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第12話 お前次第だ

「嫌だな〜野宿ぅ。虫とか、虫とか、虫とかいるだろうなぁ。」

「まだ言うか。」

文句を言いながら何枚もの毛布にくるまるシュージン。ミシェルもどちらかと言えば虫は嫌いだが、横にここまでの虫嫌いがいると相対的に自分は虫が好きな方だと思えてくる。

「はぁ、先はまだまだ長そうだ。」

馬を木につなぎ終えたミシェルは自分も寝るため毛布にくるまる。そして横で毛布の塊と化したシュージンに言う。

「今日は色々なことがあったな、町を焼かれ、お前に会い、喋るトウモロコシに、召喚獣、ドラゴンに、帝国兵。」

「ああ、本当に。」

何重にも毛布をまとっているために若干くぐもった声でシュージンが答える。

「死者を葬い、復讐を誓った。」

「・・・。」

今度はシュージンは何も答えない。

「別に責めているわけではないし、お前について行くと決めたことに後悔もない。私も理不尽と戦うと決めたのだ。」

「それは良かった。」

「ああ、そして、あの時の花吹雪は綺麗だった。またいつか見たいな。」

「見せてもいいけどローキックは勘弁して。」

「お前次第だ。」

この時、ミシェルは微笑んでいた。あの時と同じ、色とりどり花が舞い踊る時の笑顔で、しかし夜の闇はそれを見せない。そもそもシュージンは毛布の塊と化しているのでどのみち見ることはできない。

「それに、スペ松に召喚獣の秘密、まだまだあるぞ、獣人に、熱血教師。」

「やべーよやべーよ。」

「呼ばなくいい。」

「岡松先生はな・・・」

「ああ。」

「ファランクス部の臨時顧問。」

「そうなんだ!?」

「顧問の松谷先生が練習中の大怪我で入院している間の代理でなったんだ。」

「出たな、名前に松がつくやつ。」

「初めは弱小部活と新任教師だ、って目の敵にしていたんだけど周りに押し付けられる形で臨時顧問になっちゃって、でもそしたら部活に励む生徒達の姿を見て心を動かされたんだ。」

「それでそれで。」

まるで寝る前に親に本を読み聞かせられる子供のような無邪気なミシェル。エメラルドの瞳を輝かせながら続きを急かす。

「地区大会初戦でいきなり敗退の危機、後半戦が始まる前の休憩時間に岡松先生が言ったんだよ。」

「なんて?」

「松谷先生は今、病院で文字通り命がけで戦っている。お前達も命がけで戦え。って」

「いい言葉だ。」

「そして、逆転勝利、松谷先生も無事退院。」

「小説なら絶対売れる。私は買う。」

ミシェルは剣に青春を捧げてきたため、こう言う話が大好物であった。

たった1日の中に多くの出来事があった、面白いこと、悲しいこと、本の中から飛び出したような見たこともないこと。

「本当に・・・色々あったな・・・。」

思い巡らすミシェル。流れる静寂。遠くにシュージンの嫌いな虫達の鳴き声が微かに聞こえる。

「シュージン?もう寝たのか?」

ミシェルがつぶやくがシュージンから返事がない。

「私も寝るか。」

ミシェルは目を閉じた。



続く

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