栄光の落日 後編 ~夜明けの宝冠~
声劇用台本。
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栄光の落日 後編 ~夜明けの宝冠~
・登場人物
カイル(♂/22歳) ダリス国親衛隊の隊長。赤い神衣を纏う。
フィオ(♀/19歳) ダリス国親衛隊の隊員。青い神衣を纏う。
キール(♂/33歳) 元ダリス国親衛隊員で反乱分子ブラッディムーン。赤い神衣を纏う。
アリシア(♀/30歳) 反乱分子ブラッディムーン。赤い神衣を纏う。
バイラル(♂/42歳) ダリス国国王。金色の神衣を纏う。
━━━━━━━━━━
配役 3:2:1
・カイル(♂)
・フィオ(♀)
・キール(♂)
・アリシア(♀)
・バイラル(♂)
・N(不問)
━━━━━━━━━━
カイル(M):━やめろ━
キール(M):可哀想だが、これも運命だ…許してくれ
カイル(M):━やめろっ━
アリシア(M):待って!この子、オリジナルよ…まだ目覚めてはいないみたいだけど…
カイル(M):━やめろっ!━
キール(M):何だと?この村にオリジナルが?…皮肉なものだな。すまない、せめて、強く生きてくれ。
カイル:やめろぉぉぉ!!…はっ!?…くそっ、またあの夢か…
フィオ:(ドアのノック音)失礼します。隊長、如何なさいましたか?
カイル:…いや、すまない…大丈夫だ。
フィオ:また、例の夢ですか?…お辛いでしょう…
カイル:心配かけてすまない、僕は大丈夫だ。
フィオ:陛下の演説のお時間までまだ時間はありますので、もう一休みなされては如何ですか?
カイル:いや、ちょっと気晴らしに街にでも出てくる。フィオは警備に戻ってくれ。
フィオ:ゴホッ(咳き込む)
カイル:ん、どうした?
フィオ:いえ、最近少し咳が出るんですが…体調は問題ありません。
カイル:そうか、身体は大事にしろよ?では、ちょっと行ってくる。
フィオ:はっ、お気をつけていってらっしゃいませ!
N:━神西暦元年、神種と呼ばれる人類が誕生した。彼等は神衣というオーラを纏い、人智を越えた力を持っていた。
力を手にした者は、こぞって侵略と破壊を繰り返し世界の理は崩壊した。
かつて猛威を振るった戦略兵器も彼等神種には効果が無く、既存の国家は跡形も無く消え去った。
混沌とした世界ながらも秀でた神種が国を作り統治し、新たな国境が設けられ一応の秩序は構築された。
世界地図は大きく書き換えられ、特に広大な領地を持つ国家は5大国と呼ばれるようになった。
ここは5大国のひとつ、ダリス国。
神西暦98年の物語である。
カイルは城を出ると城下街にある喫茶店へと足を踏み入れた。
アリシア:いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ。
カイル:へえ、初めて入ったけど落ち着いた雰囲気のいい店だな。
アリシア:ご注文はいかがなさいますか?
カイル:あ、コーヒーお願いします。ホットで。
アリシア:かしこまりました。少々お待ち下さい。
カイル:…ふぅ、陛下の演説まであと2時間か。
アリシア:あら…お客様は軍の方ですか?
カイル:あ、はい…一応。
アリシア:そうだったんですね。今回の演説は何を発表なさるのかしらね……また、戦争になるのかしら?
カイル:…そう、ならないことを祈りたいですが…
アリシア:あ、ごめんなさい。軍の方ですもの、迂闊なこと言えませんよね。
カイル:いえ…かえって気を使わせてしまったようで、すみません。
アリシア:…コーヒー、おまたせしました。ごゆっくりどうぞ。
カイル:ありがとうございます……あ、おいしい。
アリシア:ふふっ、こだわりの豆を毎回挽いてる当店の自信作です。お気に召しましたか?
カイル:はい、こんな美味しいコーヒー初めてです。コーヒーも美味しくて素敵な店員さんもいて、毎日でも通いたいくらいですよ。
アリシア:あら、お上手なんだから。今日の料金サービスしちゃおうかしら?
キール:おいおい、勘弁してくれよ。結構薄利でやってるんだぞ。
アリシア:あ、マスター…聞いてました?
キール:ったく、いい男見るとすぐ料金サービスしやがって。その分はきっちり給料から引いとくからな。
カイル:あ…あの、ちゃんとお代は払いますので…
キール:あー、大丈夫大丈夫、いいんだよ。正直営利目的ってよりは俺の道楽だから。…こんなご時世だしね、せめて美味いコーヒーくらい自由に飲みたいじゃないか。
カイル:…
キール:そういえば軍の人間らしいが、今日の王の演説には同席するのかい?
