3.森のエルフ
後書きに挿絵がございます。
苦手な方は、画像非表示でお願い致します。
魔法を使って、賭場が開かれるお屋敷へと勝手に入り込んだおろくとオレンジ色の雄猫は、押し問答をやめて騒ぎの方へと足を向ける。
「おいこら、ちょっと待て!」
青い丸っこい鳥が、オレンジ色の猫に叫ぶ。おろくも猫も気にせず庭の奥へと分け入った。
「えっ?」
片眼鏡の散切り頭が、虚を突かれた顔をする。目だけ動かして灰紫の髪を見送った。
困惑するのは当然だ。おろくは立ちはだかる2人の男をするりと躱して、どこにも触れずに先へと進む。
「ちっ!ジンザ、ぼやっとすんじゃねえ」
「へいへい、鳥さん、わかりやしたよ」
ジンザと呼ばれたボサボサ黒髪の中年ヤクザは、髭面を掻きながら面倒臭そうにおろく達を追う。
「ちょっと、説明してくれませんかねえ?」
片眼鏡はゆったりと、しかし高圧的にジンザに問う。
「あとにしてくれや」
とジンザが答え、
「てめえで考えな」
と青い鳥が毒付く。
「私は魔法使いじゃないんで、解りませんがね」
片眼鏡は、口の端をひくつかせながら仕方なくジンザ達に続く。
小山を模した小道を登り、邸宅が見えてきた。何やら人だかりが出来ている。
片眼鏡がハッとして潜戸へととって返す。
「ちっ、捕方かよ」
「ダイダイの!戻ってこい」
ジンザが舌打ちをし、鳥が猫に呼びかける。
「おろく!ずらかろうぜ」
オレンジ色の雄猫も、おろくに焦った声を出す。
「ほっといとくれ」
おろくは何かを確信したかのような強い眼で、捕方(警察官)のいる建物へと向かう。
「エルフなんかほっとけ」
ジンザが喚く。
おろくが見つけたのは、森に住むエルフの気配だったようだ。木と土が放つ独特の魔力を帯びた気配は、町中では異質である。
ジンザも騒ぎの中心から、森のエルフ特有の魔力を感知したのだろう。
「うるさいね。あたしは勝手にするよ」
聞く耳を持たないおろくに、オレンジ色の猫はやや毛を膨らませながらついてゆく。
「なんでえ、知らねえや」
「ダイダイの!早くしろよ!」
ジンザは吐き捨てて走り去る。青い鳥も潜戸の方へ飛んで行く。
一方、おろくとオレンジ色の猫は言い合いながら騒ぎのかたまりを目指す。
「全く、なんだってこんな街中にエルフが」
「混じりもんだよなあ」
「けど、半分は鴉だろ?なんで人間の中に」
「しるかよ。ほっとけよ」
文句を言いながらも心配そうなおろくに対して、ダイダイと呼ばれる猫は、心底どうでも良さそうに目を細めた。
細いオレンジ色の尻尾が、不愉快そうに素早く揺れる。
「ダイダイは帰んな」
「うるせえ」
おろくはすうっと気配を消して、いよいよ騒ぎの中心へ近づく。