85海里目 移動する亜人
早速武器庫を連合艦隊の艦船、「長門」に移動させようという話になったのだが、この武器庫が無茶苦茶重い。
特に外壁になっている部分は鉄筋コンクリートになっているため、重量がかさばる原因になっている。
これを移動させる方法がまったく思いつかないため、仕方なく俺が持ち上げて移動させることになった。
「そうだ、出発はしばらく待っていてくれないか?」
「その理由は?」
「我々亜人解放機構や共同で戦線を張っている集団はここの周辺を守るようにいる。その数は少なくないのだが、それも防衛連盟の一員として迎え入れてほしい」
「それなら、トグラン国に残っている武力革命戦線も招集してほしいところだな。少数だが、陸上に残っているメンバーもいる」
「それはすぐに連絡がとれる?」
「あぁ、基本的にはな」
「じゃあすぐに連絡を。一応作戦遂行中だからな。予定通りにいかないと本部が心配する」
「わかった。明日の昼に集合するように連絡しよう」
そういってオーウェンはどこかに向かった。
それを見送った俺は、ふとした疑問をシクスに尋ねる。
「そういや、ヴァンガード号ってどこで建造していたんだ?」
「それは、あっちの方に秘密の港があって、そこに資材やらロケット砲やらを運んでいったんだよ」
「そんな所があったのか…」
「まぁ、天然の洞窟を改造した隠し埠頭みたいなものだからな」
「うーん、そっちのほうに武器庫持っていこうと思ったけど、そういうわけにはいかないか」
「そうだな。秘密の港の方が近いが、こんだけ巨大なものを通すだけの広さはねぇな」
「仕方ない。今来た道を戻ってバンイ帝国の港に乗せるしかないな」
早速俺は連合艦隊司令部に連絡を取り、事の経緯を説明する。
現在、一番大きい艦である「長門」の後部甲板に武器庫を乗せることになった。
連絡を取ったあと、俺は次の作業に移る。
武器庫の移動を容易にするための作業だ。
それは、武器庫全体に上向きのベクトルをかけることである。
こうすることで、いくらか重量を無視することができる。
特に「長門」に搭載する際に、甲板を壊す心配もあるからな。念のための保険だ。
とりあえず、この日は亜人解放機構の拠点で一夜を過ごすことにした。
武器庫から寝袋を構築し、それを隊員に配る。
あとは武器庫から離れない場所で各々が勝手に寝てくれればいい。
俺は寝るまでの間、武器庫の中を探索する。
オーウェンからは、内装を壊すようなことをしなければ触ってもいいという許可を得ている。どうも内部は保存しているらしい。
中はアメリカナイズな空間だ。もともとアメリカ人がいたからだろうか。
ある場所は保存食が置いてあったり、武器が置いてあったりとなかなか豊かな装飾をしている。
また、リビングと思われる建物上部のところには、家族の写真が置いてあった。
「この世界に来た人も、家族がいたんだろうな…」
そんなことを考えていると、なんだかしんみりとした気分になった。
そのあとは建物の屋上部分に出て、星を眺めたりと自由気ままな時間を過ごす。
こうして翌日の朝、集合時間が近づいてくると亜人たちがぞろぞろと集まってくる。
武器庫の周辺を取り囲むように、何十人、何百人もの集団が取り囲んでいた。
「多くないか…?」
俺は武器庫の屋上部分から下の方を眺める。
「亜人解放機構や武力革命戦線、その他多数の共同体が存在しているわけだからな。全体の数は把握してはいないが、おそらく1000は超えるんじゃないか?」
「1000…」
そんだけの亜人を収容できるような場所あったっけな…。
とにかく、わらわらと集まった亜人を前に、俺は簡単な説明をする。
「我々防衛連盟は、あなたたちを防衛連盟の一員として迎え入れます。その代わり、私が指揮する部隊、連合艦隊における陸上攻撃部隊の隊員として働いてもらいます。これは決定事項であり、それに反対するものはここに残っていてください。5分後に出発します」