カイル:あ、はい。…っと、すみません、そろそろ行かないと。
キール:お勤めご苦労さん。今日のお代は出会いの記念てことでサービスだ。また来なよ、少年。
カイル:ありがとうございます、本当に通わせてもらいます。
アリシア:ありがとうございましたー、またお待ちしてますね。
カイル:ご馳走さまでした、それでは。
キール:ああ、いってらっしゃい。
アリシア:…王の演説に同席ですって。
キール:王に同伴するのは直属の親衛隊の人間、それも階級はかなり上の者だ。そうか…あの少年…
フィオ:あ、おかえりなさいませ、隊長。
カイル:ああ、今戻った。陛下はどうなされている?
フィオ:国営放送の準備も整い陛下の御準備も完了されております。あとは時間を待つばかりかと。
カイル:そうか。それでは僕も陛下の元へ向かうか…
フィオ:今回の演説は…
カイル:ん?
フィオ:今回の演説は…どのような発表がされるのでしょうか?…今でこそ5大国と呼ばれていますが、我がダリス国は他国を攻め落とし吸収合併をして大国と肩を並べた国。また戦争が始まるのでしょうか?
カイル:…それは僕にもわからない。近年、陛下は他国への侵攻を命じておられないが、弱味を見せたら他国の侵略を許すことになりかねない。国の維持の為には仕方のないことだ。
フィオ:ですが、100年ほど前の世界は今と違い会談により和平が結ばれていたと聞きます。神種の力が強大であることは私も理解はしています、国を守る為であるということも理解はしているつもりです…
カイル:…正直に言ってしまえば、僕だって好き好んで戦争をしている訳ではない。だが、世界の歴史を紐解けば必ず争いは起きている。腕力で勝る者、戦略や戦力の数で勝る者、強力な兵器で勝る者…いつの時代も勝者がいて、その後に安寧が訪れる。
フィオ:神種という種が誕生したことが時代の節目になってしまったのですね…。この時代の勝者は…世界に安寧をもたらしてくれるのでしょうか?
カイル:…かつて、陛下と並び「金色の虎」と呼ばれ、敵国から恐れられていたというソリス様が今もご健在であれば統治も夢では無かったのだろうが…
フィオ:「マルグリード戦役」ですね…。隣国ベルサスの軍勢とダリス軍親衛隊の戦い…。国境付近の都市マルグリードが消滅し、死傷者は100万を越えたという…
カイル:ああ、そしてその戦いは1年を迎えようかというときに終戦を迎えた…。ダリス軍は陛下1人、ベルサス軍は現ベルサス国王「ミハエル」1人を残すのみとなり両国共に停戦に踏み切った。両国とも有能な神種を失いたくはなかったのだろうが…。と、長話がすぎたな、陛下の元に向かわねば。
N:マルグリード戦役━ 今より15年前に起きた神西暦最大の戦いである。小国に侵攻し勢力を拡大していったダリス国は隣国ベルサスの侵入を許してしまう。
神種の大半を侵攻に割いていたダリスは王直属の親衛隊を派遣しこれに対抗した。
2人の英雄…金色の虎の異名を持つソリス、金色の龍の異名を持つ現ダリス国王バイラル。両名の働きにより辛くも停戦へと持ち込んだがソリスは戦死、帰って来たのはバイラルただ1人であった。
国民は地獄の戦地より戻ったバイラルを英雄と呼び、バイラルはダリス国6代目王位を継承した。
バイラル:我が親愛なるダリス国民よ、此度の発表は誠に喜ばしいものとなる。我がダリス国は隣国ベルサスと和平条約を結ぶ運びとなった。
皆も知っておろう、マルグリードで起きた悪夢を。神西暦史上最強と称されたソリスをはじめ多くの民を失った。しかしその犠牲は決して無駄ではなかった!
あの戦役により証明された我が国の力に賛同し、志を共にする国を迎え、今では5大国と呼ばれるまでに成長した!
そして今、かつて最大の敵であった隣国ベルサスが最大の友となるべく動き始めるのだ!
ダリスとベルサスが手を結べば最早世界に敵は無い!国民達よ、今までよくぞ私についてきてくれた。間もなく、世界に安寧が訪れよう!
N:国王バイラルの演説によりダリス国民は歓喜した。5大国により一応の均衡が保たれていたとはいえ、いつそのバランスが崩れてもおかしくない状態なのは周知の事実であった。しかしダリスとベルサスが同盟を結ぶとあればこれに追随する国は事実上皆無となる。
この和平条約が締結されれば正真正銘世界が変わることになるのである。
カイル(M):ベルサスとの和平…これが実現すれば確かに世界は変わる。100年近く続いた混沌の時代が終わるかもしれない!
バイラル:今より7日後、ベルサス国王ミハエル殿との調印を以て和平条約は締結される!あと7日、あと7日で我がダリス国はベルサス国と共に世界の中心となるであろう!
