第69話 金は天下の回り物
朝食も食べ終えて、各々次の行動をとる。アバルとトセには極力部屋から出ないように言っておき。昼前までに再び宿屋に戻る事を約束した。
宿屋の外でシュージンは、ミシェルに袋を渡す。
その袋の中には、日用品、食料品の買い出しのための現金が入っていた。
「さて、買い物タイムの前に、はい、これお金。」
「重っ!」
「ギャンブルに使わないでくれよ。」
「使わん!」
そんな自堕落な使い方はしない、とミシェルは否定し、手渡された現金袋を見る。先程口に出したが、かなりの重さだ。
「随分と重いが、いくら入っているんだ?」
「50カネッハくらい?」
「結構な大金じゃないか!?」
「あと蛇の抜け殻が入っている。」
「金運が上がるヤツ!」
「しかし、硬貨と一緒に適当に入れたから、もう原形がなくなって、ただの袋の底の方に溜まっている粉になってしまった。」
「現金だけ入れとけば良いものを・・・もはやゴミだぞ、それは。」
ちなみにカネッハは通貨の単位。ガンバ王国の正式な通貨であり、十二進法が採用されている。
1カネッハ=12テンカノ=144マワリモン。
ミシェルの自警騎士としての月収が7カネッハ6テンカノくらい。シュージンが渡してきた金額はミシェルの約半年分の給料である。そのことにミシェルは疑問を抱く。
「おいシュージン。気になったんだが、この金の出所は?」
そういえば、焼き串も100本も買っていた。どうしてシュージンはそんなにも、羽振りがいいのか。
「蛇の抜け殻のおかげで金運が上がったから自然に溜まったんじゃない?」
「いや、入っているのは粉だろ!?」
「うそうそ、帝国軍から物資を奪い取って、それを売ったりして稼ぎました。」
その話を聞いて、正直ミシェルはあまりいい気はしなかった。
すでにプレジの戦いで帝国の軍馬や、食糧を頂いているので今更だが、それらをさらに売り、金を稼ぐというのはいかがなものか、と改めててミシェルは思った。
「ミシェル先生、色々と思うことがあるのは分かります。ですが、哀しいですけどこれって戦争なんです。」
そんな曇った表情のミシェルを見て、何かを察したバッツは控えめな声で言った。
ミシェルも戦争という言葉ゆえに納得せざるを得なかった。シュージンが帝国から奪った物資を獣人の集落に渡さなかったら、皆、飢死していただろう。
ミシェルはバッツに優しく微笑みながら言う。
「ああ、これ以上、哀しくならないように戦わねばならないな。」
「ええ。」
バッツも笑顔で返す。
買い物タイムの始まりである。金は天下の回り物なのだ。




