第3話 なら、来い!
ファランクス部の活躍により火竜は串刺しにされ、元の赤い石に戻る。
「グッ・・・、グゥ・・・!」
部下も殺され、共に戦場を駆けた戦友でもある召喚獣を倒され、ラチャオは今すぐ叫びたい気持ちになったが、首を力強く握られそれを許さない。
「お前は町を焼いた、人を殺した・・・」
「グ・・・ヌ・・・」
そうだ、これが、戦争だ。キーヤン・ラチャオは兵士、兵としての使命を果たした。
「だがお前を殺そうが、町は戻らないし、人は生き返るわけでもない・・・」
当たり前だ。ラチャオは心の中で返事をする。だが、それはラチャオに向けられた言葉ではなかった。
「どうする?ミシェル。」
ミシェルは火竜に飛ばされたシュージンの剣を持ち、シュージン達の側に来ていた。
その美しい顔は悲しみ、怒り、憎しみ、様々な感情の混ざり合りいびつな表情をしていた。エメラルド色の瞳は零れ落ちそうな涙を湛え、亜麻色の髪は怒りで小刻みに揺れ、桜色の唇の間から覗かせる白い歯は強く食いしばられていた。
(殺されても文句は言えない・・・むしろ美女に刺されるなんて色男に相応しい末路だ・・・)
ラチャオは部下も戦友も失い、諦めと自嘲の境地に達していた。
「このピアス男に大きめの風穴を開けてやれ。」
(ここまでか・・・)
「うわあああああ!!!」
川のせせらぎを打ち消すミシェルの心からの叫びがこだました。
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「ミシェル殿・・・」
ポタージュ君はミシェルに何か声を掛けようとするが、その続きが思いつかず、名前を言うだけで終わる。
「憎しみは止まらない・・・どうせ止まらぬなら、加速し続けるまで・・・」
仇を討っても悲しみも怒りも憎しみもなくならない。むしろ虚しさと苦しみが増えた。背負いきれない業を背負ってしまった、まだ18の娘に、重くて背負いきれないほどの心の痛みを。
「シュージン!!」
ミシェルは決意した。
「私を連れて行け!!帝国を潰す!!!」
声高らかに宣言するミシェル。
「えぇ〜どうしようかな〜。」
シュージンは体をくねらせながら言う。
「えっ!?そこはついてこいっていうところではないのか!?」
「でもそこまでいうなら・・・シュージンルーレット〜〜。パラパッパッパー」
「シュージンルーレット!?」
「ルーレットの面は三つ」
そう言うとシュージンはどこからともなく三色に色が塗られた円盤を取り出し、ダーツをミシェルに渡す、ミシェルがルーレットを確認すると。
赤で塗られた“連れて行く”
青で塗られた“連れて行かない”
黄色で塗られた“ぶん殴る!”
「赤と青はまだしもぶん殴る!ってなんだ!?」
「はい、ルーレット回して〜力一杯投げて〜」
「話を聞け!!」
思えば初対面からシュージンに振り回され続けたミシェルであった。この一投で全てを決めてしまって良いのだろうか。その疑問と今日あった様々な出来事で頭がパンク寸前であった。
(やはり・・・シュージン殿はお優しい。)
ポタージュ君は目を瞑りつつ思い巡らす。
(ミシェル殿にまだ他の道があることを、取るべき未来があることを考えておられる。まだ18の娘に輝ける選択肢を用意してくれている。復讐とは別の・・・)
一方シュージンは、
「はよはよ〜ピッチャービビってるぅ〜外野風邪引いちゃうよ〜〜!」
ミシェルを茶化している。
「クッ!」
「ミシェル選手ぅ投げた〜内角低め〜〜!」
ダーツが刺さった部分は・・・
“ぶん殴る!”
「オラァ!!!」
「グファッ!ですぞ!!!」
「ポタージュを殴るの!?」
フゥ〜っと大きく息を吐き、シュージンが言う。
「ミシェル。ついてこれるか?」
「ああ・・・無論だ!」
「俺じゃない、理不尽な世界のスピードにだ。」
「理不尽・・・」
ミシェルは思う。故郷を失い、友人、家族を失い、世界の理不尽を味わった。だが・・・
「一番理不尽なのは、シュージン・・・お前だろ?」
「なら来い!」
「ああ!」
「我輩もついていきますぞ!」
「いやポタージュ君はいいや。」
「そんな殺生なっ!?」
「ポタージュ君、ラチャオとの戦いで何もしてなかったし。」
「いや!でも、本陣見つけたの我輩のですぞ!ねっ!?ねっ!!?ミシェル殿もなんか言ってくだされ!」
「なんか。」
「ミシェル殿ぉおお!?」
シュージンはポタージュ君の両肩に手を置き(正確には手が生えている部分の粒)。
「ポタージュ君!君は為すべきを為せ!・・・茄子だけに。」
「シュージン殿ぉ!我輩!」
「トウモロコシですぞおおおおおおおお!!」
川のせせらぎを打ち消すポタージュ君の心からの叫びがこだました。
こうしてシュージンの旅にミシェルが同行することとなった。
ポタージュ君は置き去りにされた。
続く




