第19話 いやだなー、怖いなー怖いなー
「さて、おふざけが過ぎたな。じゃあバッツ君、案内よろしく頼む。」
「はい!」
「おふざけの中心人物が言うな!」
声を荒げて言うミシェル。だが、そのおふざけの中心人物はそんな言葉を右から左へと流し、話を続ける。
「馬とか通れる?そこまでの道?」
「獣道を通りますが、馬は問題なく通れると思いますよ。」
「よし、じゃあ行くぞ。」
(えぇ〜。今更、真面目モード。)
あの時間はなんだったんだ。と、先程までの邪道二人組のツープラトン寿司談義のせいでどっと疲れたミシェル。
しかし、ミシェルはあのシュージンの言葉を思い出す。
(猫型の獣人か・・・)
ミシェルは確かに猫が好きだ、だがそれは四足歩行の猫の話。
昨日のグヘグヘ言う獣人達のイメージがつきまとう。
(ないな!!)
グヘグヘ言う猫耳と尻尾が生えたその存在はストライクゾーンから大きく外れていると判断された。
ミシェルがそんなことを考えていると、バッツがキョロキョロと周りを見渡してることに気づいた。
「どうしたんだバッツ?」
とミシェルが問うと。
「岡松先生はどちらにいらっしゃるんですか?」
「ああー。」
岡松先生はシュージンが呼び出した召喚獣なんだ、とミシェルが言おうとするが、それより先にシュージンが答える。
「岡松先生は部活の遠征に同行していて不在なんだ。」
「そうなんですね!」
「ファランクス部の臨時顧問なんだよ。」
ミシェルは昨日の夜に聞いたことをバッツにも教えてあげた。
ーーー
「ぐえー、虫とかいるよなー絶対。」
バッツを先頭に獣道を進む一行。二番目にシュージン、三番目にミシェルと続く。
馬に乗りながら文句を言うシュージンにミシェルは呆れている、ちなみにミシェルが一番後ろなのは、後ろから虫が来たら怖いから、というシュージンの声があったためである。
(お化け屋敷か!?)
「すいません。こんな道のりで、ああ、ちなみに虫は結構いますよ。」
「いや、バッツ君はよくやってくれている。ただ、虫がなー。虫結構いるんかー。いやだなー、怖いなー怖いなー。」
「完全にお化け屋敷!!」
先頭を切って道を狭める枝を折り、長い草を踏み潰して、シュージン達が少しでも通りやすくしてくれるバッツは確かによくやってくれている。
(こんな女々しさが限界突破してるやつの為に!!)
シュージンを先生と仰ぐこの青年にミシェルの心の中は申し訳なさでいっぱいであった。
しばらく道を進んでいるとバッツが言葉を発する。
「もうすぐ集落に着きますが、先生方の耳に入れてもらいたいことがあります。」
「なんだ。」
「実は、集落の中に一人、先生方の援助はいらないと言う者がおりまして。」
「その程度のことは予想はついている。戦争で故郷を失っているんだ、疑心暗鬼になることも無理もない、むしろ一人だけ反対なんて少ないくらいだ。」
「その一人が問題なんです。」
「と言うと?」
「その一人を抑えるために先生と出会った時のオレ以外の9人は集落に残っているんです。」
「という事はそいつ、腕は立つのか?」
目を輝かせながら聞くシュージン。
(まさか、帝国と戦う仲間に引き入れようとしている?)
ミシェルがそう思っていると、少し悩んだバッツは、顔をしかめながら答えた。
「腕が立つ、というより、見てると腹が立ちます。」
「どういう事だ?」
「そいつは・・・」
そのバッツの答えが聞こえる前に獣道が終わり、太陽の光が差し込む開けた場所にたどり着いた。
続く




