第58話 病気以外なんでも貰え
「助けていただき、ありがとうございました。私、クーネルと申します。」
深々と頭を下げて礼を言うクーネルという名前の少女。
「町を歩いていたら、いきなりこの2人に因縁をつけられて・・・死を覚悟しましたぁ。うぅっ・・・。」
伸びてる悪漢コンビを指し示し訴えるクーネル。
気弱な性格なのか、涙ながらに必死に恐怖を伝えてきた。
「まあまあ、これをあげるから、涙をお拭き・・・」
シュージンが差し出したのはあの鼻毛柄のハンカチであった。
「ありがとうございます。チーン!ズビビッー!」
「貰ったぁ!そして礼まで言った!さらに鼻を擤んだ!」
あの壊滅的デザインセンスのハンカチを受け取ったクーネルに驚いた。
「はい、我が家の家訓は『貰えるものは病気以外なんでも貰え』なんです。」
「大人しそうな見た目の割に家レベルで厚かましさの英才教育受けてる!?」
要らないものを要らないと言えることも大事なことであるとミシェルは思った。
「・・・それで、お二人はハンカチの行商人でしょうか?」
「違う!断じて違う!あんなハンカチ売ってたまるか!!」
騎士のプライドがゴミみたいなハンカチ売りのレッテルを全力で阻止する。
そのミシェルの言葉を聞いたクーネルは驚きながら貰ったハンカチを見た。
「えっ!?これ、非売品!?もしくはプレミアアイテム!?」
「どっちも違うっ!そこら辺の雑草レベルの価値しかないぞ!!売るのが申し訳ないレベル!」
ミシェルはそういうが、クイズの景品なので実質非売品である。
だが、ミシェルの必死さが伝わったのかクーネルは質問する。
「そ、そうなんですか。では何者なんですか?」
「私は騎士だ!そして、こっちの黒髪のが・・・」
「ハロー、召喚士でーす。」
「騎士に召喚士!す、すごいです!一体何のためにこの町へいらしたんですか!」
2人の身分に目を輝かせるクーネル。通りでさっきの悪漢撃退パンチの強い理由に納得がいく。
「まあ、それについては鎖骨上窩より深く、トラガスより高い理由があるので聞かないでくれると助かる。」
「分かりました!あなた方は命の恩人です。そんな詮索するようなことは致しません!」
「この少女、物分かり良すぎる!?」
「我が家の家訓に『恩があるなら礼を以って報いよ』とあります。それに何やら事情がお有りとのこと・・・。」
「さっきの例えで!?そんなに深くもないし、高くもないぞ、海と山じゃなくて人体のちょっとしたやつだぞ!?」
ちなみに鎖骨上窩とは鎖骨の上の方にある窪みのこと。トラガスとは耳の穴の前にある軟骨のでっぱりである、耳珠。
ミシェルの言う通りそんなに深くもないし高くもない。
「どんな事情であれ、恩人の事情には違いないです!」
「良い子!」
ミシェルは口を押さえて感動した。
クーネルは命の恩人に感謝しつつ言う。
「何か困っていることがあれば言って下さい!私が力になれることがあればなんでもします!」
その言葉を聞き、シュージンとミシェルは町に来たらまず初めにすることを口を揃えて言った。
「「宿探し。」」
続く




