出会い
音楽とは心の写し鏡である
今日も、変わらない平凡な毎日。
大学が終わり、帰路を急ぐ。
なにもやりがいも感じないまま。
俺の住んでいるアパートは夕日を浴び青子に影を映していた。この幻想的な風景はどことなくノスタルジックで何とも言えない気持ちにさせてくれる。
だが、そんな気持ちも数分で現実へ戻っていく、
いつものように「能登」の表札が記してある201号室の目の前に立ち、鍵を取り出す
「ただいまー」
といいつつ重いドアを開ける、もちろん答えてくれる人などいない
あたり前だが、ほとんどの大学生なんてこんなものだ。
家に帰れば一人。孤独なのだ
一応、人間として関わり合いのある奴はいないわけでもないのだが、一番近い存在は隣の部屋の住民であろう。
隣人である202号室の女性だ。見かけたことはあるが話したことはない。
だが、おっとりとした文学的少女のイメージを密かに持っている。
他に彼女について抱いている印象は、名字が珍しい事くらいな物だ
顔もちらっと横顔を見ただけなのでしっかり見てはいない
大学のやつらとの付き合いは嫌いじゃない、だが好きとも言えない
過半数の生徒が大学で集団を作り、独自のグループを形成している。勿論それが悪いとは言わないが厄介なのは俗に言うウェーイ系大学生だ。あいつらは絶滅すればいい
大学で遊ぶだけ遊んで他人に迷惑をかけ就活では他人よりもずっと偽りの自分を作っている。そんな奴らが許せない。
してからして高校までに培ってきた友人たちとはすべてとは言わないが少し違うものだ
今考えてみると、高校までの友人たちは共に恋愛やスポーツ、勉学などといった打ち込める中の戦友といっても過言ではなかった。
だが、昔ほどではないが、受験戦争を乗り越え文系大学生という人生の夏休みに突入したわけだ。
ここでは、里親を離れたもんならほとんど自由であり恋愛に飲酒、パーティにセックス
他の大学生を見ているとそんな乾涸びたことをしながら時間は過ぎていくのを感じていた
もうわかっているとは思うが、俺はこういったことにあまり興味はない
強がりじゃなく、本心からだ。。。酒以外は
寝る時間も、起きる時間も、門限も何もかもがなく自分の責任だ
だから俺はこの自由を最大限に使い趣味に使うことにした。
そう、独りでもできる趣味を
「はぁ…疲れたぜぇ…」
特にバイトもしていないのに楽な大学に行っただけなのにこんな言葉が出るのはおかしいが。人間は不安的な置かれた場所に居続けるとそれが当たり前になってしまうものだ。
いつものように夕飯の支度をし、なんの感情も感じられないレトルトやカップ麺冷凍食品の数々から厳選したものを選び調理とは名ばかりの作業を終えて食事をし風呂へ入った。
ここまではいつもの通り、だがここからは違うほぼ毎日の日課だというのに
まずは、おもむろに酒をコップへ注ぐ。早めにその気になりたいなら、まずショットグラスにウイスキーを注ぐ。まず一杯
体が程よく温まってきたら、始めよう
その次にアンプの電源をつける
こいつも俺同様、電気という酒を飲ませて身体を温めさせる
程よくお互いが温まったら本番だ。
少しずつボリュームを上げる
ノブを回す仕草ですら哀愁を感じなんとも言えない優越感に浸れる。
「ささっ今日はどれにしようかな」
もうすでに三杯は飲んでおり完璧に出来上がってる。アンプも出来上がってるようだ
「今日のナンバーは!」
「Lolly Vegasの気分だな。」
ーーーcome and get your loveーーー
Come and get your love~♪
Come and get your love~♪
Come and get your love~♪
Come and get your love~♪
こんな曲を聴いてしまうと踊る相手もいないのに独りで踊ってしまう。そんな名曲を聴きながら5杯目へ手を出した。
この趣味を始めたのは大学に入ってからだ。なにより酒が飲めないからね
もともと音楽が好きだった、特にジャンルにとらわれず、聞いていいものは聴いていくといった特に高尚な哲学も何もない。だが、それが俺にとっての哲学だ
音楽ほど自由なコンテンツはないんだから聴き手もフリーダムが良い。
LPやCDが回るようにその円盤の上で僕たちは廻っていてその曲は絶えず変化している
なんてポエムを考えてた時には
5杯目を飲み終わって、その頃には曲も終わっていた。
すると俺一人しかい部屋に「ピンポーン!」とインターホンが鳴った
「さ、さすがに隣の人が迷惑してクレームをいれに来たのかな」
トホホと仕方なく音楽を止めたが少しビクビクもしている
ゆっくりとドアを開ける
するとそこには、俺の首元までの背で、肩にかかるかかからないかくらいの真黒なショートカット、大きな目がこちらを上目づかいで見ている。恰好はどうやら寝間着であろう、もこもこしたパステルピンクの姿が実に可愛らしい。
そんな出会いに動転してしまい思わず俺は
「ど、どちら様ですか?」
少女は答えた
「あ、あのっ。その隣人の音凪です」