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第49話 クゥぃ〜ん

〜〜〜

「紙芝居完ッ!まぁ、ってな事があったわけで。」

「うおおおお!恥ずかしーーーッ!!!」

アバルが恥ずかしさのあまりに叫ぶ。ミシェルはそんなアバルをスルーして自分が寝ている間に起きたことを知る。例のごとくミシェルは感動して少し涙ぐんでいた。

「そんな事があったのか。」

「恥ずかしいーーーッ!!」

羞恥の叫びとともに走行中の馬車を飛び出し道路を転がるアバル。

「ってアバルーーッ!?」

ゴロゴロと転がり続け馬車との距離が広がっていく。

「まあ、大丈夫でしょう。身体だけは頑丈なので、後で追いつくでしょう。鼻も効くし。」

(さっきの大好き発言を言ったやつとは同一人物と思えぬ冷たさよ!)

トセの発言に恐怖を覚えたミシェルであった。ミシェルがそのようなことを考えていると御者席からバッツが声をかけてきた。

「さっき馬車からアバルが転げ落ちましたけど、馬車のスピード上げときますかー?」

(バッツもひでぇ!速度を落とす選択肢はないのか!?)

バッツの発言にも恐怖するミシェルであった。

なんかアバルに対して扱いが雑である、それともこれはアバルに対しての信頼なのか、と一人考えるミシェルであった。

そして、先ほどの紙芝居のことを思い出し、トセとバッツに関してあることを疑問に思う。

「そう言えば、トセとバッツの同行については紙芝居には描かれてなかったな。」

そのミシェルの質問に渋い声が答えを出した。

「そちらの作品は時間的、クオリティ的に難しいと判断した。やはり閑静で安定した場所でないとアイデアの具体化は厳しい。」

「セカMATSUが喋った!?すごい天才クリエイターらしい発言!?」

「やはり天才監督はいうことが違いますね。ところで気になっていたんですけどなんの監督なんですか?紙芝居?」

「紙芝居に監督とかあるわけないだろう、普通に演劇だろう、絵コンテ作家とか演出家あがりの・・・」

トセの今更な質問にミシェルが答える、しかしMATSUZAWA監督は渋い声で否定した。

「野球です。」

「「ベースボールプレイヤーだったの〜〜!!?」」

そんなやりとりがあり賑やかな馬車であった。ちなみにこの賑やかになっている間にもアバルは馬車から放り出されたままである。

揺れる笑い声の中トセは思い返していた。


〜〜〜

獣人達に別れの言葉を言ったアバル、その様子を泣きながら見ていたトセ。ボボはトセに声をかける。

「トセちゃん、ついていきなよ。大好きなんだろう。」

「ええっ!?」

いきなりボボに言われ赤面するトセ。その視線の先にはアバルとシュージンがいた。その兄は先生に肩を叩かれ笑っている。

トセは大好きな兄、そしてシュージンに熱い視線を送る。

「うん、大好き。」

「アバルもあれで寂しがり屋だしな、やっぱり家族は離れちゃいけない。それに、トセがいた方が安心だ。」

ボボはトセのその言葉を兄妹の親愛の大好きと思っていた。しかし、そこにはシュージンに対する乙女の秘めたる恋心があったことにまでは気づいていなかった。

ボボの言葉を聞き、トセは力強い瞳で訴える。

「シュージン先生!お願いがあります!あたしも先生の旅に同行させてください!」

「トセ君もか?」

「兄が迷惑をかけると思うので保護者として同行させてください!もちろん戦闘でも遅れはとりません!」

「オイ、トセ!保護者ってなんだよ!?それに戦闘って!帝国が相手なんだぞ!?」

「危険は承知で言っているの!」

(強くなりたい、兄に任せてばかりじゃいられない、そしてなにより、先生のお側にいたい。)

アバルは妹の瞳の奥に強い光を感じた。そして、その光を信頼したくなった。兄として妹の決意を大事にしたいと思えた。

「センセ、オレからも頼みます。妹も連れてって、ください。お願いしますっ!」

深い一礼。普段粗暴なアバルが丁寧な言葉でシュージンに懇願する。シュージンはしばらく考えてから口を開く。

「分かった。人手は多い方が越したことはない。それにトセも身体能力も申し分ない。」

「それじゃあ!?」

「ああ、トセ君も来るといい。」

「やったやったやりましたー!」

「良かったな!トセ!」

両手を挙げて喜ぶトセにアバルも喜ぶ。

「あの、それでですね。先生にもう一つお願いがあるんですけど。」

「何だ?」

「あの君付けで呼ぶのをやめていただいてもよろしいですか?嫌というわけじゃないんですけどなんかこそばゆいというか。呼び捨てで結構ですから・・・トセと呼んでください。」

モジモジと赤面しながらシュージンに言うトセ。その表情は恋する乙女というより・・・

「ああ、トセ。」

「はいっ!もう一度言って下さい!」

「トセ。」

「クゥぃ〜ん。ヘッヘッヘ。」

完全に忠犬であった。

〜〜〜


続く

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