第52話 腑に落ちない
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一方その頃、プレジ跡周辺。
帝国軍の簡易テントの中で、帝国軍特務参謀リチャードとその副官である女性帝国兵ジュノがいた。
部下達が集めた戦場資料を目を通すリチャードとジュノ。
眼鏡の奥の目を鋭くしながら資料を睨むリチャードをジュノはチラチラと手に持った書類の陰から盗み見していた。
そんな副官の熱視線には気づかず資料にだけ集中するリチャード。
リチャードは静かに考える。
(ラチャオ隊255人に対し被害は、死者254・行方不明1、徹底した戦い方だな、背後から斬られたり、不意打ちに近いやられ方の遺体がそれなりにある・・・明確に帝国に敵意を持っている。町の自警騎士とは違う戦い方だ、犯人は帝国に恨みを持つ者。)
短時間で遺体の状況、戦場の痕跡を事細かに記されたその資料を用意してくれた部下の優秀さに感謝しつつ考えをまとめる。
(まず、ラチャオ隊の一番の作戦目的は、今後のガンバ王国攻略の為の圧力をかけることだった・・・そのために王国の幹部と内通し、プレジに駐留している王国騎士を体良く引き上げさせ、戦力を削いだ。帝国の西に位置するガンバを労せずして得るための作戦。)
リチャードは事の始まりから筋道を立てる。
(町の自警騎士団だけでここまで戦える筈はない。第一、町の被害が大きい。自警騎士団が機能するならもっと町の被害が少なく済む。)
戦場の痕跡がリチャードにたった一つの真実を教える。
(だとすると、ラチャオが町を全て焼き払い、その後何者かに部隊を殲滅された。)
リチャードは戦場資料を置き、素早く帝国戦死者の遺体検分資料を見る。
(死んだ兵達の遺体の傷跡、剣によるもの。だが太刀筋からみるに戦った敵は2人だけだ。)
あのラチャオが率いる隊がたった二人に負ける、信じ難い事実を資料は教える。
(同じ流派、同じ体格で同じ剣を持つ人間が複数いる可能性もあるが、そんなことは滅多にないし、帝国兵の遺体の配置で否定される。相手が複数ならもっと遺体が別々の場所にあるはずだ。この遺体の倒れ方は相手が少人数であることに違いない。)
だが、リチャードは知っている。人数の差など物ともしない化け物じみた強さを持つ者がいるという事を。
(一人はともかく、もう一人の方、此奴はまずい。剣の達人、帝国幹部クラスの実力者か?)
しばらく考える、そして、命令を出す。
「ジュノ中尉、悪いがウイキ少尉を呼んできてくれ。」
「は、はい!」
いきなり声をかけられ、上ずった返事をするジュノ、恥ずかしさで顔を赤くしながらウイキ少尉を呼ぶため急いでテントから出て行った。
テントの中、リチャードは一人考える。
(しかし、腑に落ちない事が一つだけある。)
リチャードは戦場に残された足跡に関する資料を見ていた。
(なんだこの足跡?犬?大きめの猫?しかし二足歩行の足跡だ。人間の子供にしては違うし、戦場のあちらこちらにあるとは思えん。召喚獣か?見たことない。なんだこれは?なんなんだ?)
ポタージュ君の足跡である。
続く




