第40話 ダブル禁断
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「ああー、まだ少し気分が悪ぃ。」
「おいおい大丈夫か?アバル君。」
まだ、顔色が優れないアバルを気遣うシュージン。タンクトップと樹液の香りのせいである、思えば色々なことがあった、そのことを振り返る。
「いやぁ、それにしても色々あったな。」
森の中、シュージンが呟く。
「私はシュージンと出会ってから色々ありすぎるんだが。」
ミシェルはごもっともな事を言う。
「だが、はぐれ召喚獣、喋る蝉は衝撃的だったな。」
「それな。」
そんな二人のやり取りを見てトセは遠慮がちに質問をする。
「あのぅ、先生方は、その、やはりお付き合いが長いんでしょうか?」
少し赤くなりながら質問するトセ。
「「いや、昨日知り合ったばっかりだ。」」
シュージンとミシェルの声が揃った。
「そうなんですか!?随分と仲が良く思えますけど!」
トセはシュージンとミシェルの息ピッタリなやり取りを見ていて、不思議に思う。
「仲良いように見えるか?コレだぞ?」
ミシェルが眉をひそめながらシュージンを指差し言う。
「えぇっ?」
コメントに困るトセはシュージンを見やる。
「まあ、どんな関係?なんて聞かれたら・・・友達以上か?」
「言うほど私たちの間に友情が有ると思うか?」
さりげなく酷いことを言うミシェル、シュージンはあまり気にせずに自らの関係性を表す。
「では、相棒。」
「それは想像が及ばないな、私はお前に振り回されてる。」
好きなようにやり過ぎる。シュージンの悪い癖だ。
「じゃあ、共犯者。」
「フフ、その関係が一番しっくり来る、共犯者という言葉が相応しいかもな。」
シュージンの言葉に少し嬉しさを感じるミシェル。
そして、トセも少し嬉しさのようなものを感じていた。
トセが言った“お付き合い”という言葉、シュージンとミシェルは普通に“行動を共にする”という解釈をしたが、トセは“男女の付き合い”という意味で言ったのだ。
(つまり、先生方は恋人同士じゃない・・・ということは、シュージン先生とわたし、“お付き合い”できるかも!?よっしゃぁ!!)
トセはシュージンに惚れていた。具体的に言えば、シュージンが魚を笑顔で受け取った時に、あ、この人素敵だな。とは思っていた。
そして、村の食料問題を解決してもらった時、トセの目にはシュージンが“頼りになる男性”に見えた。
トセの周りには基本的に馬鹿な奴しかいなかったためである。馬鹿すぎる兄アバルとそれを止められない不甲斐ないフジツボ獣人がその例だ、そんな周りの獣人とは違うシュージンに惹かれていった。
ちなみに、シュージンも充分馬鹿なのだが、トセにとってはもはや、痘痕も靨である。
そんな内に秘めた情熱は空回りをする。
(でも、先生とあたしは教師と教え子!禁断の恋!ああ、どうしたらいいの!?それに獣人と人間!種族を越えた禁断の恋!ダブル禁断!)
ドキンドキンとトセの心臓が早くなる。
色々と間違っていると思うが、恋する乙女にそんなことは関係なかった。
トセが妄想の世界に浸っていると、その禁断の思い人が声をかける。
「なあ、トセ君。」
「ひゃいっ!!」
いきなりのことで声が上ずり変な返事をしてしまう、俯きがちだったトセが赤くなった顔を少し上げるとシュージンがいる。先程の禁断の妄想のせいでまともに顔を見れずにいる。
「すまないが、ミシェルと一緒に先に集落に行ってくれないか?」
「はいっ!」
恥ずかしさのせいで頭が回らず、二つ返事で受け付ける。
シュージンの役に立ちたい一心で張り切るトセ。
「さあさあ、行きましょうミシェル先生!」
「お、おい!手を引っ張るな!」
シュージンの言われるまま、急いでミシェルを連れて帰るトセ。ミシェルとトセが見えなくなると、シュージンはアバルの方を向き合う。
「アバル君。大事な話がある。」
つづく




