87海里目 続く準備
あれから俺は筐体を使って、いくつか検索をする。
その中でも、特に小銃などの銃火器の充実を優先した。
亜人に共通しているのは、人間に近い外見と人間の手に近い前腕、そして比較的人間に近いサイズ感である。
もちろん、種族差や個体差もあるので一概には言えないのだが、それぞれに似合う銃を用意するつもりだ。
亜人の中には小さい種族もいるようなので、彼らには別の任務を課すつもりである。
そんなことを数日続けていると、テラル島に建設業者がやってきた。
今回はなんとも早い到着だ。
早速彼らには作業に入ってもらうことにした。
今回の建築は、亜人のための建設だから少し勝手が違う所もあるかもしれない。そこは臨機応変に対応してもらうことにした。
そんな中、俺は亜人たちに協力を要請する。
要請と言っても、簡単な身体検査だ。
先に言った通り、亜人は種族別に個体差が生じている。そのため、それぞれの種族で使える銃火器も変化してくるわけだ。
早速俺は未だ艦の中に留まっている亜人たちを呼んで来る。
「身体測定か。まぁ、よかろう」
そう言ってくれたのは、ケンタウロスの姿をしたフォーヤクだ。
正直フォーヤクは体高が大きく、2mを超える。それに合わせて全長も3m以上あるのだ。
そしてその体に見合うような隆々とした筋肉を持ち合わせている。
俺は銃火器を選択するために、いくつか質問する。
「フォーヤクは亜人解放機構に?」
「そうだ。オーウェンのもと、共にバンイ帝国と戦っていた」
「その時に使っていた武器っていうのは何かわかりますか?」
「いや。よくは憶えてないんだが、とにかくオーウェンと比べたらデカい銃だった」
オーウェンと比べて大きい銃となると、俺と比較してもある程度大きいということだろう。
もしかしたら対戦車ライフルなどでちょうどいいかもしれない。
そういうわけで「対戦車ライフル」を検索にかけて、いいものがないか探す。
その中でも、ボーイズ対戦車ライフルというものが目に留まる。
早速構築してみる。
なかなか巨大な銃だ。しかもずっしりと重い。
それをフォーヤクに渡してみると、軽々と持ってみせた。
「ふむ。少し持ち手部分が小さいようにも思うが、ちょうどよさそうだな」
「使い勝手は良さそうですか?」
「そうだな、実際に使ってみないと分からないが、ひとまずの問題はなさそうだ」
実際に使ってみないと分からないとのことから、俺は射撃場に連れていく。
「あの的に向かって撃ってみてください」
「了解した」
そういってフォーヤクはライフルを構えた。
両手で構えたフォーヤクは弾を装填すると、狙いを定める。
そして射撃する。
耳をつんざくような発砲音のあと、的の置いてある土嚢のところで土煙が上がった。
「…どうですか?」
「うむ、ちょうどいい感じだ。持ち手のところが持ちにくいが、それ以外であれば問題はない」
「それは良かった」
ケンタウロス属の主力武器はこれで問題はなさそうだ。
あとは弾薬や食料の運搬も兼任してもらえれば、生身の輸送隊の出来上がりである。
こんな調子で、ほかの種族の武器も選択していく。
人間と同じ身長と手を持つ亜人には、扱いやすいAK-47を与える。
人間より小さい種族に対しては、前線に出るのではなく補給や後方支援に回ってもらう。
こうして亜人たちに対して適切と考える装備を渡していく。
それと平行して、亜人たちに対して連合艦隊陸戦隊への志願を開始する。
「これで実際に何人来てくれるか…」
事前のアンケートではほとんどが参加を表明していたものの、実際にはどうなのか分からない。
期限を設けて様子を観察することにした。
その間に、俺は各国で建造が行われている一型タンカーと大発の様子を聞く。
「各国の建造の様子はどうですか?」
「まずは、すべての一型タンカーの進水は完了したようだ。これから急ピッチで艤装の工事が行われることだろう」
「大発の製造も順調に進んでいるようです。今月中にはすべての目標建造数を達成できると推定されます」
