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第10話 私が怒りたいわ!

「おい!オッサン!何してやがる!?」

先程ビンタされた獣人の隣にいた別の獣人が紳士に食ってかかる。

「甘えるなぁ!」

紳士渾身の二度目のビンタを鬼のような形相で放つ。それを受けた獣人はグヘボァと叫びながら地面に転がる。

(怖っ!?そしてコイツもダメージボイスがグヘグヘうるさいな!獣人はみんなそうなのか!?)

ミシェルは本で読んだことのある知識には載ってなかった獣人の様子に呆れていた、本の中の獣人は強く獰猛な姿は書かれていたが、ダメージを受けるとグヘグヘ言うなんて全く記載されてなかったためである。さらに紳士は次々と獣人にビンタをしていく、甘えるな!の掛け声とともに。そしてそれを受ける度にグヘグヘとまた叫び声が上がり、獣人が大地を転がる。

「とりあえず!お前ら全員!正座!」

獣人達全員にビンタし終えた紳士は号令をかける。

「あの、私達は?」

「お前ら2人はいい!!」

「はい!」

ミシェルはすっかりこの紳士に気圧されてしまった。

(もはや紳士じゃねーよ。)


ーーー

獣人達は正座し、その前に仁王立ちで紳士が立つ。紳士は獣人達に向かって説教をし、ミシェルとシュージンは紳士の少し後ろに控えている。ミシェルは紳士の余計な怒りを買わぬようにひっそりとシュージンに聞く。

「シュージン、あのお方は誰なんだ。」

「グレイテストティーチャー岡松さんのことか?」

「召喚獣。」

「よく分かったな。」

「例にもれないからな。しかし、納得が出来ない、召喚の力は使い果たしたのではないのか?」

(まさか、ガッツか?)

と、ミシェルが説明にあったスポ根要素のことを言おうとすると。

「岡松さんを召喚するには詠唱と特殊な所作が必要な分消耗が少ないのさ。それにまだまだ召喚の力は使えるぞ。」

「詠唱と所作・・・。まさか!」

何かにピンと来たミシェル。先程のやべーよ連呼とヘッドバンドする姿のシュージンを思い出す。

「あれか!」

「岡松さんを召喚するにはやべーよと29回唱え、ヘッドバンギング38回しなければならない。ただしこのコストはガッツでカバーはできず、この方法以外での召喚はできない。」

「回数が中途半端!そしてトレカ風の説明!」

詠唱と所作というコストを支払う召喚獣、そんなのさっきの説明にはなかったぞ!と文句を言うミシェル、そして他にも言いたいことがあった。

「お前、やべーよって50回くらい言っていたぞ。」

「余分な16回は俺の本心。」

「45回言っていたのか・・・って何がやべーんだ!?」

「各方面に喧嘩を売りそうで・・・怖い。」

「岡松さんの方が怖いわ!」

「色々怒られそう。」

「私が怒りたいわ!」

シュージンとミシェルが小声で言い合っているなか、グレイテストティーチャー岡松は獣人達に人生とは何か、何のために生きるのか、道徳とは、人情とはなどと長々と説教をしている。それを耳と尻尾を垂らして泣きそうな顔で聞く獣人達。

「このままだと夜になってしまうぞ、なんとかしろシュージン。」

「しょうがねぇなぁ、いっちょやっかぁ!」

「ふざけてないでさっさとしろ。」

「うっす。」

岡松先生は自分が納得するまで引っ込まないんだよなぁ、とぼやきながらグレイテストティーチャー岡松の元に近づくシュージン。

(完全独立タイプ。)

これ説明でやったところだ。ミシェル明察・・・!圧倒的順応!

「まあまあ、岡松先生、この辺で・・・。」

「コーモト教諭。しかし私は教育者としてこの腐った蜜柑共にちゃんと更生の道を示さねば!」

(熱血だなぁ岡松さん、そしてシュージンは教師じゃないだろ。)

なんとかしろとは言ったが、ツッコミどころを増やせとは言ってないぞ、とシュージンと熱血教師岡松のやりとりを見るミシェル。シュージンは熱血教師を宥めつつ、獣人達に優しく言う。

「お前ら、帝国に国を追われたんだろ、難民か?」

「な、なぜそれを!」

自分達の素性を見抜かれて獣人達は驚き目を丸くする。ミシェルもまた驚いた。先程まで敵対していた獣人の野盗達が自身と同じように帝国に故郷を壊された被害者であること、そしてそれを見抜いたシュージンに。

「お前らは俺達を脅すだけで全く実力行使をしなかった。それに武器も鎌や斧などの農具、雰囲気で分かる。岡松先生のお話も真面目に聞いているしな。」

「うぅ、先生のおっしゃる通り、オレ達は元はただの農民、帝国に村を焼かれ、ここまで逃げて来たのです!」

「しかし、職にもありつけず、その日食う物にも困る始末!とうとう魔が差してしまい!先生方を襲おうとしてしまいましたぁ!!」

「「「先生!!誠に申し訳ございませんでしたぁぁ〜ッ!!」」」

一斉に土下座をする獣人達。全員が大粒の涙を流し心からの謝罪をする。

(私は間違えていた・・・!何が帝国を潰すだ・・・!同じ境遇の者達がいることも考えず、ただ相手を野盗だ、敵だと見なし、斬ることしか考えなかった。なんとも浅はかだ!)

ミシェルは己を恥じた。自分の視野の狭さを2人の教育者が教えてくれた。この出来事がミシェルを大きく成長させる。



続く


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