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オリビア・クレーエ  作者: ならせ
第1幕
13/52

第1幕ー13 国王誕生祭当日

 あっという間にひと月経ってしまい国王誕生祭の日を迎えた。

 王城で行われる夜会は朝から準備で忙しい。風呂に入れられ、久しぶりに帰ってきた姉達のドレス選びの騒がしい声を聞きながら軽食を摘んで、自分の番が来るまで大人しく読書。

 クレーエ家の支度は姉達がいると特に賑やかだ。


 双子の姉達は私が眠っている深夜に帰って来て仮眠をとっただけなのに、こんなにも元気だ。どうしてそんな体力が有り余っている状態になれるのか不思議で仕方がない。


 父が与えた課題に対応する為に調べものをしたり、マリアへ偽アルベルトとして返信を書いたり、マルガリータの買い物に付き合ったり、アルベルトと会って話をしたり、とにかく1つやる事が増えただけで忙しく感じて時間があっという間に過ぎてしまった。何かもっと色々やりたかったのだが、それすら考える余裕が見当たらない。


 マリアへは忙しくてなかなか返事を返せないお詫びと誕生祭の日に決断する事をメッセージカードにしたため、プレゼント用にラッピングされた箱に付けた。見た目にはキラキラしていてマリア好みなはずだから、きっと今日夜会で身に着けてくると踏んでのプレゼントだ。


 エルネストから頼んでいた物のサンプルも送られてきた。親切にレシピまで付けてくれたので使わせてもらう事にした。

 レシピと私のメモを料理長に渡して作成をお願いし、使い道を言ったら変な顔をされたけれど、請け負ってくれて昨晩の内にそれは完成している。


 やっと私の番が回って来て、ドロテアが料理長作成のソレを摘んで目を眇めた。


「本当にこれを?」

「そうよ?問題ある?」

「あります。ありまくりますね。第一破れたらどうするんです」

「大丈夫よ。簡単に破れないように料理長がしてくれたもの。時間が押してきているから早くやっちゃって」

「……どうなっても知りませんからね?」


 専用に作ったコルセットに巻き付けるようにしてからドレスを着た。アクセサリーは血のように真っ赤なルビー。今は亡くなってしまった母の生みのお母様。つまりは本当のおばあさまの形見でもあるアクセサリーを母に借りた。


 いつもより濃いめに化粧をして、きつい顔立ちが更にきつくなった気がするがマリアにとっての悪役は私なので見た目の効果は大切だろう。ドレスは以前着たことのあるドレス。これもきっと伯母とマリアにとって嘲笑の的になる。


 アルベルトが迎えに来て、馬車に乗り込むとゆっくりと馬車は王城に向けて走り出した。今日のアルベルトの装いはいつもの恰好と違い飾りの沢山付いた盛装。赤色の上着の胸ポケットには私が着ているドレスと同じ色のポケットチーフ。

 これを見ただけで私とアルベルトの仲を疑う人は出ないだろう。


 王城に着いてから大広間へは名を呼ばれてから入る事になっており、長い列に並んで呼ばれるのを待つ。1組、また1組名を呼ばれて大広間へ吸い込まれていく。


 今日が最後だと思うと悲しいようなもったいないような気持ちだ。最初に感じていた罪悪感が今では無くなっていて楽しむまでになっていた。

 入口が目前になると何かが体に憑りついたような、そんな不思議な感覚に陥る。劇場の舞台へ出る時の俳優達はこんな感覚を毎回味わっているのだろうか。

 やっと私達の名が呼ばれて大広間へと足を同時に踏み出した。


 最初にやるべき事は本日の主役である国王陛下にお祝いの言葉を述べる事である。ベラーク国王フェルナンド3世は髪の色は金髪だけれども顔は近くで見るとアルベルトとそっくりだった。


 老けたらこんな顔になるのだなと思いながらアルベルトに倣って同じ挨拶をすると陛下は興味が無い反応を示した。隣には王妃が居るはずなのだが、そこには側妃がしなだれかかる様にして座っていた。

 王もそれを咎めないのだから実質王妃として認めているのは彼女なのだろう。

 アルベルトにとっては一番気分を害する光景だ。


「オリビア・クレーエさん、困ったことがあれば私に言って頂戴。すぐに解決してあげてよ。私、これでも応援しているのよ」


 いい年のはずなのに年齢を感じさせない少女のようにも見える側妃はすました声で言う。


「ありがとうございます。少々騒がせてしまうかと思いますが、大目に見ていただければ十分です」

「そう?」

「ええ。あまり長々とお話していては後ろで待っている方々が痺れを切らしそうですので御前を失礼させて頂きますね」


 チラリと後ろを見てから再び礼をしてアルベルトと共に去った。去る途中エルネストと目が合い、彼が唇の端を上げた。

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