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第48話 とってつけたかのような年相応

「これから先は道が落ち着きますよー。」

しばらくしてから御者席からバッツの声が聞こえてきた。

そして馬車も走行中の揺れが静まり、舌の痛みが治まったシュージンが話を始める。

「さて、監督の作品も出来上がったみたいだし、ミシェルに説明するか、何故アバルとトセが同行することになったのか、何故御者にバッツもいるのか、何故蟹は横に歩くのか。」

「最後のいらん。」

「その答えがこの紙芝居にある!」

「いや、蟹は関係ないだろう。」

「始まり始まりー。」

「話を聞け!」

ミシェルの話をスルーしてシュージンがバンッと大きな音を立てて紙芝居の1ページ目を見せる。

「俺が朝、松島弟とマツゴロウさんを召喚していた時にアバル君が一人やって来たんだ。」


〜〜〜

「センセ。今大丈夫か?」

「ああ、アバル君。今馬車を作りつつ、馬を調教しつつ、朝ご飯を食べつつ、何故蟹が横歩きなのか調べているところなんだ。大丈夫だ。」

「それ一般的に忙しいやつでは?」

アバルは困惑した。

〜〜〜


「ちょい待て!蟹の横歩きここで回収するのか!?」

ミシェルも困惑した。

「続き続きー。」

トセが目を輝かせてシュージンを急かす。

「とってつけたかのような年相応!?」

ミシェルは、トセってこんなやつだったのか?という表情で獣人の少女を見る。

「そして、俺とアバル君が旅の同行について話したんだ。」

「やっぱり私の話を無視するんかい!?」


〜〜〜

「センセが昨日、オレに話してくれたことだが。」

「ああ、考えてくれたか。」

アバルは大きく息を吐きシュージンに答えをいう。

「オレ、無理だ。センセと一緒に行くわけにいかねぇ。」

拒否。それがアバルが出した答え。シュージンはそんなアバルを責めることなく、問いかける。

「行くわけにいかない、か。やはり、レイのことを思ってか?」

レイ。かつてアバルの村が帝国に襲撃された時アバルが見殺しにしたというかつての狩人仲間。

それ以来、アバルは周りの者に襲いかかる危害に対し恐れを抱いている。

「ああ。もしオレがいない間に帝国が攻めて来たら、いや、帝国だけじゃない。またはぐれ召喚獣とか、あらゆる危険からアイツらを守らないとならねぇ。」

アバルの心情、それを汲んでシュージンは答える。

「そうか、生きている奴は大事にしろよ。俺やミシェルみたいに失ってからでは遅過ぎるからな。」

〜〜〜


監督が描いたシュージンのどこか悲しそうな顔の絵。それを見てミシェルは気づいた。

(セカMATSUは記憶を読み取り絵を描く召喚獣・・・だとすると、この悲しみの表情は本当の出来事。そして、あのシュージンの発言。“俺やミシェルみたいに失って”・・・。これも本当の発言。シュージン、やはりお前も帝国に・・・?)

そんなことを考えていると。横からトセの小さな声が聞こえてきた。

「やはり、紙芝居はイイ・・・人が生み出した最高の文化・・・最高の悦楽。」

(年相応どこ行った!?)