N:演説はこうして終了した。歓喜の声が国中に響き渡る中、カフェで国王の演説中継を見ていたキールが静かに口を開く。
キール:7日後…ね、随分急な話じゃないか。
アリシア:ええ、ちょっと驚いたわ。それより見た?さっきのお客様…
キール:ああ、まさかバイラルの横に立っているとはね…この国において国王の隣に立つ者の役職は決まっている。
国王直属親衛隊隊長…
アリシア:因果なものね…まさかあの子が親衛隊長だなんて。
キール:これも運命か。世界の意思は何を望んでいるのかね?
神種なんて呼ばれている者達が蔓延るこの世界で、神の戯れに付き合わされる…たまったもんじゃない。
アリシア:…キール、貴方は1人じゃない。私も一緒に背負うわ、運命という十字架を。
キール:ありがとう、アリシア…
N:演説を終えた国王バイラルはカイルを自室へと呼び出した。
バイラル:先ずはこれまでの働き大義であった。此度の和平条約が締結すれば、永きに渡る戦乱の世も落ち着きを取り戻すであろう。
カイル:はっ。これも陛下の御尽力あればこそ。この度の和平条約、一ダリス国民として誠に嬉しく思います。
バイラル:神種誕生以来、秩序というものを何処かに忘れてきてしまったのであろうな。所詮人類とは強大な力を持てば振るわずにはいられぬのであろう。
カイル:神の力を与えられし人類、神種。幸い…と言ってよいものかはわかりませんが、ダリスは神種の出生率が高かったおかげで他国からの侵略も少なく済んだというのも神の思し召しなのでしょうか…
バイラル:我が国には優秀な神種が多く産まれてくれた…数も勿論だが才能のある神種が非常に多かった。無論お主もそうだ。
N:神種の出生率は約100万人に1人と言われている。通常、神種は青いオーラの神衣を纏うが稀に赤い神衣を纏う者がいた。
そして赤い神衣の神種が己の限界を越えた時、その神衣は金色に輝くという。ソリスやバイラルが金色の龍虎と呼ばれたのはそのためである。
カイル:ありがたきお言葉、陛下の金色の神衣には遠く及びませんが粉骨砕身この身を捧げる所存でございます。
バイラル:うむ…ではお主にひとつ任を与える。
カイル:なんなりと。
バイラル:ブラッディムーン…
カイル:っ!!
N:ドクン!…カイルの心臓が激しく鼓動した。ブラッディムーンとはダリス国内に潜伏する反乱分子の俗称である。
カイルはダリス国の外れにある小さな村の出身だが、今より10年前ブラッディムーンによってカイル1人を残し村は全滅させられたのである。
バイラル:和平条約を結ぶにあたり国内の問題は消しておきたい。お主にとっては因縁も深いであろう…酷な任であるとは思うがブラッディムーンを討ち取ってもらいたい。任せてよいか?
カイル:…はっ。必ず、この手で…
バイラル:よく言ってくれた。既にブラッディムーンの調査は進めておる、明日にでも報告があるであろう。今日はもう休むがよい。
カイル:はい…では、失礼いたします。
N:王の部屋を出たカイルは自室へと戻り倒れ込むようにベッドに身を預けた。今にも溢れ出そうな感情を抑えるかのように。そこにフィオが訪れた。
フィオ:隊長、失礼いたします。…大丈夫ですか?顔色が悪いようですが…
カイル:ああ、フィオか…。大丈夫、何でもないよ。
フィオ:やはり、ブラッディムーンの件…ですよね。先程私の方にも諜報隊から連絡が入りました。
カイル:…
フィオ:もしお許し頂けるのであれば…この任務、私が━
カイル:フィオ!……ありがとう、だが心配はいらない。ブラッディムーンは…僕が、決着をつけなければならない。
フィオ:隊長、どうかご無理はなされないで下さい。…隊長は、隊長は1人で何でも抱え込みすぎです!
カイル:フィオ…
フィオ:私だって親衛隊の一員です、少しは頼って下さい!私は国の為なら、隊長の為なら命を懸けられます!どうしていつも隊長は…
カイル:フィオ…すまない、ありがとう。そうだな、僕は1人で戦っているわけじゃないんだ…少し頭を冷やしてくるよ。
フィオ:隊長…はい、お気を付けていってらっしゃいませ。
N:涙をこらえながら訴えるフィオに優しく微笑むとカイルは城を出た。日は沈み、昼間の歓喜に包まれた賑やかな騒ぎとは変わり静寂に包まれていた。
ふと目をやると灯りの点いた喫茶店が目に入った。カイルは吸い込まれるようにその店へと足を踏み入れた。
キール:いらっしゃい。ああ、昼間の少年…お勤めご苦労様。
カイル:こんばんは、また来てしまいました。
キール:そんなに気に入ってくれたのかい?嬉しいねぇ。好きな席に座ってくれ…ホットでいいかな?
