろくは諦めたように目を閉じる。溜め息と共に再び瞼をあげると、疲れたようにこう言った。
「そう言う疑いじゃないよ」
オレンジ色の雄猫が、また何か言おうと髭をぴくつかせた時、先程から聞こえていた何かの回転音が急に大きくなった。
おろくと猫は元来た道を反射的に振り返る。高い黒塀から覗く松の梢をさらに超え、何か人型のものが飛び出してくるのが見えた。
見えたと思ったら、もう近くにいて、抑揚のない声を出す。
「ターゲット、捕捉しました」
それは、少女の姿をしていたが、おさげにした赤毛の頭からは黒い金属の猫耳が生えていた。耳と言っても形だけであり、何かの機能がついた道具にも見える。
耳から伸びた親指程の幅をした黒い帯は、やはり黒い色をした丸い耳当てに繋がっている。額には初夏の日差しを反射する、冷たく黒い金属の飾りが付けられていた。
「追跡態勢を解除いたします」
抑揚のない少女の声は続く。緑の目をいきいきと輝かせ、溌剌とした表情をしているのが、かえって不気味である。
「誰かと話してんのか」
「何呑気なこと言ってんだい、走るよ」
「跳ばねえのか?」
「なんだかわかんない相手に、手の内見せてたまるかってんだ」
空間跳躍は、おろくの得意な魔法である。得意というか、創作魔法、完全オリジナルだった。いわば切り札である。
「これより、攻撃態勢に移行します」
猫耳少女の額飾りが光り出す。三叉の矛を小型化したような形だ。下に突き出した部分を含めた4つの先端から、中央に光が集まってゆく。