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異世界艦隊 ―軍艦好きな奴が異世界でゼロから艦隊を作ったら―  作者: 紫 和春
本編

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92/115

89海里目 人は亡命する

 俺は影を見た亜人の案内の元、チハ1輌を連れて影を見た場所へと向かっていた。

 そこは北部前線司令部から北西方向に約2kmと少し入り組んだ所であった。


「この辺で見たのか?」

「はい。そこの茂みが不自然に動くのを見ました」


 亜人が指差したのは、腰くらいの高さがある生垣のような植物であった。

 こういうの、森の描写とかでよく見るタイプだな。

 そんな植物の向こう側を見てみる。

 特に何か足跡がないか探してみた。

 しかし、そのような特徴を持った足跡はない。


「本当にここだったんだよな?」

「はい。間違いありません」


 そんな中、周辺を捜索していた亜人の一人が空中をジッと見つめていた。

 それに疑問を持った俺は話しかける。


「どうかしたか?」

「ここら辺に我々とは異なる人間がいた匂いがします」

「人がいた?それは本当か?」

「はい」


 その亜人は、見た目は犬か狼のようなケモノ型獣人である。

 もしかすると、犬の持つ嗅覚を使って空中に漂っている人間の匂いを感知したのかもしれない。

 そうなれば、することは一つだ。


「その匂いの元を辿れるか?」

「出来る限りのことはしてみます」


 そういってその亜人は匂いを嗅ぎ始める。

 しばらくいろんな方向を嗅いでいると、ある方向を見た。


「こちらのほうから強く匂いを感じます」

「よし、そのまま続けてくれ」


 亜人はそのまま匂いの強い方向に向かって歩き出す。

 その方向は、北部前線司令部のある方向とは真逆であった。

 数分ほど森の中を歩いていくと、少し開けたところに出る。

 そこにはいかにもさっきまで人がいたと言わんばかりに、焚火や食べ残した跡が残っていた。


「司令長官、これは…」

「何者かがここにいた証拠だ。だが、何かを察知してここを撤退したのかもしれない」


 俺は少し嫌な予感がする。


「とりあえず深追いだけはやめておこう。何かあったときに本隊の支援が受けられなくなる」

「了解です」

「幸い、チハが作ってくれた道はある。帰りは少し楽だな」


 その瞬間である。

 周辺に発砲音が響き渡った。

 俺は思わず叫んだ。


「敵襲ー!」


 全員がその場に伏せる。


「銃か!?どこからだ!?」

「司令長官!あちらのほうから硝煙の匂いがします!」


 犬型の亜人が指を差す。


「総員チハの影に隠れろ!」


 俺は指を差した方向から見えないように、チハの影に隠れる。

 他の亜人たちも俺のそばによって来た。


「チハ!攻撃方向に向かって射撃!照準はおおざっぱで良し!」


 俺はチハの中にいる隊員に向かって叫ぶ。

 それを聞いて、チハの砲塔がそちらに向かって旋回を始めた。

 すると、再び発砲音が響く。

 チハの装甲に当たったのか、数発甲高い音がする。

 しかし、相手の銃は威力がないのか、チハの車体には凹みすらついていない。

 その間にも、チハの砲塔は旋回を終え、発砲音のした方向を向いていた。

 そして射撃する。

 まったく分からない状態での射撃だったが、どうやら効果はあったらしく悲鳴にも似た叫び声が聞こえてきた。

 俺はチハの車体の影から、その方向の様子をうかがう。

 しばしの沈黙の後、雄たけびが聞こえてくる。

 そして、森の奥の方から複数の人間が小銃を構えて突撃してきた。

 俺は叫ぶ。


「総員、射撃開始!」


 俺は連合艦隊標準装備の45式小銃を人間のほうに向ける。

 亜人たちも小銃を構えて弾丸を連発していた。

 さすがにその弾幕には勝てなかったのか、次々と人間は倒れていく。

 弾丸を撃ち切ったところで、突撃してきた人間は全員地に伏せていた。

 亜人たちに射撃をやめるように指示を出す。

 弾倉を入れ替え、俺は再び様子を伺う。


「もう、突撃してくる奴はいないよな…?」


 そんなことをつぶやいた瞬間、奥のほうから何かが来る音が聞こえてくる。

 俺は思わず、単発で弾丸を発射した。

 それは見当違いな方向に飛んで行ったが、自分の所に撃ってきたと思ったのか、声が聞こえてくる。


「う、撃たないでくれ!」


 それは、命の危機に瀕した際に発せられるような声だった。

 それを聞いた俺は、話が出来るチャンスと捉える。


「総員小銃構え。別命あるまで待機」


 そういって、俺は小銃を構えたままチハの影から出る。

 俺は森の奥の方に小銃を構えながら、ゆっくりと歩いていく。

 そして茂みの数歩手前のところまで来た所で、俺は声をかけた。


