第64話 好機
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クーネルがベッドの中で悶々としている頃、当のミシェルとトセの部屋では、見られたことには全く気づかずにまだベッドの上で騒いでいた。
ミシェルは何度も起き上がろうとするがトセの力で押さえつけられ、なかなか脱出できない。幼く女性のトセはアバルと比べては腕力はそれ程ではないが、それでも種族としての筋力と自らの体重を乗せることにより、騎士として鍛えてきたミシェルを押さえつける。
そのトセとミシェルの力の差はほぼ互角。体重を乗せられる上にいるトセが僅かに有利であった。
「ぬぅぅ!!」
「うぅん!!」
グググ、と何度も力の押し合いが続き獣人と騎士の力の均衡が続く。
「好機!」
長時間膠着状態だったため疲れ、腕力から体重をかけて押さえつけるように姿勢を変えようとしたトセ。その脇腹のガードが甘くなった一瞬の隙をミシェルは見逃さなかった。手首をスナップさせ指を素早く動かしローブの上から脇腹を撫でる。
「わひゃひゃっっ!」
トセは脇腹に走るくすぐったさと快感に笑い、声を上げ、身体を捩らせる。
「更なる好機!」
ミシェルにのしかかっていたトセの拘束が緩くなった。一転攻勢!ここぞとばかりにミシェルは両手をトセの脇腹に伸ばしてこちょこちょと激しくくすぐり、撫でくりまわし、触りまくる。
「あひゃひゃひゃひゃっっ!くぅいーーん!へっへっへっ!」
トセはミシェルのハンドテクニックにより完全にアホな犬と化した。
「よしよしよ〜し。」
「くぅーん・・・」
(可愛い。)
しばらくトセの腹を撫でているとアホ犬トセは抵抗しなくなり、最後に力無い声を出しグッタリと横になり眠ってしまった。
その様子に自らの完全勝利をミシェルは確信し、シュージンの部屋へと向かう。
「待っていろシュージン!」
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深夜だというのに廊下を走り、男性部屋の扉の前に辿り着く。
一方男性陣の部屋は静かで、もうすでに室内ではシュージン、アバル、バッツは疲れからか深い眠りについていた。
しかし、怒れるミシェルはそんなことはお構い無しにノックもせずにドアを開けようとする。しかし、扉は開かない。
「えぇいっ!ドアに鍵がかかっているとでもいうのかっ!!」
ガチャガチャとノブを回すが一向に扉が開かない。実際に鍵がかかっているのでそりゃそうである。
「おのれ防犯意識の高い奴めっ!」
安眠妨害女騎士と化したミシェルは男性陣の用心深さにイラつきを覚えた。実際の所、夜になったら鍵をかける程度は当たり前レベルの事なのだがミシェルは怒りと焦りで冷静さを失っていた。
しかし、痺れを切らしたミシェルが今にもドアノブを破壊するのではないかというその時、カチャリ、と部屋の内側からドアの鍵を回す音がした。
(ドアノブを回す音で誰かが目を覚ましたか?)
ミシェルはそう思ったが、直ぐに気を取り直しシュージンに文句を言うという目的を遂行しようとする。
「まあ誰が開けたにせよ中に入れるならどうだっていい!」
今こそドアを開けましょう。
ミシェルが扉をバーンと開けるとそこには、金髪青目の少女がいた。
「ナイトメア・・・松野・・・」
その深い青い目と目が合うと、またもや意識が遠くなってしまい、怒れるミシェルは静かに廊下に倒れてしまった。
ナイトメア松野はミシェルが開けた扉を、ゆっくりと閉めて部屋の中へと姿を消した。
ミシェルが倒れて静かになった廊下には召喚獣の少女の扉の鍵を閉める音だけが響いた。
続く