カイル:はい、ちょっと気分を落ち着けたくて…
キール:昼間の演説見てたよ。バイラル王の隣にいたじゃないか…ってことは少年は親衛隊の人なのかな?
カイル:ええ、これでも隊長を任されています。
キール:へぇ、そりゃ凄い。その若さで親衛隊長とは、よほどの鍛練を積み重ねたんだろうね。
カイル:目標、と言っていいものかわかりませんが僕にはやらなくてはならないことがあるんです。
キール:そうか…差し支えなければ聞いても?
カイル:…僕はノースタットの出身なんです。
キール:ああ、たしか…10年前に反乱分子に全滅させられてしまった村…だったかな?
カイル:ええ。ノースタットは穏やかな村でした。陛下に献上する花を栽培して生計を立てている穏やかな…
キール:そんな穏やかな村を滅ぼしたブラッディムーンを討つ。それが少年の目標なのかい?
カイル:…改めて口に出してしまうと酷いものですね。国防の要を任されている親衛隊長の目標が復讐だなんて。
キール:だが、生きる活力は必要だ。それが復讐であったとしても、世界の平和であったとしても。少年が生きる目標を持つことを俺は否定はしないよ。
カイル:…ありがとうございます。聞いていただいて少し気が楽になりました。明日は非番なのでゆっくりしようと思います。
キール:いい顔になったな…少年。あー、ひとつだけ年長者からのアドバイスだ。「迷うな」最後に決断するのは自分自身だ。迷いを持った決断は必ず後悔が残る、自分の信じる道を行け。
カイル:…はい。あの、本当にありがとうございました
、また来させてもらいます、ご馳走さまでした!
キール:ああ…またな、少年。
N:一方その頃、フィオはブラッディムーンの調査に当たっていた。資料室からブラッディムーン関連と思われる事件記録を読み漁り、ひとつの仮説を立てた。
「ブラッディムーンの目的は、国王バイラルに献上する花に関連する場所を標的にしている」と。
その仮説から割り出した次の標的は城下街の外れにある廃工場。
己の仮説を信じフィオは廃工場へ向かうと1人の人影を発見した。
フィオ:動くな!私は親衛隊のフィオ=ハルトーシュだ。こんな時間にここで何をしている?
アリシア:あら、軍のお方ですか?ちょっと道に迷ってしまいまして。よろしかったら中心街まで案内していただけませんか?
フィオ:こんな街外れで道に迷ったなどと白々しい。調べはついている、ブラッディムーンのメンバーなのだろう?
アリシア:そんな、何を根拠に私が反乱分子などとおっしゃるの?
フィオ:ブラッディムーンが狙うのは陛下に献上する花、通称「プレシャスローズ」。花弁1枚1枚がそれぞれ違う色を持つ特殊な薔薇。
どういう理由かは知らないが、プレシャスローズに関係する場所や施設が貴様達ブラッディムーンの標的なんだろ?
アリシア:……よく調べたものね。
フィオ:認めるんだな?
アリシア:どうせ認めても認めなくても私は連行されてしまうのでしょ?…そんなことをしている時間はないのよ。
フィオ:抵抗はしないことだ、私も親衛隊の末席に名を連ねる者…多少強引でも連れて行かせてもらうぞ、はぁっ!
N:フィオは剣を抜き構えると青い神衣を纏った。
アリシア:…神衣。
フィオ:怖じ気づいたか?親衛隊には貴様達の討伐命令が下っている。無駄な抵抗は命を縮めることになる。
アリシア:悲しい色…。貴女、歳はいくつ?
フィオ:何?今は無駄話をしている(暇などない!)
アリシア:(遮って)答えなさい!!……最後になるかもしれないんだもの、少し付き合ってよ。
フィオ:…来月で20歳になる。
アリシア:そう…好きな人はいるの?想いは伝えた?
フィオ:っ、そんなこと、貴様に話す必要は無い!
アリシア:わかりやすいのね…。こんな時代に、こんな国に産まれなければ、普通の女の子として幸せになれたでしょうに…
フィオ:貴様っ、私を侮辱するのか!?
アリシア:そんなつもりはないわ…。ところで貴女「プレシャスガーデン」には参加した?
フィオ:ああ、幸運なことに8年前に陛下にお招きいただいてな。貴様達がプレシャスローズの栽培元や保管している施設を破壊したために、私が同席させて頂いたとき以降は執り行われなくなってしまったがな。
アリシア:……ごめんなさい。
フィオ:何を今更…もう無駄話はいいだろう。大人しく着いてきてもらおうか。
アリシア:ごめんなさい、それは出来ないの。まだやらなきゃいけないことがあるから…
フィオ:こちらは貴様達の討伐令が下っているんだ、従わないのであればここで死んでもらうことになるが?
アリシア:…本当に、ごめんなさい。
フィオ:そうか……ならば仕方ない。ここで、死んでもらうっ!
