第1話 強いて言えば
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帝国に侵略された町プレジ、世界統一の名の下に、町の人々は殺され、家は焼かれ、帝国兵達による略奪が始まっていた。
「ピーコス伍長!この女なんていかがでしょうか!?」
帝国の兵士が一人の女を後ろ手に組ませながら大声で言う。
「ふむ。」
ピーコス伍長と呼ばれた色眼鏡をかけた男は連れてこられた女を頭の先から足のつま先まで全身をまるで芸術品を鑑賞するかのように見る。周りに控える3人の兵士達はニヤニヤしながらその様子を見ていた。
「ククッ・・・始まるか・・・。」
「ああ・・・ククッ。」
「ククッ・・・始まるぞ・・・。」
「「「ピーコス伍長のファッションチェックが!!!」」」
ピーコス伍長の目が大きく見開かれ、その口から大きな声が放たれる!!
「ピーコス伍長のぉ〜〜!ファッションチェ〜〜ック!!!」
「「「ククッ・・・始まったぜ・・・!!」」」
(なにこれ・・・)
連れて来られた女は困惑した。
「まずはトップスからよ!鎧ね!!!次はボトムス!鎧ね!!!全身鎧!!鎧コーデ!!この女の人は騎士ね!!!少しウェーブがかった亜麻色の長い髪の毛を後ろでまとめて、女性らしさと活発な騎士の両方の面が見てとれるわ!!!目の色はまるで南の国の海を思わせるエメラルドカラー!!切れ長でとても綺麗ね!嫌いじゃないわ!!鼻もスラッとしていて、くちびるは桜色!鎧の隙間から見える肌は引き締まりつつも女性らしさのある丸みがあるわ!!年齢は18か19ってところね!若さがあるわ!!!」
ピーコス伍長は早口でその敗北した町の女騎士を大きな声で評価する。
(クッ、殺せ。)
なまじ褒められることもなかった女騎士は恥ずかしさで顔を赤く染めていた。
「この女の人ならラチャオ隊長も喜びそうね。連れて行きなさい。」
「「はっ」」
周りの兵達が動き出そうとしたその瞬間ーー
「そんなことさせないぞ!」
その言葉と共に一瞬で3人の騎士は倒された。
「誰よッッ!!!!!!!?????」
ピーコス伍長は今日一番の大きな声で突如として現れた謎の黒髪の男に質問した。右手には剣、整えられた黒の短髪、戦場で剣を振るとは思えないTシャツにジャケットを羽織り、ジーンズにサンダルという簡単ファッション、TPOをこれっぽっちも考えてない姿の男剣士に大声を上げるピーコス伍長と真逆に男は静かに言う。
「貴様ら下衆供に名乗る安い名前はあいにく持ち合わせていない。しかし強いて言えばシュージン。シュージン・コウモトだ。」
「名乗っているぞ!」
流石に女騎士はツッコミを入れた。
「お前ぇ!よくもカー=イジとア=カギィとゼ=エロを!!俺の同僚を!」
女騎士を拘束していた兵は怒り、剣をとる
「よせ!クロ=サワー!!」
ピーコス伍長の制止を聞かず、怒りのあまり拘束する役目を忘れ、突進してくるクロ=サワー。
「お前ではない、俺の名前はシュージン。強いて言えばシュージン・コウモト。」
クロ=サワーは倒れた。
「名乗った!2回目!」
女騎士はツッコミを入れた。2回目。
「ピーコス伍長のぉ!戦闘力チェック!!非常事態なのでマキでいくわ!剣握っている!アレを使ったのね!」
「剣?これのことか?」
シュージンと名乗った黒髪の剣士は持っていた剣に目をやる。
「重い。」
「ポイ捨て!?」
「お馬鹿さん!剣を捨てるなんて!」
ピーコス伍長はここぞとばかりに剣を抜き突進する。
「召喚獣・チョークスリーパー松山。」
「ぐっ!」
「突如として屈強な男が羽交い締めをした!?」
シュージンは先程捨てた剣を拾い、身動きの取れないピーコス伍長に突き立てる。
「グボォア!!」
「俺の名前はシュージン。シュージン・コウモトだ。強いて言えばいつの日か地獄でまた会おう。」
シュージンは女騎士に近づく。
「立てるか?」
俯きながら小刻みに震える女騎士に手を差し伸べながら優しく言う。先程の身動きの取れない人間に剣を刺した冷酷さは感じられない。女騎士は・・・
「なんでだぁ!!そしてだれだぁぁ!!?なんでチョークスリーパーなのに羽交い締めなんだぁぁぁ!!?裸締めをしろぉぉぉ!!!」
混乱していた。
「俺の名前はシュージン・コウモトだ。」
「知っている!!これで4回目!!」
「チョークスリーパー松山については4年後に3秒くらい説明してもいい。」
「待たせるわりに説明短っ!?」
続く




