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8話 反抗期

今回も短いですが、後の展開に必要なので、書きました。

子供たちは中学になって、また一つ変化が現れた。

ある朝、トイレの床に血を見つけた。美優紀が部屋でこもりきりになっている。私はどうしたらよいか戸惑い、そして咲さんに来てもらった。

「大丈夫よ。美優紀ちゃんも大人の階段を登り始めただけだから。これから綺麗な娘さんになるのよ」

そういって、咲さんは美優紀の部屋に入り、優しく面倒を見てくれた。

本当に、こういう場面では男は何もできない。これから美優紀は難しい年ごろになる。男親では何もアドバイスできない、つくづく娘のために女親が欲しいと思ったものだ。


そして和樹が少しぐれてしまった。

この時期の男にとってはいろいろ難しい時期でもある。

何かと、親や教師に反発するようになるのだが、和樹は少し程度が酷かった。

近所の不良グループに近づきだしたのだ。

咲さんにも乱暴な言葉遣いになり、私には面と向かって歯向かう態度を見せるようになった。

「和樹、鳥井さんにそんなことを言っては駄目です」咲さんが小言を言っても効かない。

私を睨みつける顔も見せるようになった。


「おい和樹、ちょっと来い」私は自分の家に半強制的に連れてきた。

「お前は何で、俺に反抗するんだ」

「そんなことはねえよ」

「だったら、俺に何で挨拶もしねえ、俺と顔を合わせようとしねえんだ」

「そんなのはあんたには関係ねえ、だろう」

良く言われる他人をおちょくるような言い草だ。これにかっとしては話が出来なくなる。私はぐっとこらえて話を変えた。

「和樹、お前将来のことを少しは考えるようになったか。お前は中学生で、すぐに高校にも入る。そうなればお前は進学するか、社会人になるか決めなければならないぞ。将来のことどうするか考えているのか」

「そんなの分からない」

和樹がぐれたのは一つにはサッカースクールをやめたこともあった。

「Jリーグ選手になる」小さい時はそんな夢を持っていても、大きくなるとそれが叶わない夢と分かる。挫折して和樹はスクールをやめた。そして何か他のことに夢中になれなくて、中学では帰宅部になっていた。ちなみに美優紀は足の速いのが買われ、陸上部に入っている。

なにもすることがなくて、周囲の大人たちに当たりだし、不良の真似事を始めたと言って良い。


「俺に出来るものがあるのか?」やはり自分の将来のことには気がかりのようだった。

「お前、俺の仕事に興味があったな」和也は咲さんが朝早く出かけ、夕方遅くならないと帰れない勤め人の辛さを見ていた。だから私が在宅で仕事をしているのがうらやましいのはすぐにも分かる。

「俺の仕事は家でもできるぞ。建築士の仕事だ」

「俺にもできるか?」

「勉強すれば出来る」

とにかく、和樹にはなにか興味を持たせることを見つけさせることだった。

「俺、数学に弱いからできるかな」

「どこが分からないんだ。まず分からないことを見つけることだ。学校が終われば家に来い。勉強を教えてやる」

中学になると、三角関数や対数などに躓いてしまうことがよくある。

私も高校生を教えるのは骨が折れるかも知れないが、中学生ぐらいなら教えてやれると思った。


「トーリーは何でおふくろと結婚したいんだろう?」和樹を教え始めて1月経った時、そんなことを言い出した。

「トーリーのおふくろを見る目は他の女の人を見る目と違っている。おふくろだって、トーリーが好きだ。トーリーだっておふくろが好きなんだろ?」

口に出さなかったが、和樹は私と咲さんが結婚すれば居場所がなくなるような不安感を持っていたようだ。

「馬鹿、俺は一度もまだ咲さんと手を握ったこともないぞ。いいか、大人になればただ好きだからと言って、一緒になれるものではないんだ。大人だからこそ、いろんなことを考えないといけないんだ。もう咲さんやお前と知り合って10年になる。その間一度も一緒になりたいとは思わなかった。好きでもしてはならないことをお互い分かっているからだ。安心しろ、咲さんも俺も大人だ。好きだからと言うだけで結婚しない」

その場をそう言って、済ませた。


本当にこの頃の子供は扱いが面倒である。私の時と思い返してみてもあんな面倒なことはしなかったように思うのだが、これも時代の違いなのか・・・



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