N:そう叫び地面を蹴ると青い神衣に包まれたフィオの剣がアリシアに向かい襲いかかった。しかし、アリシアは表情ひとつ変えることなくフィオの太刀筋を見極め攻撃を避けていく。
初めてアリシアの頬をフィオの剣が掠めたその瞬間、赤い神衣に包まれた短剣がフィオの心臓を的確に貫いていた。
フィオ:がっ、はっ…
アリシア:ごめんなさい、私も神種なの。オリジナルの赤の、ね。
N:力なくその場に崩れ落ちるフィオを赤い神衣を身に纏ったアリシアが抱き止めた。
アリシア:ごめんなさい…ごめん、ごめんね…救ってあげられなくて…
N:意識が薄れる中、遠く聞こえる優しい声にフィオは己の死を悟った。それと同時に走馬灯の様に記憶が脳裏を過る。
フィオ(M):なんでこんな時代に産まれちゃったのかな?
なんで神種なんて力を持っちゃったのかな?
違う時代に産まれてたら、普通に女の子として生きられたのかな?
隊長と、違った関係築けたのかな?
普通にオシャレして、普通のデートして、普通の恋が出来たのかな?
…カイル…さん…
N:アリシアはフィオを抱き締めたまま、息を引き取るまで何度も「ごめんね」と繰り返した。
そしてフィオの亡骸を離れた場所に移動させて寝かせると、廃工場を爆破した。
燃え盛る廃工場を背にアリシアは涙を流しながら去って行った。
カイル:…爆発音?なんだ?
N:城へ帰還しようとしていたカイルの耳に爆発音が届く。胸騒ぎのしたカイルは現場に向かって駆け出した。
カイル:っ!?…これは?
N:現場に到着したカイルの目には原型を留めない程に無惨に倒壊した建物と天にも届きそうな炎と黒煙だった。
そして、視界の端にフィオの姿を捉えた。
カイル:フィオッ!!
N:直ぐ様フィオに駆け寄るカイル。だがフィオに触れる前に、既に事切れていることを察したカイルはその場に膝から崩れ落ちた。
カイル:何故…何故こんなことに?…言ったじゃないか、僕が決着をつけると…1人でやるなと僕に言ったのは君じゃないか…。何やってるんだよ!フィオッ!!
N:悲痛な叫びを嘲笑うかのように燃え盛る炎は勢いを増していった。
フィオの亡骸を抱き上げるとカイルはフィオと共に城へと戻った。フィオの亡骸を検死班に預けるとカイルは自室のベッドに倒れ込み天井を睨んだ。
喪失感と無力感に押し潰されそうな感情を復讐心で保ちながら…
カイル:くそっ!…駄目だ、こうしていても埒が明かない。
N:カイルはベッドから身体を起こし城を出た。目的など無かった、ただ闇雲に歩いていた。そこにキールが声をかける。
キール:おい、どうしたんだ少年?…今にも壊れちまいそうな顔しやがって。
カイル:…放っておいて下さい…
キール:復讐に取り憑かれたか…。まあいいさ、さっきも言ったが少年が生きる意味を見出だすことが出来るのであれば理由は何でもいい。
…だが、少年はこの国の親衛隊隊長だろう!そんな面で表を歩くな!
カイル:っ!?
キール:何があったのかは聞かん、聞く必要も無い。…今日は帰れ、そんな面を国民に見せるくらいなら部屋に閉じ籠ってろ。
カイル:貴方に、貴方に何がわかる!?僕の気持ちなんて(わかるものか!)
キール:(遮って)わかる必要も、わかってやる義理も無い!自分の立場を考えろ…頭を冷やせ。この国において親衛隊という存在の意味は少年にもわかるだろ?その長が与える影響力を自覚しろ。
カイル:……すみません。
キール:わかったなら城へ戻れ…眠れなくても部屋で寝てろ。先ずは冷静になることだ…いいな?
カイル:…はい…
N:キールに諭されたカイルは城へと戻った。部屋に戻り間もなくして検死班から「フィオが握っていた」と、三日月のモチーフのピアスを渡された。それを受け取るとカイルは哀しみに満ちた笑顔で呟き顔を伏せた。
カイル:…そういうことか…
N:翌朝、カイルは昨夜の廃工場跡へと足を運ぶと地べたに座り込み1人空に語り始めた。
カイル:なあフィオ、君の魂は成仏出来てるか?…僕は、隊長失格だな。国を守る親衛隊を預かる身でありながら未だに私怨に心が支配されている…復讐心に埋め尽くされている。
これから和平を結ぼうとしているというのに、僕は修羅の道を行こうとしているんだ。
今の僕を見たら君はなんて言うんだろうな?
フィオ(M):隊長が本当にしたいことは何ですか?
カイル:っ?
フィオ(M): 隊長が本当に求めていることは何ですか?
カイル:僕が、本当に求めていること?
