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オリビア・クレーエ  作者: ならせ
第2幕
24/52

第2幕ー1 アルベルトの妹

第2幕はじまり。

時系列的にはオリビアがマリアを騙すために色々やり始めた辺り。

宜しければ最後までお付き合いください。

 アルベルトと婚約して2、3カ月程経った頃だろうか。その日はとても暑い日で、あまりにも暑くて街中は閑散としていて、人を見かけてもぐったりした様子。王城の門前に立つ門番ですら心配になるくらいダラダラ汗をかいていて、目はどこか遠くを見ている。

 王城内も暑さで倒れる人が出て、それを騎士がぐったりした様子で背負って運ぶ姿を見かける。日陰になっている壁に体をくっつけて涼を取ろうとしている人も見かけた。


 王城の決められた部屋で待っていたアルベルトすら上着を着ず、袖をまくり、ボタンをいくつか開けてぐったりしていた。私も自室でならドレスを脱いでシュミーズ姿でだらけたい。はしたないとドロテアに怒られるけれど。


「……も…もうムリ。ここに居たくない。暑すぎるんだここは」


 日差しがガンガン入って来る室内は窓を開けても温度が上がっていく一方。冬は暖かくて良いのだけどね……。ここ以外使わせてくれないからね。急な来客来賓に備える為という理由で要望は突き返されている。

 腐る程部屋はあるくせにケチだ。


「じゃあどこに行くのよ」

「ん…ちょっとついて来い」


 私の手を取って歩きだしたアルベルトについて行く。建物を出てずんずん奥へ進んで行く。王城の敷地は広大で王城の右側に騎士棟、左側には魔法棟が独立して建てられており、裏側には3つの離宮が残っている。

 アルベルトは迷うことなく何か出そうな木々が立ち並ぶ方へ突き進んで行く。踏みならされた道を進むと突然目の前が開けて建物が表れた。


「俺と家族の住処。ここなら涼しいし快適だ」


 そう言った場所は王妃とアルベルト、それから妹姫が住む離宮。確かユークレース宮と呼ばれている建物だ。

 アルベルト達がここに住むことになった経緯は父から聞いている。10年位前に殺されそうになりブロトンス侯爵が領地にある屋敷にアルベルトを保護していた。妹は確かラサロ公爵が保護していたはず。

 ブロトンス侯爵と王弟のラサロ公爵が動き、しばらく経ってやっと王城を出て離宮に住む事で生きる事を許されたという。私がマルガリータとアルベルトに出会ったのもその頃だ。

 

 2階建ての離宮は言った通り涼しい。目の前の木々が日光を遮ってくれているのか、空気がひんやりしていて体に溜まった熱が抜けていく。談話室らしき部屋に入ってほっとしていると、ここでは殆ど見ない珍しい黒髪のメイドが冷たい飲み物を持ってきてくれた。


 オレンジの風味がする初めて飲むお茶だった。

 王城へ行けば必ず飲んだことや食べた事の無いような物が出る。まさか離宮でも味わえるとは思わず内心驚いた。


「妹のフェリシアナが作っておいたやつだよ」

「じゃあ……もしかして今まで王城で出てたものって」

「全部妹が作ったやつだ。あっちで気を利かせて用意なんてしてくれる訳無いだろ。それに何が入れられているか分かったものじゃないしな」

「ああ、なるほど」

「ここは使用人が少ないから、ある程度は自分でやるんだよ。料理は俺か妹、妹は菓子作りが好きで大抵何か作っておいてあるんだ」

「じゃあ、レシピを売ってと言ったら売ってくれるかしら」

「本人に交渉してみたら良いんじゃないか?」


 奥の方で音を立ててドアを閉める音がしたと思うと何かを叫びながらパタパタ走って来る音が近づいてきた。アルベルトと何事だろうかと顔を見合わせていると応接間のドアが開かれ、メイド服姿の少女が走り込んで来た。


「わああああああ!兄様~~~~~~!!!!」

「フェリ?!」


 ダッシュで飛びついて、わあわあ聞き取れない言葉を吐き続けている少女をアルベルトは抱きとめた。


「どうした?またあいつ等にいじめられたか?」

「違います!でもどうしたら良いのか分からなくて逃げてきてしまいましたの。あああ……本当にどうしたら」

「とりあえず落ち着け。ほら、これでも飲め」

「ありがとうございます」


 アルベルトが飲みかけのグラスを彼女に渡すと両手で受け取ってこくこく喉を鳴らしながら飲み干した。なかなか良い飲みっぷりを披露して、空になったグラスを彼に返す。


「落ち着いたか?」

「……はい、とりあえずは。ところで、この方はどなたなんですの?」

「前に話しただろう。俺の婚約者、オリビア・クレーエだ。んで、これが妹のフェリシアナ。お前の義理の姉になる人なんだから挨拶しろ」


 アルベルトはフェシリアナを軽く小突いた。


「まぁ!この方が兄様の!ではこの前一緒に歩いていらした方は違ったのですね」

「あの人は違う!勝手に付いてきたんだ」

「兄様に近づく令嬢なんて居ないからてっきり」


 大方マリアの事だろう。人目に触れるようにわざとやっているのだ。フェシリアナもその場面を目にしていたようで、違う人物を婚約者として紹介されて軽い混乱状態に陥っていた。

 しかし自分の兄がモテない事を暴露しなくても良いのではないだろうか。フェシリアナの背後でアルベルトがちょっとだけ傷ついた顔をしている。見た目や性格は申し分無いと私は思う。彼を取り巻く環境が人を遠ざけているだけなのだから。


 マリアの場合は私から奪いたいだけでやっているので彼の事情とかそういうものは全く考えてなんかいない。伯母のしてきた事を見て、同じ美女の条件を満たしている側妃の振舞いを見て学習した結果だ。美しければ何でも許されると思っているらしい。よってマリアは論外なのである。


「失礼致しました。アルベルトの妹フェリシアナと申します」


 赤色の髪は後ろで1つに纏められて、王城のお仕着せであるメイド服姿で、化粧1つしておらず荒れた手をしている王女らしく見えない王女様は立ち上がり、完璧な淑女の礼をして挨拶をして見せた。

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