第14話 君は
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ミシェルは深い闇の中にいた。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、許してください・・・。
守れなかった人達の亡霊か、手にかけた帝国兵達か・・・。
呪われても仕方ない・・・。
私は・・・、私は・・・。
“貴方の笑顔が見たい、心からの”
どこからか優しい声が響く。
君は・・・。
暖かな光がミシェルの頬を撫でる。
ーーー
「朝・・・?」
眩しい朝日がミシェルの顔を照らす。
「どうした?ミシェル。」
シュージンだ。何枚もの毛布は綺麗に畳まれ、ググ〜と体を伸ばしながらミシェルに声をかけてきた。その頭には寝癖がついている、とんでもない寝癖でレモンでも絞る為にあるかのような髪型になっている。
「こ、ここは現実なのか?」
現実的ではない寝癖の男に問う。
「朝から哲学討論とか辞めてくれよ〜。マジ勘弁。」
「哲学討論ではない!幽霊が、幽霊がいたんだ!!きっとあの世から誰かが私を呪い殺しに来たんだ!!」
「死んだ人間は何も思わないって言った。それにその理論だと真っ先に俺は呪い殺される。」
バリバリと手櫛で自分の寝癖を直すシュージンは言う。
「だが、確かに見たんだ・・・。青い瞳の、女性の幽霊だった・・・。」
「うーむ、ナイトメア松野は、なんも反応なかったはずだが・・・。」
「ん?ナイトメア松野?」
「ああ、夜間監視能力の召喚獣だ。」
「それって長い金髪で色白の女性型の召喚獣か?」
「いや、姿は見たことないから分からないが感覚的に女性型とは分かる。ふんわりと、そして、寝ている時に俺の周りに危険がないかじぃっと見守っているというのも分かる。ふんわりと・・・。」
「じゃあ!幽霊の正体はそいつではないか!!」
本日一発目のローキックをシュージンにぶちかますためミシェルのすらりとした脚がシュージンの左足をとらえる。
「いっ、たくない!鎧がない分ダメージが少ない!!」
「うるさい!」
シュージンに右肩に向かってパンチを放つミシェル。
「うわっ!バランスが良い!こいつ俺の体にバランスよくダメージを与えるつもりだ!」
バランスの良いのは野菜中心の食生活にして〜、とふざけているシュージンとそれにツッコミをいれるミシェル、また理不尽な一日がまた始まろうとしていた。
ーーー
「改めて〜、おはようございマスタング!ヒヒーン!!」
フィンガースナップしながら馬のモノマネを取り入れた挨拶をするシュージン。
「おはよう、そしてふざけるな。」
「うわーご機嫌ナナメ。」
「誰のせいだ!誰の!」
ミシェルが見た幽霊の正体、それはナイトメア松野という夜間監視の召喚獣。シュージンが言うには、寝ている間に勝手に出てきて勝手に見守っている、ような気がする。とのこと。
「召喚獣で良かった!本物の幽霊かと思ったんだぞ!」
「俺もふんわりとナイトメア松野のことは知っていたがまさかそんな見た目とは思わなかった。」
「ふんわりでもいいから教えて欲しかった。」
「で、他に特徴はどんな感じだった?金髪ロングで青い目以外どんな見た目をしていた?」
「いや、もう全然覚えていない。怖かったことしか頭に残ってない。」
「なんだ、つまらん。」
残念そうにそう言うシュージン、しかしどことなく嬉しそうであった。
「しかし、夜間監視の召喚獣か、ナイトメア松野がいれば安心して眠ることができるな。」
「そうだな、この前も寝ている時でっかいコオロギが近くにいることを知らせてくれた、MVS、モスト・バリアブル・ショウカンジュウだ。超有能。」
「コオロギよりでっかい脅威がこの世界には沢山あると思うが。」
「あと、寝込みを襲おうとした強盗も知らせてくれたし、狼の群が近づいて来た時も教えてくれたな。」
「それがコオロギよりでっかい脅威ってやつだぞ、シュージン。」
どうやらシュージンにとっては強盗も狼もコオロギ以下の存在らしい。ミシェルは呆れている。
「しかし、姿を見たことないのによく分かるな、名前や能力まで、どうやって危機を知らせるんだ?」
「こう、胸に矢が刺さるような感覚がして・・・。」
「もうちょっと穏やかな知らせ方をしてくれ!」
「しかも出現している時は高確率で悪夢にうなされる。」
「どっちにしろ安眠できない!」
「そして、俺が寝ている間しか現れないから、その姿を確認できない。」
「それが幽霊騒動の原因だ!」
続く