フィオ(M):私の知っている隊長は、私の好きな隊長は、誰よりも平和を望んでいる方でした。
カイル:そんな…そんな立派な人間じゃない、僕はブラッディムーンを討ちたい!
村のみんなや君の仇を討ちたい…
フィオ(M):…意気地無し。
カイル:え?
フィオ(M):カイルさんは意気地無しです!
カイル:え?…ちょっと…
フィオ(M):いつもいつも自分1人で何でも背負って、何でも1人で解決しようとして、その業も1人で抱え込もうとして…
カイル:フィオ…
フィオ(M):隊長は迷ってるんです…いえ、迷いが生まれてしまったんですよね?隊長は…名も知らぬ敵兵を討つことにさえ心を痛めておられましたから。でもそれは悪いことではないはずです。
カイル:凄いな、フィオは。何でもお見通しか。
フィオ(M):ずっと、側で見ていましたから。産まれた時代と境遇を多少恨みはしましたけど…。それでも私は、私として産まれ、隊長に仕えられてよかったと言い切れますよ。
カイル:ありがとう、フィオ。今まで本当にありがとう…それから、鈍感な男ですまなかった…
フィオ(M):…名残惜しいですが、そろそろ行きますね?私は隊長を信じています。きっと隊長なら、この時代を終わらせることが出来るって…
カイル:…ああ、覚悟は、決まったよ。
フィオ(M):健闘をお祈りしています、隊長。
カイル:名前で呼んでくれないのか?
フィオ(M):……頑張ってください…カイルさん。
カイル:ああ…行ってくるよ━
N:それは夢か幻か、それとも神種の力による奇跡だったのかはわからない。
ふと気が付くとカイルは天を仰ぎ見ていた。ゆっくりと身体を起こし立ち上がるとカイルは城下街の喫茶店へと向かった。
アリシア:いらっしゃいま…あ、また来てくれたんですねっ。
キール:いらっしゃい、ふむ。昨夜とは別人だな…吹っ切れたのかい?
カイル:はい…お恥ずかしいところをお見せしてしまい申し訳ありません。
キール:迷うな…とは言ったが、人間誰でも迷うことはある。偉そうに言っといて俺だって散々迷子になってきたもんだ。
アリシア:あ、ホットでいいかしら?
カイル:はい、ありがとうございます。
キール:で、少年の答えは出たのかい?
カイル:…1人では出せませんでした。あのままだったら僕はきっと自分の感情に圧し殺されていたと思います。
キール:だが見つけられたんだろ?自分の道を。
カイル:はい。
キール:ならそれでいい。所詮人間なんて1人では生きていけないんだ、神種なんて力を得てもそれは変わらない。大事なのは覚悟して選んだ道を迷わず進むことだ…
アリシア:とても辛い決断もあると思うけれど……折れないで。きっと貴方の選んだ道は貴方にしか歩けない道だから。
カイル:ありがとうございます。部下…いや、大切な人が気付かせてくれました。力だけでも、想いだけでも駄目なんだと…
キール:そうか。いい人に巡り会えたんだな。
カイル:はい。そろそろ僕は行きます。あぁ、それとこれを…お返しします。
アリシア:っ!?
キール:…ありがとう、少年。…また、会おう。
カイル:…はい。ご馳走さまでした。
N:そう言うとカイルは店を出ていった。カイルが置いていった物…それは、三日月のモチーフのピアスであった。昨夜の戦闘でフィオの剣がアリシアの頬を掠めたときに落ちた物だった。
アリシア:…あの子、気付いて…
キール:ああ、その上でここに来た。大したもんだよ…俺も覚悟を決めないとね。アリシア、ミハエルに連絡を頼む…
アリシア:…キール!
キール:世代交代だ…こんな時代、終わりにしよう。
アリシア:…はい。
N:時は過ぎ、夜の静寂が支配する城内に高い金属音が鳴り響いた。ダリス城へ侵入したブラッディムーン…キールとアリシアは国王バイラルの寝室を目指していた。
アリシア:もうすぐバイラルの寝室…もうすぐ全てが終わる。
キール:ああ…そこの角を曲がれば…
N:間もなくバイラルの寝室というその時、ふたりの背後からゆっくりと足音が聞こえてきた。
キール:どうしたんだ、こんな夜更けに。今日は非番じゃなかったのかな?…少年。
N:ふたりは足を止めると背後から聞こえる足音の主へと振り返った。
カイル:貴方達を…ブラッディムーンを…討ちに来ました。
キール:いい目をするようになったな少年。アリシア、君は手を出すな…ここから先は俺と少年の戦いだ。
アリシア:…キール。わかったわ…
カイル:ダリス国、国王直属親衛隊隊長カイル=ラングリフ…いざ、参る!
キール:…キール=ケルヴィン……参る!
