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第2話 私に聞くな

「はぁはぁ」

声を荒らげて一通りツッコミ終えた女騎士は呼吸を整えるため少しの静寂が流れる。

「すまない、俺がもっと早く来ていれば。」

風に乗り焼かれた家々の煤と血の匂いが運ばれてかつてあった平穏が壊されたことを改めて認識する。

「いや、本来なら騎士である私が守るべきだった。町を、人々を、平穏を・・・だが・・・私が非力なばかりに・・・」

今にも泣き出しそうな自らを律する。それは騎士の誇りと無力な自分を認めたくないという意地であった。

「名前は?」

「ミシェル・コルツ。」

「歳は?」

「18。」

「犬派?猫派?」

「猫の方が・・・って、いるかこの情報!?」

「まだ戦えるか?」

「・・・!」

先程まで涙目だったミシェルの目に闘志の火がつく。

「ああ!」

「そうか。なら3人でさっき奴が言っていたラチャオのクソ野郎がいる本陣へブッコムぞ。」

「3人?」

私とシュージンと他に誰かいるのか?ミシェルが思った疑問を言おうとすると。

「シュージン殿!我輩が得た情報によると本陣はここから南の川沿いにあるらしいですぞ!!」

喋るトウモロコシが現れた。

「でかした!ポタージュ君!」

「誰だぁぁぁ!?」

「俺はシュージン。」

「お前じゃねぇ!そっちのトウモロコシに手足が生えた奴ぅ!」

「ポタージュですぞ。」

「ポタージュ君だ。ここへ来る途中、町中で助けた。トウモロコシの獣人だ。」

ポタージュと名乗る人間大のトウモロコシに顔と手足がある謎の存在はトウモロコシのヒゲを思わせる口髭を撫でながら答える。

「我輩、ちょっと焼かれて焼きトウモロコシ気味ですが、まだまだ戦えますぞ!」

「知らねぇ!」

「なんだ?知り合いではないのか。」

「騎士とはいえ、町の住人を全員知っているわけでもないので無理もないですぞ!」

「町に喋るトウモロコシいたら否応でも知るわ!しかもトウモロコシの獣人って!獣じゃねぇだろ、野菜人だろ!?」

「えっ?じゃあ、コイツって?」

「私に聞くな!」

「さあ!皆さん!いざ本陣へ突撃ですぞ!」

「お前が仕切るな!!!」


---

イルド帝国軍・ラチャオ隊本陣。


テントの中、簡素な椅子にのけぞりながら座る男がいる。右手の手鏡で自らの整った顔を見ながら部下らしき兵の話を聞く。

「ラチャオ様、もうすぐピーコス伍長が報告に戻る時間です。」

「ああ、ってか俺様のこのピアスどお〜、いい感じじゃね?」

「イケイケです。」

「マジパネェです。」

「ラチャオ△です。」

周りの部下達は口々にラチャオを褒め称える。ラチャオ好みの言葉で。軍隊らしからぬ褒め言葉である。

するとワーワーと外から騒がしい声が聞こえる。

「なんだ?勝って兜の緒がユルユルになっているとはいえ、騒ぎすぎじゃね?」

「そうですね、いささか様子がおかしいですね。見てきましょう。」

「なるはやでおねぇ〜。」

一人の部下がテントから出ようとすると、

「ごめん果物!アーンド野菜!!」

「略してごめんくださいですぞ!」

「どういう挨拶!?」

部下を吹き飛ばし男女二人組とトウモロコシが現れた。シュージンとミシェル。そしてポタージュ君である。シュージンはパイナップルを模した被り物をし、剣の切っ先でこの場にいる偉そうな奴を指し示し・・・

