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二〇一八年一月一一日(その8)

二〇一八年一月一一日


「……で? その続きは?」

「それから暫くして……須古冬美さんが来ました。一二月二七日の話です」

「いきなりか? 事件当日じゃないか」

「ええ、落とし物は届いてないかと云ってきて……私が何を失くされたんですか? と聞いたら……私の身体、って。冗談だとも思えませんでしたよ。違う身体でも間違いなく国木さんでしたから」

「それで、どうして須古が……いや、国木がお前の拳銃で嶋田を撃ち殺す話になるんだよ?」

「私が答えに困っていたら、スッと……私のホルダーから拳銃を抜き出して……」

云ってから日下は靴と靴下を脱いで、左足を晒した。包帯の巻かれた足だった。

「私の足を貫いてから、拳銃を持っていきましたよ」

「それで……何もしなかったのか!?」

「床から弾丸を掘り起こしたり、血と硝煙の臭いを落としたりしていましたよ。あなたが来たとき、臭い、しなかったでしょう?」

「そうじゃない! 拳銃を奪われて何もしなかったのか、そう聞いている! 足が貫かれても追いかけろ! できなければ一一〇番くらいしろ! 警察だろうが!」

「ええ……申し訳ありません……そこから……国木さんが戻ってきて、私に拳銃を返し、あなたが飛び込んできた、というわけです」

「……待て待て待て。なら国木の人格はどこに行ったんだ?」

「それは分かりません、ただ、須古さんの人格が戻ってきているなら、またインターネット上に向かったのだと思います。そして私は弾丸の補充された拳銃をしまったところに、あなたが来たということです」

 おや? と米田は日下に対して奇妙な感触を覚えた。しかしそれが何なのか、明確に言語化できず、できることはもうなかった。

 米田が交番を出ると、道路は雪で薄っすらと白くなっていた。

 多量に降れば雪に足を差し込むように歩けば滑ることはないが、少量の雪は一番滑りやすい。今残っている謎と同じ。冷え切った禁煙車の中で米田は煙草を吹かし、キーを回した。

 事件は大まかには見えていたが、それだけに真相に辿り着いたという気がしない。米田は陽子へ電話を掛けたが、繋がらなかった。

 仕方ないとばかりに米田は自宅へ戻り、まとめた資料を睨み付けながら冷蔵庫から発泡酒と冷凍食品のナポリタンを取り出した。

電子レンジに缶のまま発泡酒を入れてスイッチを入れようとした辺りで自分の疲れを自覚し、入れ直してから発泡酒を一気飲み。

 時計は既に深夜の二時を回っていたが眠るに眠れない。アルコールを入れても眠れない。

 あの緑色のフードの陽子に依頼した男は誰だったのだ? 何も解決してない。ゴチャゴチャと入り組んだ情報、既にどの人格がどこに入っているか証明のしようもないし、検討が付かない。

 こんなことなら、最初から須古冬美が嶋田九朗を殺した、とした方がスッキリしていたというのに。

 どうしてこんなに複雑怪奇な現状になっているのだろうか?

 そう思った頃、米田のガラケーが鳴った。

 陽子からかと思った米田だったが、それは職場の同僚からだった。


 未知道カンパニーの社長:三毛正二の死体が見つかったというのだ。

 手首を掻き切り、失血死しているのを社員が発見した。パソコンには自分が国木優と嶋田九朗を殺害し、その後に自殺したという遺書のような文面も残されていた。

 先ほど遭遇したハルの言葉、米田が日下から託された国木優の日記、未知道カンパニーで出会った関の証言。ふたりで調べ上げた情報からは、何一つ答えとして合致しなかった。


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