第43話 一つだな
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バッツに頼んでテントを用意してもらおうとする二人。そんな二人の頼みにバッツは快く受け入れてくれた。
「他ならぬ先生方のためです!お任せ下さい!」
と、言ってくれたのだが。
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「テントが一つだな。」
「ああ、テントが一つだ。」
用意されたテントが一つしかなかった。
「すいません、用意できたのがこれだけしか・・・」
謝るバッツに、シュージン達は気にすることはないと言った。その言葉を聞くとそれでは、とバッツは申し訳そうに帰ってしまった。
気にすることはない言ったが、いざ寝るぞ、となるとやはり気にする。
「さてと、寝るか!」
「寝るのか!?」
気にしていたのはミシェルだけであった。
シュージンはミシェルの戸惑いを他所に素早く昨夜のように毛布の塊と化してしまう。
「寝るさぁ、そりゃ寝るさ。昨夜も一緒に寝たんだ、気にすることはないだろ。」
「一緒に寝たとか、誤解を招く表現をするな!」
「表現のペガサス、間違いのビーナス。」
「意味不明!それに、あれは野宿!屋根があるのとないのとでは心情的になんか・・・こう、違う!それに、昨日の夜も結構気にしていたんだぞ!」
昨日も気にしていたと言うミシェルであったが、実際は殆ど寝る間近まで忘れていたことは伝えない。
どうするどうすると、狼狽えるミシェル。
「ああもうっ。トセの所で寝かせてもらうか!?」
「やめとけやめとけ。」
シュージンと一緒のテントで寝たくないミシェルはテントを出ようとするが、シュージンに止められる。
「いくらトセ達が俺らを受け入れていると言ったって、アイツらは人間に迫害された獣人の難民なんだ。自分のすぐ横で迫害してきた種族が寝る。そんなナイーブな問題に踏み入ることは許されない。」
「・・・」
「種族が違うって、そう言う事だ。種族だけじゃない。民族、思想、貧富、そういった違いに折り合いをつけて俺達は、起きて寝てを繰り返している。」
「そうだな・・・」
「多分それが分かり合うってことなんだと思う。」
シュージンの言葉を聞き、ミシェルはバチンと両手で自らの頬を叩いた。
「そうだな、シュージンの言う通りだ。私の考えが浅はかだった。ここで寝る。」
獣人達は折り合いをつけて、シュージン達の言葉を信じた。
それならばと、ミシェルも自らの気持ちに折り合いをつけ、毛布にくるまるミシェル。伊達に生半可な覚悟で打倒帝国を誓ってない。
寝床の一つが何だ、ミシェルは毛布の中で先程のシュージンの言葉を思い返し呟く。
「分かり合う、か。シュージン、お前は帝国とは分かり合えないと思ったから剣を取ったのか?」
折り合いをつけるという言葉、しかしながらシュージンは獣人達のために援助をした。
他人の問題には踏み込み過ぎない、だが困っている者には手を差し伸べる。そして、助けた相手に自分が欲しいもの交渉する。それが折り合い。その行動は善意か、はたまた打算からくるものなのかミシェルは気になった。
もし、シュージンが善意の行動をとる心優しい人間ならば、帝国との戦いは何を思って行なっているのか。それをシュージンから聞きたかった。
「シュージン、お前はどういう人間なんだ?」
「・・・。」
「寝たのか?」
シュージンに問うが答えは返ってこない。
「寝付きのいいやつだ、私も寝るか・・・。」
目を閉じミシェルは寝ようとする。
(分かり合う、もしかしたら、いつしか私がお前のことを全て知れる日が来るのだろうか?)
恐ろしくもあり優しくもある。強くて女々しく矛盾の塊、まるで名状しがたい不思議な男のことを瞼の裏に思い浮かべる。
しかし、矛盾男に気を取られ、ミシェルはあることを忘れている。
(ん?)
ミシェルは人の気配を感じ、うっすら目を開けると・・・。
光る青い瞳が覗いていた。
「ナイトメア・・・松野・・・」
その瞳の青の光に吸い込まれるようにミシェルはがっくりと意識を失った。
続く