N:ふたりの戦士は同時に地面を蹴った。互いに赤い神衣を纏いぶつかり合うと高い金属音が城内に響き渡る。
カイル:何故…何故こんなことをするんです?もっと他に道は無かったんですか?これが、貴方の道なんですか?
キール:この道が俺の覚悟の道だ…15年前から、貫き通してきた。今さら揺らぐことは出来んさ!
カイル:国を滅ぼすことが、陛下を手に掛けることが貴方の望む世界だと言うんですか!?
キール:その通りだ、この国は1度滅ばねばならない!少なくともこの体制は必ず崩さねばならん!腐りきったこの王政を潰さねばならんのだ!
カイル:…っ、強い……このままでは…
N:始めは均衡していた戦いであったが実戦経験の差か、想いの差かジリジリと追い詰められていくカイル。一瞬の隙をついて距離をとり体勢を整える。そこに騒ぎを聞きつけたバイラルが姿を現した。
バイラル:何の騒ぎだ?…貴様、キール!!やはり貴様だったのか、ブラッディムーンの正体は。
カイル:やはり?…陛下はブラッディムーンの正体を知っておられたのですか?
キール:久し振りだな、バイラル…15年前は世話になったな。
バイラル:っ、このくたばり損ないが…この場で私自ら引導を渡してくれるわ!
キール:アリシア!
N:キールの掛け声と共に瞬時にバイラルの背後に回り込んだアリシアはバイラルの喉元に短刀を突き付けた。
アリシア:悪いわね…今とても大事なところなの。少し大人しくしていてもらうわよ。
バイラル:ぐっ、き、貴様ら…。カイル!早くこの賊共を始末しろ!
キール:役者が揃ったところで少し昔話をしようか…
カイル:…昔話だと?
キール:マルグリード戦役の真相とブラッディムーンの目的…と言えば興味を持ってもらえるかな?
カイル:…なに?
バイラル:耳を貸すでないカイル!早くこいつらを(始末しろ!)
アリシア:(遮って)黙りなさい!
バイラル:ぐっ…
キール:さて、先ずマルグリード戦役だが、実は俺もあの現場にいたんだ。親衛隊の一員としてね…
カイル:なっ!?
キール:歴史上生き残ったのはバイラルとミハエルのふたりとなっているが、事実は違う。実際に生き残ったのはバイラル、ソリス、ミハエル…そして俺の4人だ。
カイル:しっ、しかしソリス様は戦死したと…
キール:ああ、殺されたのさ…敵兵でなく、バイラルにな。
カイル:…なんだと?
キール:停戦が決まった瞬間には確かに此方は3人いたのさ、だがバイラルは自分を唯一の生還者にすることで自らを英雄に仕立て上げたんだ。ソリスと俺を亡き者にしてな…。
この国の王は代々親衛隊長が継ぐことになっている…副隊長のバイラルにはソリスが邪魔だったのさ。
カイル:そんな…そんなことが…でも貴方は生きて…
キール:…ソリスが俺に神衣の力を分けてくれたのさ。そのおかげで俺は九死に一生を得た。
バイラル:なんだと…神衣にそんな使い方が…?
キール:死にかけた金色が起こした最期の奇跡だったんだろうな…他にそんな例は聞かない。だが、こうして俺は生きている。
バイラル:おのれ…おのれソリス!死して尚、私の邪魔をするか!
カイル:…なんということを…
キール:生き残った俺は傷が癒えるのを待った…その時世話をしてくれたのがアリシアだ。
アリシア:私は軍には属せず、神種であることを隠して平穏に暮らしていたのだけれど…瀕死のキールが私の住んでいた村の側で倒れていて…。その後2年意識を取り戻さなかったわ。
キール:意識を取り戻した俺は、そこでバイラルが王位に就いたことを知り、そしてプレシャスガーデンの存在を知った…
カイル:プレシャスガーデン…陛下がプレシャスローズを使った料理で子供達と会食をなさるイベント…
アリシア:表向きだけ見れば国民との親睦を深める優しい王様に見えるでしょうね…
キール:だが、実際は違う。プレシャスローズは一般人の胃に入ると体内の細胞を強制的に活性化させる毒を持っている。そして活性化した細胞は人智を越えた力を搾り出す…人工的な神種の完成だ。
カイル:なっ!?…それでは、この国に神種の力に目覚める者が多かったのは…
アリシア:プレシャスローズの影響よ。
キール:そしてその毒は細胞の成長と共に進行していき、20歳になると同時にその宿主を殺す。前兆として何も無いのに咳込み始め、最終的に肺の細胞が全て死滅し呼吸不全で命を落とすことになる。
カイル:咳?…フィオ…まさか…
アリシア:…廃工場に来た子ね…一目でわかったわ。プレシャスローズで強制的に神種にされた人の出す神衣は…悲しい色をしてるから。
キール:この事実はバイラルと一部の研究者しか知らない…そして、その事実を隠蔽するために人工神種は他国への侵攻に派遣され続けてきたんだ。
近年他国へ侵略をしなくなったのは、俺達がプレシャスローズ関連の施設を全て破壊したことで人工神種を作り出せなくなったため…
カイル:…嘘だ…そんな、バカな話が…僕は…
バイラル:カイル!賊の戯言に耳を貸すで無い!もう和平の道は目前なのだぞ!この国の民を守るのではなかったのか!
