第一話 運命の子その名はアルス2 -眼鏡の貴公子-
眼鏡をかけた少年は視線を感じるとその方向へ目をやった
視線の先には呆然と自分を見つめる同い年くらいの剣を持った少年の姿が
「君たち危ないところだったね」
眼鏡の少年はそう言うと剣を持ったアルスに歩み寄る
「あっ・・ありがとう・・君は・・・貴族のようだけど」
眼鏡の少年はアルスにそういわれて少し微笑んだ
「僕はピルッコ・ジャスティス。きみの言う通り貴族だよ。君は・・・その服装からして商人の息子ってとこかな」
アルスとトールギスはお忍びのため商人の服を着ていた。眼鏡の少年ピルッコ・ジャスティスはアルスたちを商人の息子と思い込んでいるようだ
トールギスはその話を聞くとアルスに耳打ちした
「ジャスティス家といえばこのあたり一帯を治めている小貴族です」
トールギスはアルスにそう言うとピルッコに向かって
「このお方は・・・」
しかしアルスは世話係の言葉を遮り
「そっ・・・そーなんだよ!僕は商人の息子!バルスっていうんだ、バルス・ラッカマンよろしく」
ラッカマンの名前は自分の知ってる商人の名前を借りた ラッカマン家当主はとてもあざとい人間でアルスにいつも媚びを売っている小物臭漂う男だ。そのためアルスは彼のことをよく思っていない、名前を使うことにも罪の意識はまったくない。
それを聞いてピルッコは名前偽る王子に
「あぶなかったね、バルス。それとこのあたりには近寄らないほうがいいよ」
「?・・・どういうことだい?」
アルスは不思議に思った
ピルッコは彼にあることを警告する
「ここは最近とても治安が悪くなってしまってね・・・ギャング・・というべきかああいう柄の悪い連中がさっきのようなことをして金や宝石をまきあげることが多発してる」
「そんなことが・・・」
トールギスは周りを見渡した 人々の目は明るさが失われているような感じでみんな暗い
アルスはピルッコに言った
「そんなやつら野放しにしておけない!」
「もちろんそうさ、僕の家はこの辺り一帯を治めてるからね、この事件についていろいろ調べた。奴らの本拠地がこの向こうの使われていない廃墟だということや、奴らの親玉がビぜルガントというごろつきだということとかね」
「そんなにわかっているならすぐひっ捕らえるべきだよなんでしないのさ」
「そんな簡単にいかないよ、あいつら残忍だし強い。そんなことしたら何が起こるかわからない、だからにらみあいが続いてるんだ」
「・・・」
ピルッコの言葉にアルスは言葉を失う
(みんないろいろあるんだな・・・)
世間知らずは世の中のことを少し勉強した
「さっきの奴はおそらくビぜルガントの一味だろう、この辺りにはそういうのがゴロゴロいる、君たちも早くここから離れたほうがいい、気を付けて帰りなよ」
「ありがとうピルッコ・・・」
「こちらこそだよバルス この出会いに幸あれ」
そういうとピルッコは馬に乗りその場を後にしていった
---町の通り
アルスはトールギスと共に町を離れようと通りを歩いていた 王宮への帰路はもうすぐだ
すると前から男が大声で叫びながら走ってやってきた
「ビゼルガントが来たぞー!!!」
その言葉を聞いた住民たちはゾッと怯えた表情になり一斉にに通りから消えた
店は閉まり、子供は家に入れられ、引き車は方向を変えて逃げるように引き返す
この辺りは特に治安が悪く、人がいなくなると何もなくなったみたいに寂しい通りになる
「アルス、隠れて」
トールギスは足音を感じたのかアルスを引っ張り二人は通りの曲がり角に姿を隠す
すると通りの前からイカつい威厳と貫禄がありそうな大男がふてぶてしく歩いてきた
後ろには十人ほどだがごろつきのような男たちが控えている その中には先ほど一悶着起こした大男もいた
二人は曲がり角の影からその様子じっとを見ていた