急にナルシスト系文化人気取りになるトセに、先程のミシェルの思考は飛んでいってしまった。


〜〜〜

シュージンの言葉を聞き、申し訳なさそうな表情をするアバル。その時。

「ちぇりゃさあぁぁぁぁああ!!」

「グボンヌッ!!」

横から猛スピードのドロップキックをくらい、アバルが吹き飛ぶ。

「さっきから聞いていればウダウダウダウダ、らしくないのよバカ兄貴!」

トセである。実はトセは朝から様子のおかしいアバルが気になり、陰に隠れてシュージンとの話を聞いていたのであった。

「ああ、トセちゃんの言う通りだ。らしくないぞ、アバル。」

ボボボボンボー・ヤージュである。彼もまた陰ながら話を聞いていたのであった。

〜〜〜


「はぁーん!あたし!描かれてる!MATSUZAWA監督のMATSUZAWA作画でMATSUZAWAサーカスしてるぅー。はぁーん!好きぃー!」

自らの登場に興奮しまくるトセ。

ちなみに兄アバルは恥ずかしいのでさっきから手で顔を覆って一言も喋らない。アバルもそれなりに羞恥心はあったのである。

「って!それよりボボボボンボー!コイツまだ出るのか!?よっぽど重要な奴なのか!?」

ミシェルはボボの再登場に驚いている。

実際重要な奴。


〜〜〜

「ボボ・・・。」

「アバル・・・お前がレイのことを気に病むことはない、と言っても無駄だろう。」

ボボは穏やかな声で話す。

「だから・・・お前を殴る。」

「殴るの!?」

トセ驚愕、そして、間髪入れずにボボは掛け声とともにアバルの顔面に右ストレートを繰り出す。

「ドッセーイ!」

「グベーリャンッ!」

穏やかな声の持ち主とは思えない鋭いパンチ。アバルは苦悶の声を出す。

「更にもう一発!」

「グリャードニヒッ!」

まさかの二発目。

「本当は鉄の棒かなんかで殴ろうかと思っていたがな・・・流石にそれは辞めといた。」

「ボボ・・・てめぇ。」

アバルはボボを睨む。

「言葉で言っても無駄・・・なら殴るしかないだろう。お前が見殺しにしたレイの分の一発は私が殴っておいた。これでチャラだ。」

「更にもう一発はなんなんですか!?」

「私を殴り返せるように。」

「ハッ!上等ぅ!」

殴られた上にここまで挑発されてはアバルが黙ってない。アバルは起き上がりボボに顔面パンチの仕返ししようとする。が。

「どうした殴らないのか?」

ピタリと、ボボの顔の前で拳を寸止めする。

その様子を見てボボは更に問いかける。

「殴れないのか?それとも殴る意味がないとでも思ったか?」

「どっちもだよ!畜生ッ!!」

アバルは崩れて握った拳を地面に叩きつけた。アバルのその目には涙が浮かぶ。

シュージンがアバルへ声をかける。

「そうだな、意味なんてない、虚しさだけだ。」

「ああ、センセ。教えてくれよ。この虚しさと怒りをどうすればいいのか・・・先生なら。」

「これは前にミシェルにも言ったことだが、死んだ奴は何も思わない。俺が言えることはそれくらいだ。ただ強いて言うなら、俺とミシェルは帝国を潰してこの悲しみを終わらせようとしている、そして、その仲間にアバル君がいた方が心強い。」

「なんだよ、それ。」

「言いたいことを俺は言っただけだ。それに、トセ君とボボボボンボー君も言いたいことがあるみたいだぞ。」

シュージンはトセとボボを見る。それを追うようにアバルも二人の方を見ると、トセは今にも泣き出しそうな顔で、ボボは思い詰めた表情で自分の方を見ていることに気づく。

「あたしは、お兄ちゃんの悩む姿を見たくない、昔みたいに馬鹿なことやっている方が好き・・・大好き。」

「アバル。お前の気持ちは痛い程分かる。だが、お願いだ、お前は家族を、自分の妹を、悲しませないでくれ。そして、家族だけじゃなく帝国のせいで悲しんでいる奴のためにお前は戦ってほしい。」

「トセ・・・ボボ・・・」

トセとボボがそれぞれ答える。すると陰から人影が出て来てまだ声が上がる。

「お前のへこんだ姿なんか見たくないぜー!」

「おい!アバル!さっさと帝国を潰して来てやれ!」

「オレ達の仇をとってくれよーーっ!」

「この集落からムカつく野郎がいなくなると思うと寂しくなるぜー!身体に気をつけて健康的な生活を心掛けろよーっ!」

次々と獣人達がアバルに声をかける。

「フジツボ共・・・一体いつから聞いていたんだよ・・・」

「みんなアバルが心配でついて来ちゃいました、アバルの様子がおかしかったから。みんなアバルに託したんですよ、今までありがとう。オレ達のために戦ってくれて、きっとアバルならもっと大きな事を成し遂げる・・・そんな気がするんだ。」

「バッツ・・・」

「安心してください、しばらくはシュージン先生がくださった食糧もありますし、目下の危険はないから、アバルは好きなだけ暴れて大丈夫ですよ。」

「フフッ、ああ、そうだな。なにもかもセンセのお陰だ。」

アバルは崩れて地面に膝をついた状態を正し、両手を地につけ頭を下げた。

「みんなすまねぇ!オレは・・・行くよ!!みんなの為に帝国をブッ潰してやる!!」

獣人達から大きな歓声が沸き起こって、旅出を祝福する。

「う”ぅう”良がっだお”兄ぢゃんんん!」

「さっきのパンチ一発分、帝国を潰したらでいいから殴り返しに来い。気張れよ、アバル。」

トセは大きく泣き出し、ボボはアバルに約束をする。

こんなにも自分が周りから思われていたとは思わなかったアバルは力強く笑顔で答える。

「ああ!」


続く











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