「大発は予備も建造してもらうため、しばらくは終わりそうにないですね」
「まぁ、仕方ないとも言えるがな」
「後は大発を用いて、うまく陸軍が上陸できるかが鍵になるでしょう」
「そろそろ訓練を行っておくべき時期か」
「そうですね。こちらで準備した大発を持って行きましょう」
今回のバンイ帝国上陸作戦では、陸軍の上陸を行う必要がある。
とは言っても簡単なものではあるが、橋頭堡の確保や素早い陣地確保の目的で訓練を積む必要がある。
そういうわけで、リクア共和国に続々を集結している各国陸軍に訓練を施すために、俺はリクア共和国に向かう。
各国陸軍とは言っても、陸軍を遠征させるほどの戦力を持っている国なんて、リクア共和国とレイグル王国、シドラール国ぐらいしかない。
そんな彼らに、俺が建造した一型タンカーと大発を持って、リクア共和国に向かった。
すでにリクア共和国のほうでは、各国が共同で訓練を行っているという情報を耳にしている。
それもそうだ。
各国では微妙に指揮系統に差があったり、今まであまり気にしてこなかった言語の違いなんかも存在したりする。
そんなリクア共和国での訓練をしている所に、俺がお邪魔する感じだ。
ってお邪魔って何だろう。必要な訓練ではあるからお邪魔ではないよな。
そんなこんなで、リクア共和国に到着する。
防衛連盟陸軍連合部隊は、リクア共和国の海岸線で上陸後の動きや前線基地の構築などの訓練を行っていた。
俺は陸軍連合部隊の指揮官たちに面会する。
「私が今回の上陸作戦の統合元帥に任命されたディラン・エルフォードだ。よろしく頼む」
「連合艦隊の海原駆です。よろしくお願いします」
早速俺はエルフォード統合元帥から上陸作戦の概要について聞かされる。
「今回の上陸作戦は『砂上の突風』作戦と呼称する。『砂上の突風』作戦は、至極単純な作戦目標を持っている。バンイ帝国に上陸の後、バンイ帝国の首都まで突っ切るというものだ。『砂上の突風』作戦に参加する部隊は頑張ってかき集めたものの、4個師団25000名程度が限界だった。さて、今回の目標は首都であるため、橋頭堡を簡単に構築したらそのままの勢いで突っ走るのだ」
エルフォード統合元帥は地図上の駒を動かす。
その動きに俺は一つの疑問を投げかける。
「前線は縦に伸びきってしまうようになりますがいいんですか?」
そう、駒は戦線を平行に押すようにではなく、一点に集中するように移動していたからだ。
それはまるでへたくそな電撃戦のようにも見える。
「構わない。先も述べたように、今回の作戦目標はバンイ帝国の首都である。よって補給線が続く限り進撃を続けるさ」
この瞬間、俺は思った。
この作戦は失敗すると。
しかし、そんな状況であっても、俺は彼らのことを全面的にバックアップし、作戦の成功に導かなくてはならないのだ。
いや、もしかしたら何か考えがあるのかもしれない。しかし、そうでなかった場合、この作戦は確実に頓挫する。
そんな中、一つの考えを思いつく。
それは連合艦隊陸戦隊を機甲師団化して進軍する陸軍連合部隊の後方支援に充てるのだ。
絶対的な数が足りていないものの、無いよりかはマシだろう。
「簡単な説明は以上だ。ほかに何か質問はあるか?」
「えぇと、仮の話なんですが、先行する連合部隊に付随する形で我々連合艦隊陸戦隊を一緒に行動させるのはどうですかね?」
「心配には及ばん。我々にはそれ相応の部隊がついている。君たちは橋頭堡の安全確保にでも勤めていてくれたまえ」
なんだか嫌な予感がするなぁ。
そんな事はつゆ知らずに、エルフォード統合元帥は揚陸訓練の準備に取り掛かるように指示を出した。
仕方なく、俺も訓練の準備をする。
こうして、約1週間の間訓練が続けられることとなった。
本作を読んでいただきありがとうございます。もしよろしければ下にある評価ポイントを入れてくれると助かります。
また、感想やレビューを書いてもらえると作者の励みになります。
次回も読んでいってください。