「そこにいる者。武器を捨て、手を上げてゆっくりとこっちに来い」


 そういうと、ガチャガチャと音がなったあと、何かが地面に落ちる音がした。

 そして茂みの中を何かが近づいてくる。

 そこには、成人男性が3人いた。


「た、頼む…。命だけは…」


 3人のうちの1人である、ふくよかで服の装飾が少し豪華な男性が命乞いをしていた。

 2人のうち、シュッとした簡素な服装をした男性は何かを覚悟したような顔をしており、もう一人の男性はふくよかな男性と同じような恰好をしている。

 そんな3人を俺は、捕虜として捕まえることにした。

 捨てた武器も拾って、俺たちは一度北部前線司令部のほうに戻る。

 司令部では、俺が捕まえてきた捕虜を物珍しそうに眺めていた。

 誰が言うわけでもなく、彼らはバンイ帝国陸軍の関係者であるからだ。

 それと同時に、司令部では一種の緊張感が漂っていた。

 それは、司令部の近くにまでバンイ帝国陸軍の部隊が迫っていたことにある。

 もし、陸軍が大挙して来られたら、後方の崩壊を招く。

 そしてそれは、前線を走る攻撃部隊も同時に崩壊することを意味していた。

 そんな独特な緊張感の中、3人には十分な拘束をさせてもらって尋問を始める。


「えー。じゃあ、まず名前と階級を教えてください」

「私はバンイ帝国陸軍中将のドンロー・モランド、陸軍第13軍の司令官だ」


 ふくよかな男性であるモランドは、少し弱弱しく答える。


「じゃあ次、あなたは?」

「私は陸軍第13軍所属歩兵第34連隊長のヨード・ロンス大佐だ」


 シュッとした男性であるロンスは俺たちのことを気にすることなく堂々と答える。


「じゃあ、最後。あなたは?」

「…私はバンイ帝国帝王のアトラスである」


 その瞬間、司令部全体が騒めきだす。

 バンイ帝国の帝王ということは、この国の君主、すなわち国家元首であるということだ。


「…えーと、それは本当ですか?」

「本当だ」

「あー…。では、帝王陛下であると証明出来るものは何か持っていますか?」

「それは先ほど武器を捨てるように言われた場所に置いてきた」

「それなら先ほど拾ってきてますね」


 俺は隊員に指示して、拾ったものを持ってくるように指示する。

 その中で、マントに包まれた棒状のものを指定した。


「これが私が帝王であることを示すものである」


 俺はそれを受け取ると、慎重に包んでいるマントを広げる。

 そこには、豪華な装飾に飾られた剣が存在した。


「これがバンイ帝国で唯一のレガリアである『フロウガードの剣』だ」


 そう紹介された剣からは、ものすごい魔力を感じる。

 おそらく本物なのだろう。

 一応北部前線司令部の大将にも見てもらう。


「一度戴冠式で見たことがあるが、確かにこのような剣を持っていたな」


 おそらく本物だろう。


「それで、結局あなた方はどうしてあんな場所にいたんですか?」

「そ、それはだな…」


 モランドは少し言葉に詰まったが、絞りだすように言葉を話す。


「わ、我々は防衛連盟に亡命を希望する…!」

「…亡命?」


 俺は思わず聞き返してしまった。


「そうだ。我々はバンイ帝国から離れ、防衛連盟のいずれかの国家に亡命を希望する」


 繰り返すように、ロンスが言った。

 何度も言わなくても分かるよ。

 しかし急に亡命と言われても、何をどうしたらいいんだか分からない。

 とりあえず保護したらいいのか?


「ん?そうなると、今の首都にはこの戦争を止めるための人間がいないってことか?」

「そういうことになる」


 それじゃあ今前線で走っている騎兵隊を呼び止めないと、これまでの努力が無駄になる。

 とにかく俺は前線にいる2つの部隊に進軍を止めるように指示を出す。


「それに重要な情報も持っている」


 そう帝王陛下が切り出す。


「それが防衛連盟に有益な情報であるかはこちらで判断しますけどね」

「いや、これは確実に重要だ」


 なぜか帝王陛下は言い切る。


「まぁ、いいでしょう。言ってみてください」

「この戦争の首謀者はクレイル連邦だ。バンイ帝国ではない」


 この情報に俺は耳を疑う。

 これまで防衛連盟の内部では、バンイ帝国がこの戦争を主導しているというのが主流の考えであった。

 それがものの見事にひっくり返されたのだ。


「それを詳しく教えてください」

「無論だ」


 そういって帝王陛下は切り出した。

本作を読んでいただきありがとうございます。もしよろしければ下にある評価ポイントを入れてくれると助かります。

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次回も読んでいってください。

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