そういって俺は時計を見る。
一部の亜人たちはざわざわしているが、ほとんどの亜人は覚悟を決めているようだ。
時間になり、俺たちはシクスを先頭に連合艦隊隊員、亜人解放機構、その後ろに亜人という順番に移動していく。
俺は一番後ろで武器庫を移動させる準備をする。
こうしてほんの数人の亜人を残して武器庫の前を去っていく。
それを見届けた俺は、武器庫の前に立つ。
「よっしゃ、行くか」
俺は武器庫を持ち上げるように、淵に手をかける。
その瞬間に能力を使う。
武器庫の重量と同じ上向きのベクトルになるように、武器庫全体に能力をかける。
すると、武器庫は見かけの重量が0になる。
この状態で能力を使ってベクトルを変更させると、武器庫を自在に動かすことができるのだ。
俺は武器庫を持ち上げた状態で飛んでいく。
そのまま前を行く隊列を通り過ぎ、一足先にバンイ帝国の港に到着する。
港では、連絡を受けた連合艦隊の隊員と艦が俺たちのことを待っていた。
「やっと戻ってきたな。しかもトンでもないお土産付きで」
「いやぁ、お手数おかけします」
「まぁいい。まずは武器庫を『ナガト』に載せてきてくれ」
「了解です」
俺は再び武器庫を持って飛び上がり、沖合に浮かんでいる長門に武器庫を載せに行く。
場所は後部甲板でいいか。
艦尾周辺にある機銃などを片付け、そこに武器庫を置く。
そして念のために、動かないように頑丈なワイヤーで武器庫全体を動かないように固定する。
あとは武器庫全体の重量を軽くしておくだけだ。一応虚構重量は3tもないくらいである。
そんな作業を終えて戻ってくると、港には続々と亜人たちが集結していた。
亜人たちには、何十人かに分かれてカッターに乗せる。
そしてカッターの所属する艦船に乗ってもらうのだ。
吹雪型と軽巡を中心に乗ってもらうつもりでいる。
ていうか、1000人もの亜人がいるなんて聞いてなかったから、急遽分散させて乗せることになったんだが。スペース足りるかなぁ。
そんなことを考えつつも、俺は分散して搭乗する亜人たちの手伝いをする。
吹雪型各艦にはだいたい50人程度、軽巡洋艦にはそれぞれ100人程度搭乗させた。
この搭乗作業を日が暮れるまで続け、どうにかして全員を収容することに成功する。
こうして夜間であるものの、連合艦隊は旧トグラン国領土を出発した。
「収容した亜人の人数の集計が出た。合計で1236名だそうだ」
俺は長門の艦橋でこの報告を受ける。
「1000人を超えるとは聞いていましたが、1200人もいるとは、まさに一大勢力っていったところですね」
「ところで、この亜人たちはどうするつもりなんだ?」
「昨日の通信でも連絡したと思うんですが、基本的には彼らのことを徴兵して陸戦隊を結成したいと考えています」
「基本的ということは、例外もあるということか?」
「徴兵というよりは志願制にしたいとは考えてますが」
「まぁ、いいんじゃないか」
「仮に半分の600人が志願したとなると、大隊程度の陸戦隊になりますね」
「それほどあるなら、戦力としては十分だな」
「あとで編成を考えないとな」
「それはそうと、1200人もの亜人を収容する場所は考えているのか?」
「…あ」
そんな話をしながら、連合艦隊は一路テラル島へと帰還する。
テラル島に帰還したら、まずは島の拡張から着手しないとな。
ちなみに、帰還途中の艦内で簡単なアンケートを実施したところ、ほとんどの亜人が陸戦隊に参加したいと表明した。
正直これには驚いた。これは愛国的な精神から来ているのか、ただ単に血気盛んなだけなのか。
とにかく、今後の方針の参考にはなった。
そんな感じで俺は今後の方針を考えていく。
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