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第20話 岡松先生は出張だ

その獣人の集落は森の中の開かれた場所にあった。簡単なテントが4張りあり、暗い顔をした年老いた獣人や若い女性の獣人がいた。

「ここか。」

「はい、オレ達の集落です。」

シュージンの言葉にバッツが答える。

そうか、とシュージンは短く答え、バッツに指示を出す。

「まずは、みんなを集めてくれ、そこで話しを・・・」

その時、大きな声が奥から聞こえてきた。

「離せよ!離せよ!花瀬与二郎の事件簿パート2!!離せよ離せよ!花瀬与二郎の事件簿パート2!!」

「グヘ〜!」

「何てパワーだ!?」

体にまとわりつく5人の獣人を引きずりながらこちらに向かってくる青年が見えてきた。

「ア、アバル!?」

「な、なんだ!?あの男!?」

「あいつの名前はアバル!先程言った反対派の獣人です。」

「いや!反対派ってのはともかく、花瀬与二郎ってなんだ!?」

「アバルはすっげー馬鹿なんです!」

「分かった!!」

ミシェルはバッツの簡潔な説明で全てを察した。ああ、シュージンと同じタイプの奴だ、と。

アバルは、シュージン達の前に来ると、腕や足に抱きついている獣人達を無理矢理引き離した。

「テメェら!ベタベタとくっつきやがって!フジツボの獣人か!?」

「グヘッ!」

「グッ!オレ達は犬の獣人だ!!」

「知ってるぜ!海辺の岩にへばりつきな!」

「フジツボ扱いしてるぞ!」

シュージンより10センチほど身長の高いその獣人はグレーの毛で引き締まった体を持つ逞しい男であった、右は金、左は銀の色を持つ鋭い目で集落に訪れた二人の人間を睨み、凄みを効かせた声で言う。

「アンタらがセンセ?随分とひょろっこいな。」

「おい!アバル!先生方に失礼だろ!」

威嚇するアバルを叱責するバッツであったが。

「アァァン!?」

「くぅぅ〜ん。」

(ちょっとかわいいな!?)

アバルの威嚇に萎縮してしまったバッツが犬型の獣人だと再認識したミシェルであった。

「用があるのは俺だろう。」

尻尾を丸めて怯えるバッツの前に出るシュージン。

「アンタが岡松センセ?聞いていたより若いな。」

「オレはシュージン、シュージン・コーモト。岡松先生は出張だ。」

「あ、そ。」

睨み合うシュージンとアバル。重苦しい空気が辺りを包む。

ミシェルはその息苦しさのせいで口の中に溜まった鉛のような唾を飲み込む。ごくり、という音がとても大きく感じるほどの静寂。二人は言葉も発さずにただ睨み合う。

「「・・・。」」

バッツはシュージンの陰に隠れるようにし、ブルブルと震えている。その様子を見るに、知能はともかく余程の力を持つ獣人だということが分かる。

二人の出す威圧感にこの場の全てが沈黙する。

その沈黙を先に破ったのはシュージンであった。

「お手。」

「ワン。」

(お手するんかい!?)

差し出された手のひらに右手を置くアバル。その瞬間、

「ぐへえぇああぁぁああいい!!!」

アバルが苦痛の叫びを上げる。

「ふっ、手にウニを仕込ませてもらった。」

勝ち誇った顔で手のひらを見せるシュージン。手には深々とウニの棘が刺さって血が流れている。

「お前もなかなかのダメージだぞ!?」

ミシェルも沈黙を破りツッコミを入れる。

「なかなかやるじゃんか、センセ。」

「お前もな。アバル君。」

へへ、と笑いながら手を差し出し握手を求めるアバル。シュージンがそれに応じると。

「ぬあぁぁぁぁいぁいぃぃい!!!」

シュージンが苦悶の叫びを上げる。

「栗だ。」

そう言い、アバルが手を見せると、そこには栗のイガが刺さっていて血が流れていた。

「お前もか!?」


続く








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