第31話 そしたら何かが見えて来るはずです
アバルは腰につけていた鉈を抜き出し、刃をはぐれ召喚獣に向ける。一方のはぐれ召喚獣はまた土狼をジュクジュクと作り出す。
「アバル君、恐らくあのはぐれ召喚獣はエネルギー節約の為に最小限の力で俺たちを倒すつもりだった。こちらが本気で抵抗すればあっちも本気を出してくるぞ。」
「オレはいつも本気だ!本気バーサス本気!ガチで行くぜ!!」
「分かった。援護しよう。」
シュージンは神経を集中させ、召喚の準備をする・・・が、召喚しない。否、出来ない。
「あれ?なんか召喚獣が出ない。」
「シュージン!どうしたんだ!?」
「召喚獣を呼べない、何故だ?」
「馬鹿な!?ここに来る途中にメディ松はいたはずだぞ!」
ミシェルはセルフメディケーション松下清太郎は問題無く召喚されていた事をシュージンに報告する。そして、何気にメディ松という新たな召喚獣の略称をさり気なく生み出していた。
「ああ!!しまったあぁ!!セルフメディケーション松下清太郎を召喚している間は別の召喚獣を召喚出来ないんだったぁぁ!!」
「えぇぇぇええぇぇえ!!!?」
突如明かされた衝撃の真実、便利すぎる召喚獣のデメリットにミシェルは困惑する。
「サンフラ松やビグファ松みたいに同時に召喚出来ないのか!? 」
「ミシェルおねーさんがわけのわからないこといってる・・・」
ザトアは変な略称を連発するミシェルに困惑する。そんなザトアを余所にミシェルはシュージンを急かす。
「急いでメディ松を引っ込めろ!」
「近くにいないとむぅりぃー。」
「女々し!」
「何だよー、その言い草ー折角来たのに、ここに来る間に二回も蜘蛛の巣に引っかかるし、やだもー。」
「いと女々し!」
シュージンの変なスイッチが入ってしまい、これでもかと言うほどいじけてる、そうさ、100パーセント女々しい、もう頑張るって何ですか?女々しくって女々しくって死にそう。
いじけ!You fawn いやぁ無理っス。状態である。お世辞にも言えないレベルの女々しさである。
そんないじけて膝を抱えて土を弄る隙だらけなシュージンに土狼が三体襲いかかる。
「危ない!シュージン!!」
ミシェルが叫ぶ、が、鋭い剣閃が三つの土塊を作り出す。
「青眼の百流、秘剣・『滅』の相。爆裂疾風剣。」
「カッコいいーー!!」
先程までいじけていたシュージンが繰り出した美しい剣技にザトアは感嘆の声を上げる。
「カッコいいだけではない!あの技は膝を抱えた状態から素早く上体の捻りと踵への重心移動で瞬間的な速さを追究した技だ!まさに爆裂!まさに疾風!一体どれだけの鍛錬を積めばあれ程の剣筋になるんだ!!」
「昨日の夜に思いついた。」
「ふざけるな!解説して損した!!」
幽霊騒動のあった夜に考え出した剣術であった、もはや流派も秘剣も何もない。
ちなみにシュージンの事を責めているが、こんな風に夜な夜な寝る前にミシェルもオリジナル剣技を昔は妄想していたことが多々あった。
一方アバルの方は襲いかかる土狼達を鉈で叩き割り続けている。次から次へと襲いかかる分身に手間取り、本体のはぐれ召喚獣の距離を詰めることが出来ずにいる。
「センセ!援護してくれるんじゃなかったのか!?」
「おっしゃる通りだー!?」
ふざけているシュージンとは違いひたすらに敵の攻撃を防ぎ続けるアバル。
その言葉でシュージンは剣を構え直し、アバルと共に土狼を真面目に切り払う。
迫る土狼達を次々とを剣で潰しながらシュージンはアバルに声をかける。
「アバル君、シュージン先生の召喚獣レッスンだ!過度な期待はせずに聞け!!」
「ああ!」
アバルも土狼を潰しながら答える。
「あのはぐれ召喚獣に神経を集中させながら意識を向けろ!そしたら何かが見えて来るはずです!」
「この状態でか!?」
飛びかかる土狼達を払いのけながら、意識を別の所に向ける。
言葉にすれば簡単だが、次々と来る分身に手間取りそんな余裕は無い。
「男は度胸!ドゥーイット!」
シュージンの言葉を聞き、意識をはぐれ召喚獣に向ける。“男は度胸”その言葉がアバルを奮い立たす。
神経を集中させると、何かが感じる、視覚や聴覚ではない、五感とは別の感覚。あえて形容するなら“ふんわり感”。それが感じる。
「なんかふんわりと来たァ!!」
「お前もふんわりの使い手か!!」
アバルの大声にミシェルがツッコむ。
ふんわりって何だよ。
続く




