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第38話 実際蝉。そして山小屋。

「ウゥ〜。せっかく憧れの海の家を経営したのに、バイトも雇ったのに〜。バイトが召喚獣だったとは〜。泣きたくなりますミン。ミーンミーンミーンミーン。」

セミウルゴスは床に手をついて涙を流し泣いている。

「泣き声が蝉そのものだな。」

「実際蝉。そして山小屋。」

「ボクは蝉の幻獣ミン!」

泣いている蝉に対し辛辣な態度をとるミシェルとシュージン。そんな様子を見かねてトセが凛とした声で二人を制止する

「先生方、流石に可哀想です。」

椅子から立ち上がり二人を見据えるトセ。その美しい薄紅色の唇の周りは樹液でテカテカと光っている。

「セミウルゴスさんに食事を提供していただいたのに関わらず、あんまりです。」

「「いや、食べたのお前だけだよ。」」

テーブルの方を見ると大皿に盛られたはずの樹液焼きそばはトセが食べてしまい、全部無くなっていた。

ちなみにアバルはタンクトップと樹液の匂いのせいで気分が良くないのか少し青い顔をしていた。

「そうです。あたしは食べました。あたしは例え一食の恩でも忘れません。」

力強い眼差しでシュージン達を見据えるトセ。だが、口は樹液でテカテカである。

トセは項垂れるセミウルゴスに寄り添い、微笑みかける。

「セミウルゴスさん、美味しい焼きそば、ご馳走さまでした。」

「お粗末様でしたミン!」

涙を拭い、笑顔で応えるセミウルゴス。その笑顔にトセも満面の笑顔で応える。トセがニコニコする、口の周りはテカテカだ、目の奥が熱い。

そんなやり取りを見て、流石に申し訳なくなったシュージンとミシェルは謝った。蝉に。

「「ごめん。」」


ーーー

「なんか色々ありすぎて、聞きそびれたんだけど、幻獣って何?」

テーブルに座る二人の人間と一人の女獣人、と幻獣と名乗る不思議な蝉。

アバルとは言うと気分が悪くなったので、外に出て休む、と言って樹液の香りが立ち込める山小屋から出て行った。全くお兄ちゃんってば、後で話したことを教えてあげないと。そう言うトセだが、先程アバルが山小屋から出る時に口の周りを拭けと言われて顔を赤くしていた。まだまだ子供っぽさが抜けない妹と、色々と抜けている兄、ミシェルはそんな二人の微笑ましさを嬉しく思えた。

「さて、幻獣について教えるミン。」

セミウルゴスが咳払いをして話をする。

「“幻獣”とは“幻獣王”に使命と知性を与えられた生物が進化した存在ですミン。」

「幻獣王?進化した存在?」

「な、なんか凄そうですね。」

「じゃあ、元はただの蝉だったけど、幻獣王の家来になって喋れるようになった、って事か?」

「概ね合っているけど、家来ではないミン。幻獣は幻獣王の奴隷ミン。奴隷は与えられた使命を果たすために行動しなきゃならない。そして、幻獣王に従わない者には厳しい罰が下されるミン。」

「では、セミウルゴスに与えられた使命とは何だ?」

「それは・・・」

重い空気が流れ、三人がセミウルゴスの言葉に意識を向ける。

「覚えてないんだミーン。」

「厳しい罰待った無し。」

いっけね!と、頭に手を当ておどけたように言うセミウルゴスにミシェルは呆れている。

「ミーン!本当に覚えてないんだミン!ボク記憶喪失なんだミーン!!」

「記憶喪失が海の家経営するのかよ。」

「部分的に記憶喪失なんですミーン!」

「じゃあ、何故海の家を経営した。しかも山小屋の中で。」

「長い昔話になるミン。」

セミウルゴスの昔話をシュージンとミシェルは期待せずに聞こうとする、トセだけは真剣な表情をしてセミウルゴスの方を向いている。律儀な性格である。

「今から1200年前、暗黒神話と呼ばれた時代、蒼き輝きの天使を従えた勇者が五つの種族とともに・・・」

「昔過ぎっ!」

「もうちょっと最近の話をしろよ、クソ蝉。」

「酷すぎるミン!」

セミウルゴスは助けを求めようとトセの方を向くが、肝心のトセも顔を俯きながら、真面目にやりましょう、と呟いたのでどうしようもない。

「はぁ、実はボクは海から来たミン。」

「いや、蝉は山だろ。」

「そう言う事じゃなくて、ボクは海に何かをしに行ったはずだミン。だけど嵐に巻き込まれて、溺れて知らない海岸にいたミン。」

「溺れたショックで記憶喪失になったのか?」

「多分、そうだミン。」

「じゃあ、何故この山小屋にいる。」

「それは、仲間を探すためだミン。ボクには同じ使命を持った仲間がいたはずだミン。だからお金と情報を集めるために、この空き家を拝借して海の家を始めたミン。」

「ちょっと何言っているか分かんない。」

「俺も分からん。」

「だけど、全然お客さんは来ないんだミン。」

ため息をつきながら遠い目をするセミウルゴス。

「立地が悪い。」

「いや、セミウルゴスの頭が悪い。」

「お二人の口が悪いミン!!?」

シュージンとミシェルは、蝉に対して悪口を言いまくる。

それを見かねて、トセが口を開く。

「先生方、いくらセミウルゴスさんが度し難いアホでも言い過ぎです。解決策を考えてあげましょうよ!」

「「お前も言い過ぎ。」」


続く



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