カイル:っ!!
アリシア:黙りなさいと言っているでしょ!
カイル:……今の話が例え事実だとしても…僕は和平を捨てられない。陛下が亡くなられては和平の道が途切れてしまう…それだけは、それだけは譲れない、争いの歴史はここで断ち切らなければならないんだ!
キール:所詮歴史とは勝者の記録…。俺が語る真実と、少年が見てきた現実。世界の望む真実はどちらだろうな?
カイル:それでもっ!
キール:わかっているのは、俺が勝てばこの国が終わるという事実だけだ!少年、止めたければ俺を、この国の敵を倒してみせろ!
カイル:うおぉぉぉぉ!!
N:その瞬間、カイルの神衣は金色に色を変えた。足を踏み出したかと思ったその刹那、金色の刃はキールの腹部を貫いていた。
キール:がっ…はぁっ…
アリシア:キールッ!!
バイラル:よくやったカイル!さあ、次はこの女をっ!
キール:見事だ…少年……残すは…
カイル:…(泣き出す)…
キール:後顧の憂いは…絶たせてもらうぞっ!
N:キールはカイルの剣を身体から引き抜くと自らの剣を拾い上げた。そしてバイラルを見据え最後の力で地面を蹴った。
キール:バイラル…これで、終わりだっ!
バイラル:何っ、金色の神衣だと!?キール、貴様ぁっ!!
キール:はぁぁぁっ!!
バイラル:まっ、待て、キー…がはっ!!
N:金色の神衣を纏ったキールの剣はバイラルの心臓を貫いた。バイラルは力無く膝から崩れ二度と動くことはなかった。
カイル:陛下っ!!…そんな…結局、僕は止められなかった…
キール:…少年…
N:腹部を貫かれ、喋ることも儘ならないキールが涙を流すアリシアに抱かれながら声をかけた。
キール:少年……代々この国の王は親衛隊長が継ぐ…と言っただろ。国内を恐怖に陥れ、国王の命を奪ったブラッディムーンを…少年が討ったんだ…
カイル:…え?
キール:次の王は…お前だ…
N:そう言うとおぼつかない足取りでキールはカイルへと歩み寄って行った。そして呆然とするカイルに身を預けるとキールはカイルに己の神衣を分け与えた。
キール:…ソリスから受け継いだ意思と力…お前に託すぞ…世界を頼む……カイル…
N:己の纏う神衣をカイルへと託したキールは静かに、ゆっくりと倒れいった。すると、呆然と立ち尽くすカイルの神衣が変化を起こしていった。
カイル:…これは?
アリシア:七色の…神衣?
N:カイルの纏う神衣は色を変え虹色に輝いていた。その輝きを見るとアリシアはキールの亡骸を抱きしめカイルに向けた。
アリシア:…見える?キール。あれが、貴方が世界に残した希望の光よ…
カイル:まさか……キールさんは初めからこのつもりで?
アリシア:ええ…。全ての汚名を引き受け、ソリス様から受け継いだ想いを貴方に託す。よっぽど気に入ったんでしょうね、貴方のこと。
カイル:…そんな……それが、キールさんの選んだ道…
アリシア:あの人も、世界の安寧を望んでいたわ…。キールの想い、よろしくね…。
カイル:でも…陛下が亡くなった今、和平条約は…
アリシア:大丈夫よ…ベルサス国王ミハエルには、キールから「ソリスと俺の意思を継ぐ者が貴女の前に立つ、貴女達に世界の安寧を託す」と既に連絡が行っているわ…
カイル:…え?
アリシア:ミハエルもマルグリード戦役の事実を知る者。そして私達と同じ道を歩んでいる…ベルサスがダリスに侵攻して来なくなったのはそのためよ。
カイル:こんな大役…僕に務まるでしょうか?
アリシア:キールに言われなかった?「迷うな」って…。貴方はキールの意思を継いだのではないの?
カイル:…はい!…僕は、僕の信じた道を、託された想いと共に進みます。
N:翌日、バイラルの死亡と新国王の誕生が国中に知れ渡った。そして、この5日後ベルサス国王ミハエルとの調印によりダリスとベルサスの和平条約が締結。
ふたりの国王により他国への侵攻の停止が宣言された。
これに続くように各国も和平条約に加盟し、文字通り世界に平和が訪れた。
神西暦99年、混沌とした時代に終止符が打たれたのである…
━━━━━━━━━━ Fin ━━━━