第68話 こりゃぁ、やめられませんなぁ
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『哀しみを知り一人で泣きましょう、そし亭・・・』の食堂。
「おはよう。」
「おはようございます。」
朝食を食べるために集まったシュージン達。勿論、アバル、トセ、バッツはローブを纏って席に着く。
「シュージン。昨日は眠れたか?」
「もう、スヤスヤのドムドムのギャンギャンにジェット安眠よ。虫の心配もないし、俺、もう一生室内で寝る。あれは良いものだ。」
「擬音。寝るときの擬音じゃないぞ、それ。」
どうやら、シュージンもアバル、バッツと同じ部屋で普通に寝たようだ。
先程のシングルベッドのことを思い出し、また口角が緩む。
「うわ、ミシェルがほくそ笑んでる。」
「うぇ、ホントだ、ほくそ笑んでやがる。」
「ほくそ笑んではいないぞ。馬鹿コンビ。」
朝の挨拶?もすまし、ネロの用意した朝食を食べる。
今朝の献立は、ハムの乗ったオープンサンドとミモザサラダとオニオンスープだ。
ほんのりと温かいオープンサンドを頬張ると小麦の香りとハムの肉汁が口に広がる。それをオニオンスープで胃に流し込み、ミモザサラダのさっぱりで口の中をリセットしての繰り返し。まさに無限ループ。
「おお、こりゃぁ、やめられませんなぁ。」
「食事がクセになる美味さなのは分かるが、その変な口調はやめろ。」
「先生方の言う通り、確かに美味しくて箸が止まりませんね。」
モグモグと健啖っぷりをこの時代に叩きつけるトセであった。
その見事な食いっぷりに料理を作ったネロも照れる。
「そんなに美味しく食べてくれるなんてぇ、作った甲斐があって、嬉しいわぁ〜。」
おっとりと伸びやかな声で笑う母親に対し、その娘のクーネルはどこか上の空の様子であった。
ミシェルはそんな様子を気にかけて声をかける。
「クーネル。どうかしたのか?具合でも悪いのか?」
「は、ハヒィ!い、いえ!アレです!いささか寝不足気味なだけです!色々とあって!」
「ああ、確かに昨日はチンピラに絡まれて大変だったな。」
「そ、そそそうですね!あんな怖いするとは思いませんでしたよ、アハ、アハハハハ?」
笑って誤魔化すクーネル。とてつもなくぎこちない笑いである。
クーネルは昨日の夜の一件により、ミシェルとトセが、情愛の関係にあると勘違いし、二人の顔をまともに見れなかった。ある意味チンピラより怖い体験である。
「あ、そういえば!」
何かを思い出したトセがアバルに紙袋をはいこれ、と差し出す。
「なんだよ、コレ?」
アバルが袋を開けると中には、昨日の屋台の串焼きが入っていた。一本だけ。
(一人20本だったんだよなぁ。)
(一人20本のはずでは?)
(一人20本なのに、いつの間にそんなに食べたんだ!?)
真実を知っているシュージン、バッツ、ミシェルは黙っている。
トセは兄に対して明るく答える。
「お兄ちゃん、好きでしょ肉。だから一本残しておいたんだよ。」
(じゃあ、20本食べさせてやれよ!)
アバルは妹から渡された一本の串焼きをまじまじと見つめてる。
「いや、確かに肉は好きだけど、もうこれバリバリに冷めてるし、もう脂が固まって白くなってんじゃねぇか、こんなの食べても、旨くもなんとも・・・」
文句を言いながらも串焼きを頬張るアバル。
「おお、こりゃぁ、やめられませんなぁ。」
「お前もその口調になるのかっ!?」
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続く




