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第9話 やべーよやべーよ

「グヘヘへ・・・」

手斧や鎌を持った10人の野盗がグヘヘと下品な笑い声を上げながらシュージン達を取り囲む。その野盗達には頭から獣を思わせる大きな耳が生え、腰には尻尾があった。

(コイツら、獣人か!?)

獣人。この世界に存在する種族の一つ、その名の通り獣と人の二つの特徴を併せ持つ、普通の人間と比べて力が強く素早いため普通の戦いではまず人間には勝ち目はない。だが知能は低め。つまりは馬鹿。ミシェルは生まれてこの方実際に見たことなかったが、本で読んだことのある知識から脅威を感じた。

(クッ!囲まれたか、帝国兵と言い今日は厄日だ。だが獣人が相手と言えど・・・私とシュージンと召喚獣ならば・・・!)

グヘグヘ笑う獣人野盗団を尻目にミシェルがシュージンの方を見ると。

「やべーよやべーよやべーよやべーよやべーよ・・・!」

シュージンがガクガクと震えていた。

(ええぇぇぇぇっ!?シュージンどうしたんだぁぁっ!?)

ガクガクと震えるシュージン、もはや身震いというレベルではなくヘッドバンギングである。

(どんな怯え方だ!?)

ミシェルは心の中でメタルバンドのボーカル並に頭を前後に振るシュージンにツッコミを入れた。

(そういえば!)


“召喚獣が自由に使える距離、時間を見極めないといけない。”


先程言われた召喚獣の説明を思い出す。召喚獣の制限であり、召喚主の弱点。

(まさか今日の帝国兵との戦いで召喚の力を使い切ったのか!?)

召喚主を炎から守る召喚獣、人の何倍もの大きさのドラゴンを串刺しにする男達、傷をたちまちに治す薬を処方する凄腕の内科医、バカデカい団扇を持ったバカ。そしてそれらを一人で操るシュージンを思い浮かべる。

(こいつやっぱり計画性が無ぇぇ!!そして馬鹿だぁぁ!!)

今更ながら勝手にシュージンの馬鹿を再認識したミシェルであった。

「グヘヘへ!さっさと馬から降りやがれ!」

(さっきからグヘグヘとうるさいなコイツら!!)

「やべーよやべーよやべーよやべーよやべーよやべーよやべーよやべーよ!!」

大きくヘッドバンドをし続けるシュージン。

(コイツは存在自体がうるせぇぇぇ!!)

馬鹿は使い物にはならないと判断したミシェル、腰に差した剣を抜こうとする。

(しかし、私一人で獣人を10人も捌き切れるか!?)

そうこう考えているミシェル、すると一人の獣人が持っていた斧で地面をまるでドラム打ち鳴らすかのように叩き、追い立てるように声を上げる。

「さっさと馬から降りて金を出せ!そうすれば3人とも無事に帰してやるよ!」

「3人?」

私とシュージンと他に誰かいるのか?ミシェルが思った疑問を言おうとする、いや、それよりどこかであったような展開に気づく。

(まさか!?)

ミシェルの脳裏に手足の生えたトウモロコシの姿が浮かぶ。

「そこの金を持ってそうなオッサンもなんか言ったらどうだ!!」

シュージンの馬の後ろには初老の男性がいた。

「違った!ポタージュじゃねぇ!っていうか誰だ!?」

ポタージュ君は置き去りにされたためここにはいない。ミシェルがトウモロコシかと思ったその初老の男は腕組みをしながら事態を静観している。整髪料で髪をオールバックで整えられていて、高級感あふれるグレーのスーツを着ているその姿は紳士と呼ぶに相応しい威厳が漂っていた。ミシェルが驚いているとその紳士は馬を降り、ゆっくりと先程の斧ドラムの獣人に歩み寄った、そして・・・

「甘えるなぁ!!」

「グヘへァッ!!」

紳士は思い切りビンタした。

「ダメージボイスまでグヘグヘうるせぇ!?」

ミシェルは思い切りツッコミを入れた。


続く

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