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オリビア・クレーエ  作者: ならせ
第3幕
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第3幕ー20 舞台に上がったのは

 アルベルトが王太子となった事で私達の結婚も延期となり、そのせいで面白いくらいに貴族達は2つの方向に動き出した。

 何をするのが正解なのか気づいた貴族はアルベルトの信頼を得るために動き出し、分からない貴族は機嫌を取りつつ私を引きずり降ろそうとした。ブロトンス侯爵とラサロ公爵が私の後ろ盾になると宣言してひとまず収束したが、諦めの悪い貴族は「信頼すらも金で買ったのか」などと言いがかりを付けてくる。

 そういう輩に限ってこっそり自分の娘を王城へ行儀見習いとして送り込み、アルベルトや王妃の不興を買い、家に送り返される。

 その後帰された娘達がどうしたのかは知らない。見かけないという事はどこかへ嫁いだのかもしれないし、屋敷に引きこもっているのかもしれない。


 一番大きな変化はブリオネス公爵家が断絶した事だ。突然の出来事に誰もが呆然とした。

 あまりの凄惨な出来事に言葉を無くし、側妃派だった貴族達が一気に静かになった。

 お陰で私は父の出された命令を完遂した事になる。長きに渡り膿み続けていた部分が排除されたのだから。内心かなり複雑な気持ちでもある。


 アルベルトはこれまで何もさせてもらえていなかったと思いきや、彼は王の執務を一部こっそりやっていたらしい。これにはブリオネス公爵が嫌味交じりに暇なら手伝えと言って王の執務を片づけていたのだという。

 見方もやり方も全く分からない状態からのスタートでは無かったので、それ程苦労はしていないと少しやつれた顔で言われた。


 側妃は魔石化が始まって、2カ月後には完全に物言わぬ魔石となってしまった。今まで類を見ない程の大きさの自分の姿を模した女神像が原因なのか、魔石化の進行は早かったようだ。

 高純度の魔石は大変貴重ではあるが、魔法師達の研究の為に使用される方向となっている。

 人の形をしている物を使える気になるのかどうか知らないが、微妙な顔をして魔法師棟へ運んでいる所を見かけた。


 クラウディオとミリアムは側妃と共に離宮へ幽閉となった。近くで母親が魔石に変化するのを見守り、居なくなった後は2人きり、その場所に居続けなければならない。ブリオネス公爵家が断絶してしまい、新たな旗印とされないために監視付きの生活を余儀なくされる。

 現実を受け止めきれないミリアムは抵抗しながら離宮へ連れて行かれたが、クラウディオは落ち着いた様子だった。



 目まぐるしく時は過ぎて私は20歳になってしまった。


「やっぱりマルガリータ、貴方は最高ね」

「ふっふっふ。当然ですわ! イザベル様こそ、この後の宴会の準備は如何です?」

「余裕よ。わたしを見くびらないで頂戴。それにしても、よくこんな事を考え付くものね」

「夢で見た事を現実にしたに過ぎませんわ」

「2人共それくらいにして、そろそろ時間じゃない? じゃあオーリ、向こうでね」


 私そっちのけで褒め合うイザベルとマルガリータをリリアナが呆れ顔で連れ去って行く。

 今の私は白のドレスを着ている。上質のシルクの上に重ねて縫われたレースが美しい1着だ。


 神殿の修復に時間がかかっている為、そこで式を挙げる事は出来ない。式を劇場で行った後、王城で祝賀会を催すことになった。これを提案したのはマルガリータだ。エルネストが面白がって許可を出してしまったし、飾り付けもマルガリータ監修の元に作られた。


 約束通りマルガリータは計画書を作成し実行に移した。後から知ったイザベルが急に闘志を燃やし始めたので任せた。

 私がやった事といえば招待状をせっせと書いたくらいで、後は新たな物語を1つ書き上げて劇場を使う許可をくれたエルネストに献上したのだった。


 自分の事なのにどうなのだろうと思うが、元々式を挙げられると考えていなかった事やちょっとした事件もあり適材適所という事で気にしないことにした。自分でやるよりは遥かに良いと思うし、不満は無い。


 王城の騎士が呼びに来て座っていた椅子から立ち上がり控室から会場の入り口へ移動する。入り口の前では父が待っている。


「これでやっと肩の荷が下りるな」

「まるで私が一番手のかかる子みたいに……」

「そういう意味では無いのだがな」

「じゃあ何ですか?」


 問いかけた所でドアが開けられ私と父は口を閉じた。

 この先気軽に会話が出来る機会なんて無いのに……空気を読まない騎士を軽く睨むとニコリと微笑まれた。


「とにかく笑っていなさい」


 父が小声で忠告したのを受けて笑みを作る。


 周りをぐるりと囲う造りになっている劇場の桟敷席には招待した貴族達が、舞台の下では両陛下と私の家族、ブロトンス侯爵家とラサロ公爵家が見守っている。神聖な気持ちどころか緊張で足が震えて転びそうだ。

 転びはしなかったけれど、何とかアルベルトに支えられて舞台に上がり神官長のお言葉を聞いてから結婚証明書にサインをした。


「では誓いの口づけを」


 神官長に告げられてアルベルトと向き合う。ヴェールを持ち上げられてから顔を上げた。


「私の全てを貴方に捧げるわ。愛してる」


 囁くように言うと驚いたように目を瞠り、すぐ表情を和らげたアルベルトに私の言葉が受け入れられた安心感を得て目を閉じる。神官長が小声で「長すぎです!」と注意を受けるまで長く唇を合わせ続けた。


 口づけを終えて2人同時にこの会場に来ている彼等の方へ向く。すると大きな拍手に包まれたのだった。

以上、終幕。

お付き合いいただきありがとうございました。

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