第33話 じゃ、いっか。
はぐれ召喚獣を倒し、笑いながら帰るシュージン達四人。
「いや〜、アバル君の戦いっぷりが凄かったな〜。なんか忘れている気がするけど。」
「そういう、センセもヤバかったぜ。いい意味で。」
「二人とも、あの化け物相手に倒してしまうとは驚きだ。なんか忘れている気がするが。」
「ほんとほんとかっこよかった。それに、なんか忘れている気がするね。」
アバルを除く三人は、何かが心に引っかかってしまう。
「なんかってなんだよ。」
アバルは問う。
「なんだろう。」
「分からん。」
「じゃあ、だいじなことじゃないのかも?」
「じゃ、いっか。」
結局、忘れてしまったことは謎のままで、獣人達の集落に向けて四人は、再び笑いながら歩み出す。
ーーー
森を抜け、集落に着いた四人。
すると、帰りを待っていたのか、トセが駆け寄って来る。
「お兄ちゃーん。」
「おお、トセ、帰ってきたぞー。」
アバルも手を振り、歩み寄ろうとする。が、
「何やってたんじゃぁぁぁ!!」
「どまっ。」
トセはアバルの帰還を痛烈なラリアットで歓迎する。
「変な遠吠えが聞こえるし!先生方も居ないし!ザトアもいないし!バカ兄貴もいないし心配したんだから!!」
涙ながらに声を上げてストンピングキックとともに自らの兄を責めるトセ。
ザトアは情け無用の獣人ファイトを興奮しながら見ている。
「大体!いっつもいっつも・・・!」
流石にこれ以上はまずいと判断したシュージンが兄妹喧嘩(というより、トセによるワンサイドゲーム)の仲裁に入る。
「まあまあ、そこら辺で。」
「きゃあっ!すいません!兄がすいません!何から何まで、一から十まですいません!!」
平謝りするトセ。その様子を見たミシェルは思う。
「あれ?こんなやりとり前も見たぞ。」
あの時はシンパシーを感じていたが、今度はデジャヴを感じたミシェルであった。
「いや、謝る事はない。アバル君と一緒にちょっくら化け物退治をしてきただけだからな。」
「え!?そうだったんですか?あたし、てっきり兄が感情に身を任せて先生方を暗殺したのかと・・・」
「発想が物騒過ぎる!!!」
ミシェルはキョトンとした顔で恐ろしい事を言うトセにホラーを感じた。
「ぐぅぅ、オレって信用なさすぎ・・・」
ダメージから復活したアバルがぼやく。
「人望も知能もないでしょ、お兄ちゃん。」
「妹が容赦ない!!」
肉体だけでなく精神的にもアバルを追い詰めるトセ。遠慮もない。
「確かに、信用はないかもな。」
トセに同調するようにシュージンが言う。
「センセまで!?」
「だが、優しさはある。」
シュージンから出た評価にトセとアバルは驚き、トセは顔の前で腕をブンブンと振りながら言う。
「いやいやいや、流石に先生の仰る事でも、それはないです。」
「いや、アバル君は優しいよ。あの化け物も一人で倒すつもりだったんだろう。」
「えっ!?」
「・・・やっぱり、全部お見通しじゃないか。」
「それに、俺達を遠ざけるかのような言動。これも出来る限り巻き込みたくなかったとしか思えない。」
「どう言う事だ!?説明しろシュージン!」
ミシェルが説明を求める。
「まず、アバル君は一人で狩りに出かけることに拘っていた。これは、あの森の奥にいた化け物との戦いを予知していたからだ。」
「先生!質問です!化け物とか、予知って…バカ鈍感な兄には出来るものなのですか!?」
挙手しながらトセが質問する。
「アバル君は召喚士に必要な感覚、ふんわり感が備わっている。今回、はぐれ召喚獣が出したヤバめのふんわりを感じ取っていたことは確認済みだ。」
「ふ、ふんわり!?」
「あんまり気にしたら負けだぞ。」
ふんわりした説明に困惑するトセをミシェルはフォローする。
「続けるぞ、俺達が援助することに否定的だったが、一方で客人として迎えると言った。これは俺達を狩りに同行させないためだと思った。食料の援助について具体的に案内していなかったからな。」
アバルが集落に訪れたシュージンとミシェルを見た時、分けれる程食料を持っていないことを確認していた。そして、アバルはシュージンとミシェルの身なりと鍛えられた肉体を見て、狩りの手伝いをするのだと判断していたのであった。
「ちょっとだけ違うぜ、センセ。センセ達を狩りに同行させたくなかった事は、巻き込みたくなかっただけじゃない・・・」
アバルが振り絞るかの様に声を出すが、続きが出てこない。
すると、ある獣人が現れ、その答えを言った。
「レイのことだろ・・・アバル。」
続く




