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第27話 分かるぞ!その苦労!

ミシェルは自らの見聞を広めるため集落の中を歩く。

簡素なテント、獣人達の生活、集落の様子を見て本とは違う生の体験をする。

すると、アバルに引きずられていた5人の獣人、通称フジツボ供とバッツが話し合っているのが見えたので、ミシェルはその集まりに近づき。

「何を話しているんだ?良かったら、私も混ぜてくれないか。」

「ああ!ミシェル先生!」

「どうぞどうぞ。」

獣人達はミシェルに微笑みかける。

もう、ミシェルも先生扱いする獣人達にもすっかり慣れてしまった。

「そうか、そう言えばそちらの5人の名前は聞いてなかったな。」

ミシェルがそう言うと、気を利かせたバッツが紹介してくれる。

「ああ、紹介しますね。彼らはオレと同じく犬の獣人で。」

「フウです。」

「ジジって言います。」

「ツンと申します。」

「ボボボボンボー。」

「ドモン!」

5人はそれぞれ自分の名前を言う。

「ごめん、4人目の名前、なんて言った?」

随分とファンキーな名前の獣人がいたものだ。

これもカルチャーショックというものなのだろうか。


ーーー

「アバルに引きずられて擦り傷だらけですよ、見て下さいよこれ!」

「本当にアバルには困ったものですよ。山に狩に行くのは自分一人で良い、とか言ってきかないし。」

「妹さんも大変ですよ。」

「凄いアホなんですよ、アバルは。」

「そ、そうなのか。」

ミシェルは獣人達の普段の生活の仕方や、考え方などを聞きたかったのだが、獣人達はすっかり問題児の愚痴を言うだけになってしまった。

「親父さんもお袋さんも死んでしまって、アホな兄貴の面倒まで見て、本当に可哀想なんですよトセちゃん。」

「あ、ああ。」

ミシェルはその言葉を聞いて思い出した。アバルとトセは異母兄妹である、という話をバッツがしていたことを、本来ならこんな事を本人に断らずに聞くことは大変失礼なことだとミシェルもわかっているが、好奇心からその兄妹の家族の事を聞いてしまう。

「アバル達の父親はどのような方だったんだ?」

「それは良い方でしたよ。優しくて面倒見の良い方でした。」

「狩人をしていて、よく山鳥を近所の住人に振舞ってましたよ。」

「前の奥さん、アバルの母親には尻にひかれていましたけどね。」

あははは、と笑う獣人達、アバル達の父親の事を話す彼らの楽しそうな顔を見て、ミシェルはその素晴らしい人柄を窺い知ることが出来た。

「聞いた話だと、アバルの母親は狼の獣人なんだろ。」

「ええ、美人でしたけど、途轍もなく怖かったです。」

「幼心によく覚えてます。アバルが6歳の頃に病気で亡くなったんですよ。」

「その後、親父さんは再婚してトセちゃんが生まれたんですよ。」

「トセちゃんの母親も美人で、親父さん村中から羨ましがられたそうですよ。」

「あの兄妹は、8歳違いで、今では16歳と24歳。アバルも良い大人なのに馬鹿ばっかりしているんですよ。」

「子供の頃から馬鹿でしたけど、親父さんが死んでから馬鹿にますます拍車がかかって今では馬鹿の王様、馬鹿オブザ馬鹿です。」

馬鹿だ、馬鹿だと連呼する獣人達、アバル本人が聞けばきっとブチ切れること間違いないだろう。一応、彼は馬でも鹿でもない。狼と犬である。

こんな事は聞くべきではないが、と前置きをし、ミシェルは聞く。

「その、アバル達の両親は、どうして亡くなられたんだ?」

やはり、帝国に・・・と聞く前にバッツが答える。

「いえ、2年ほど前に流行病で夫婦揃って亡くなられました。」

聞けば、アバルがアホなことをしでかす度、家族が止めていたのだが、両親が居なくなってアバルを止めることを出来るのがトセだけになってしまったとのこと。

(トセ、一人で馬鹿の相手は疲れるよな!分かるぞ!その苦労!)

ミシェルの頭にシュージンの姿が思い浮かぶ。

ミシェルは改めてトセにシンパシーを強く感じた。


続く


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