第51話 母親みたい
先月更新するの忘れたのでいつもの2倍くらい更新します。
毎月中頃に5話くらい更新したいものですね。
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「で、アバルとトセが打倒帝国に同行してくれるのは大体理解出来たが。バッツもなのか?」
ミシェルはシュージンに聞く。せかMATSUの紙芝居にはそこまでの出来事はなかったからである。
「ああ、バッツ君は集落に物資を運ぶための調達に、次の町まで同行してるんだ。」
言わなかったっけ?ととぼけるシュージン。
実際に言っていなかった。
ミシェルはローキックをかましてやろうか、と思ったが狭い馬車の中では出来ないと、グッと堪えた。
ミシェルの忍耐力と血圧が少し上がった。
「そうなのかー、次の町までかー。」
イライラを隠し、平静を装いミシェルは説明する。
「次の町の名前は、マイド町、大きくて商業と流通が盛んだ。プレジの自警騎士団の時に何度か来たことがある。」
「へぇー。マイド町についたら食料品とかの買い出しはミシェルが中心でやってくれ。」
「私が?」
「だってそうだろ。俺は町のこと分からないし、トセ達は獣人だから、おいそれと他人と関わる行動は出来ないし・・・やることも沢山あるし。」
あ、そうだ。と、シュージンが思い出したかのようにトセに布のようなものを渡す。
「これ、一応姿を隠すためのローブ。トセはこれを着てくれ。」
「こ、これは!」
トセはシュージンの渡したローブを受け取り驚く。
全体が黒っぽい色合いをした地味な印象。フードも付いて全身をすっぽり覆い隠すことが出来るゆったりとした作り。
どう見てもただのローブだが、トセが驚いたのは別の理由があった。
(こ、これは!?聞いたことがあるっ!男性が服を渡すのは、昼間はその服を着せたい、そして、夜は脱がしたい!ということであると・・・)
恋愛脳をフル回転させるトセ。
実際、シュージンはトセにその服を着せたいと思っているが、それは目立たないようにするという配慮であり、それ以外の理由はない。つまり、別に夜は脱がさない。
さらに言えば、トセがミシェルを起こしに行っている間にスタンバっていたアバルとバッツにはすでに同じローブを渡してある。
そんなことを知らずに一人悶々とするトセ。
そして、そんなトセの変化には気づかない二人、ミシェルはシュージンに聞く。
「予想はつくが、あのローブ・・・」
「召喚獣・夜なべの松子が作りました!」
「やっぱり召喚獣!」
「夜なべの松子は女子力の達人、俺が朝の寝癖を治している間にパパっとやってくれました。」
「名前が体を表してないやつもいるんだ・・・」
夜なべという割に朝方でも手芸ができる召喚獣。その存在に呆れるミシェルであった。
「しかし、まるで母親みたいな召喚獣だな・・・実際に夜なべをしたわけではないが、服を縫ってくれて、本当に・・・」
ミシェルが見せた、どことなく陰りのある、何か懐かしむかのような顔。
「母親みたい、か・・・まあ、そうかもしれないな。」
シュージンも、ミシェルと同じような顔で呟く。
「私は一人親家庭でな、母と私の二人で暮らしていたんだ。私の母親も、手芸が上手かったんだ、まるで絵本の中の魔法使いのように何でも作ってくれた。そんな母を見て、お母さんが魔法使いなら私は騎士になる、とよく言ったものだ。」
シュージンは黙って聞く。
「まあ。そんな母と本のおかげで今こうして田舎騎士になったわけだ!」
そう、あっけらかんに言うミシェルにシュージンは短く応える。
「ああ、親は大事だ。」
一瞬の間。一方トセは渡されたローブを強く握りしめてまだ妄想の世界にいる。
「母は数年前に病死してな、あまり孝行は出来なかったよ。不甲斐ない娘だ。」
「そうか、残念だな。」
また一瞬の間が訪れる。しかし今度はシュージンが話し出す。
「だが、何故、話してくれたんだ、ミシェル?」
「さあな、どうしても思い出してしまってな、話したい気分だったのかもしれない。」
故郷を失い、孤独になったミシェル。
今、母親の話をしたのは、何も出来なかった自分を奮い立たせるため、せめて天の親に誇れる真の騎士としての覚悟の現れでもあった。
続く