「お前がラチャオか?」

シュージンが問う。

「様をつけろや、生ゴミヤロー。」

「肯定したな。」

「したさ、だったら?」

「ぶっ潰す。」

「ハハハッ!お前らぁ!ゴミ掃除と野菜料理の時間だ!」

ラチャオの掛け声で部下たちが剣を抜き一斉にシュージン達に飛びかかる。が、

「お邪魔ーボー茄子!」

シュージンの高速の剣さばきの前に逆に野菜料理にされてしまう。

「やっぱり、麻婆茄子にはパイナップルを入れなきゃな。」

「酢豚じゃなくて!?」

シュージンは被り物のパイナップルをラチャオの足元へ脱ぎ捨てて挑発する。

「ゴミヤロー。俺様のかわいい部下達をよくも・・・だがなぁ!」

ラチャオは懐から赤い石を取り出す。

「出て来いやぁ!召喚獣・火竜オガバーン!」

赤い石は輝きを放つと、テントを焼き破り、人の5倍の大きさがある空飛ぶドラゴンが現れた。

「「あ、あれは!」」

「我輩を焼きトウモロコシにしたドラゴン!」

「町を焼いたドラゴン!」

ポタージュ君とミシェルは目を大きくしながら叫んだ。

「ゴミヤロー。俺様の部下を手をかけたのは許せねぇ・・・このキーヤン・ラチャオが裁く。あの町みたく・・・ウェルダンにヤキ入れてやる!!」

「フン、さっきからチャラチャラとうるさい奴だ。だいたいそのピアス、親から貰った体に穴を開けるとは何事だ。それに、俺の名前はシュージン・コウモトだ!」

「まだ名乗るんだ・・・いや、ラチャオは初対面か。」

ミシェルはもう慣れたと言わんばかりにツッコんだ。

「行け!オガバーン!」

ラチャオが叫ぶと空飛ぶ火竜は口から火球を放つ。

「食らわーん!」

シュージンは上から迫り来る火球をドッヂロールでよけ体勢を素早く直し、ラチャオとの距離を詰めようとする。

「すばしこい可燃ゴミが!これならばどうだ!オガバーン!!」

ラチャオの指示で火竜は2回連続で火球を放つ。一つ目は先程と同じくドッヂロールでよけれた。しかし二つ目は避けれずにシュージンが居た部分が爆発し火が燃え広がる。そして、爆発で飛ばされたシュージンの剣がカラカラと音を立ててミシェルの足元へ滑り転ぶ。

「いやぁぁ!!」

「シュージン殿!!」

「ゴミヤロー、いや、シュージン・コウモト・・・お前の名前は忘れねぇー。お前の死と燃えカスは・・・殺された部下達へのせめてもの手向けだ・・・」

ラチャオが燃える炎に近づこうとすると・・・

「なっ!?」

燃え盛る炎から右腕が伸びてきてラチャオの首を掴んだ。

「お前が召喚獣を操るように、俺も召喚獣を使わせてもらった・・・!召喚獣・ファイアレスキュー松平!」

対象に短時間だが耐火性能を付与する能力をもつ召喚獣・ファイアレスキュー松平は自分の役目を終え、サムズアップをしながら満足そうに消えていった。

(コイツ、召喚石も無しに召喚を!?ありえねぇ!?)

耐火性能だけでは防ぎきれなかった爆発の衝撃で頭から血を流しながらも、途轍もない握力で自らの首を絞めてくる敵にラチャオは恐怖と驚きを隠しきれなかった。

(オガバーン!)

ラチャオは自らが声を出せない時に備えて火竜に覚えさせておいたハンドサインで指示を出す。

(助けろ!)

「グオオッ!!」

ラチャオを巻き込むため火球は出せない、なので自らの鉤爪で敵を排除しようと唸り声を上げ空からシュージンに迫る火竜。

「それを待っていた!召喚獣・松代大学付属高等学校ファランクス部!!」

すると10人近くの精悍な顔をした重装歩兵の高校生が陣形をとり盾で火竜の攻撃を受けては長槍で刺していく。

(バカな!?自動判断タイプの小型とはいえ召喚獣を11人も!?)

「俺はシュージン、シュージン・コウモト。強いて言えば、目下の悩みは空中戦特化の召喚獣を所持していないことだ。」



続く


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