第22話 うちの兄がすいません
「馬鹿兄貴!先生方にこれ以上迷惑かけるんじゃないよ!!」
「だが、トセ!」
水の入ったグラスを叩いたような澄んだ声でアバルを叱りつけるトセ。
ぎゃあぎゃあと言い合うそのグレーと白の獣人を指差しながらミシェルはバッツに聞く。
「どちら様?」
「彼女の名前はトセ、アバルの妹です。」
「妹!?彼女も狼の混血なのか!?」
「いえ、妹と言っても異母兄妹、彼女は犬型の純血なんです。」
「そうなのか。」
ミシェルがバッツから話を聞き、その兄妹に再び目をやると、
「というか、トセ!なぜここに!川へ魚釣りに行ったはずでは!?」
「みんなから聞いたの!お前の馬鹿兄貴が花瀬与二郎の事件簿って言いながら暴れているからどうにかしろ!って!!」
「あのフジツボどもか!?」
「フジツボじゃない!!」
釣ってきたと思われる川魚をアバルの顔面に叩きつけて言うトセ。
流石にこれ以上はまずいと思ったのかシュージンが兄妹喧嘩に割って入る。
「まあまあ、そこら辺で。」
「きゃっ!すいません!うちの兄がすいません!」
平謝りするトセ。その様子を見てミシェルは思う。
「ああ、お前も苦労しているんだな。」
馬鹿の面倒を見るという苦労をよくわかっているミシェルは、トセにシンパシーを感じるのであった。
(お前が謝っているそいつもなかなかの馬鹿だぞ。)
一応、心でトセに指摘するミシェルであった。
すいません、すいません、と何度も頭を下げるトセに対しシュージンは、「俺のことは気にしなくて良いから」と、優しく言う。そのシュージンの顔を見たトセは顔を赤くして言う。
「あたしったら、はしたない!せっかく先生がいらしたのに!」
「いや、かまわない。元気なくらいが丁度いい。」
その言葉を聞き、さらに顔を赤くするトセ。白い毛並みがその赤さをより一層際立たせるので、見るだけで熱さを感じられるその恥じらいの赤の顔は、先程のドロップキックをした凛々しい女性の顔とは違い、可憐な少女の顔であった。
「あ、そうだ!あたし、先生をもてなす為に魚を釣ってきたんです!こちらをどうぞ!」
アバルの顔に叩きつけられた魚を両手で持ち、シュージンに差し出すセト。
「あたしの気持ちです!先生!受け取って下さい!」
力一杯目を閉じ、大きな声で言うトセ、シュージンはその魚を受け取る。
「ああ、ありがとうトセ君、後で焼いて食べよう。ウニご飯も一緒に。」
右手で魚を持ちながら優しく微笑むシュージン。その微笑みを見て、また顔を赤くするトセ。
「ぐぅぅ、オレは認めんぞぉ!」
トセのキックのダメージから復活したアバルが凄い形相で睨みながら言う。
「いい加減して!お兄ちゃん!」
「アバル君、とりあえず話しを聞いてくれ、君の意見もちゃんと聞く。」
「先生もこう言っているじゃない!話を聞いて!」
トセはアバルを眉を吊り上げ見つめる。
アバルはトセのその力強い眼差しに負けたのか、項垂れて渋々と言う。
「わかった、聞くよ。」
続く




