第50話 友よ
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シュージン達が馬車で揺られている頃、焼き払われた町プレジ。そこの小高い丘に立っている男がいた。
「報告が遅いと思いきや、よもや部隊が壊滅しているとは思わなんだ。」
「リチャード・メガラネカ特務参謀、キーヤン隊長の遺体が確認されました。こちらが遺体周辺の戦場資料になります。」
リチャードと呼ばれたモスグリーン色の長めの髪にハーフリムの眼鏡をかけた男は報告してきた部下に指示を出す。
「全ての帝国兵の遺体を速やかに回収せよ、ただでさえ軍の心象が悪くなっているのだ、兵の遺族にまで怒鳴られてはかなわん。私はしばらく戦場を見て回る。」
「はっ!」
リチャードは部下が行ったのを確認すると、辺りに散らばる色とりどりの花弁を踏み歩き、先程渡された戦場資料を見る。その瞳は鋭い目つきで口は固く真一文字に結ばれまるで爬虫類のような印象を与える。
(ラチャオが死んだか、だとすると相手もなかなかの強者と見える。それに遺体周辺にオーガワイバーンを召喚した形跡がある。)
オーガワイバーンとはラチャオの召喚獣の火竜。ラチャオ自身はオガバーンと愛称で呼んでいた強力な召喚獣のことである。戦場報告の所持品リストにはその召喚石が無いことから、リチャードは召喚石は奪取されたのではないかと考えた。
(召喚獣の使い手か?しかし、直接その現場を見ないことには詳しいことは分からんな。)
リチャードはその足で本陣のあった河原まで行くのであった。
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河原に行くと帝国兵の遺体の回収はもう済んでいた。リチャードは部下達の仕事の速さを評価しつつ、戦場の後処理をする部下に声をかける。
「ご苦労、どうだ様子は。」
突然上司に声をかけられた部下は姿勢を正し勢いよく返事をする。
「はっ!生憎犯人の身元が分かりそうなものはまだ見つかりません。また、召喚獣オーガワイバーンの石も行方不明であります!」
「そうか、やはり石は犯人が持ち逃げしたとみていいだろう。日が暮れる前に仕事は終わらせて報告書をまとめてくれ、周りへの連絡も頼む。」
「はっ!」
リチャードは戦場であった河原を見渡す。
オーガワイバーンの火球の跡、兵士達の血痕がある。
(今回の戦闘は事前にガンバ王国内部に渡りをつけておいた、簡単な戦のはずであったのに・・・ラチャオよ、私より先に逝ってしまうとは・・・)
そう考えるリチャードの顔は無表情であった、しかし心の中では確かにラチャオへの友情があった。
(友よ・・・必ずや仇は取る。)
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続く




