84海里目 確保と協力
さらに歩くこと十分ほどだろうか。
先頭を行くオーウェンに遅れを取るまいと、俺たちは必死に後をついていく。
てか歩くの早いな。ここ森の中だぞ。
そんなことを考えていると、いきなり広いところに出た。
まるでそこだけ作られたような、広い空間だ。
そこには、多種多様な亜人が各々の武器を手入れしていたり、食事を取っていたり、はたまた何か相談していたり様々だ。
そしてそこの中央には、巨大な倉庫のようなものが鎮座していた。
「あの中央にある建物が貴様らの求めている武器庫だ」
「あれが…」
倉庫といっても、これがなかなか頑丈な作りをしている建物で、それはまるで要塞に近い感じを思わせる。
オーウェンは武器庫に近づいていく。
俺たちも後を追うように付いていくが、周囲の目が異様に自分たちに降り注いでいる感じがする。
建物は、ちょうど一辺の長さが15~20mくらいある立方体のような形をしている。正面には壁面より一回り小さいくらいの重厚なシャッターのようなものが備わっている。屋根の方には何かのでっぱりのようなものがあるが、その役割は知る由もない。
「こっちだ」
オーウェンはシャッターの横にある、いかにも手作り感満載の扉を開ける。
どうやらそこから中に入れるようだ。
中に入ると、そこはまるでガレージのような内装をしていた。
隅の方には階段があり、上の方に向かえばまるで住居のような場所に出る。
「何だこりゃ…」
俺は唖然としてしまう。
一見しただけで、少し手入れをしてしまえばここに住むことが出来そうな感じだったからだ。
そこで後ろに付いていたシクスが口を開く。
「驚いただろ?おそらくこれはプレッパーの地下要塞だ」
「プレッパー?」
「あぁ。かつてのアメリカじゃあ、世界の終末が訪れた時に自力で生き延びるのを前提に準備していた人のことをいう」
「聞いたことあるな」
「その連中のうちの一人この世界に来た時に自分で作ったのか、はたまた元の世界から持ってきたのかは知らないが、こういうのを求めていたんだろうな」
「これを所持していたのは流浪者のようで、確か生存者とか名乗っていたな」
そこに黙って付いてきたオーウェンが簡単に説明を入れる。
確かに内装などを見てみると、アメリカンチックなものだったり、実際に英語で書かれているものがあったりと、その鱗片を感じるものは多々ある。
オーウェンが下の階に戻るように促す。
ガレージのような場所には何もなかったが、これが武器庫になるのだろうか?
「貴様、今ここが本当に武器庫なのかって考えているな?」
どうやらオーウェンには見破られているようだ。
そんなのはどうでもいいと言いたげな顔をして、オーウェンは階段とは逆にある部屋の隅へと行く。
シャッターのすぐそばにある人の胸程度の高さがある筐体のようなものがあった。
その筐体に設置されているパネルを操作する。
「危ないから部屋の中心から離れておけ」
オーウェンは俺たちに注意する。
さらに何か操作すると、ブーンと低い機械音のようなものがガレージに響き渡った。
すると、部屋の中心で立体的なホログラムのようなものが表示され始める。
そしてそのホログラムに沿って、下から順に何かが構築される。
しばらくして構築が完了すると、機械音のようなものはおさまった。
そこに構築されたのは、木箱である。
オーウェンが木箱の蓋を開けると、そこには弾丸がみっちりと入っていた。
「これは我々が使用している弾丸だ」
「これが武器庫と呼ばれる所以だな」
オーウェンに同調するように、シクスが言う。
武器や弾薬を召喚、もとい構築しているから武器庫というのか。
「ん?じゃあ多連装ロケット砲もここで構築したってわけ?」
「そういうことになるな」
とんでもないな、武器庫。
その時、俺は一つの可能性を見出す。
「となると、あの筐体に登録されている武器ならなんでも出すことができるってことか?」
「鋭いな。正解だ」
俺は筐体の前に立ってみる。
筐体のパネルには、英語でいろいろ書かれていた。
「英語、読めねぇなぁ…」
この世界の言語なら現在進行形で使用しているためある程度ならわかるのだが、英語はしばらくの間まったくやっていなかったため全然覚えていない。
「どうした?英語わからないのか?」
「まぁ、恥ずかしいことにね」
「気にすることはねぇ。これは専門用語が大量に使われているから分からなくて当然だ。ここに言語変更のボタンがあるから押してみろ」
シクスが指差す所に、「Language」と書かれたボタンがあった。
それを押すと、様々な言語の一覧が表示される。
その中に「日本語」と書かれた文字があった。
俺はそれを押す。
すると、パネルにある言語が日本語になった。
「これで分かりやすくなっただろ」
シクスの言葉など気にすることもなく、俺は検索欄から武器になるものを検索する。
俺がまず検索したのは「戦車」であった。
すると一覧に、多種多様な戦車の一覧が表示される。
そこには、イギリスのマークⅠ戦車から日本の10式戦車まで存在していた。
さらには知らない主力戦車まで羅列されている。
「どうだ?すごいだろ」
後ろからシクスが尋ねてくる。
「確かにすごい…。これなら陸戦隊構想も叶いそうだ」
ほかにもいろんな武器の単語を検索欄に入力し、検索にかけてみる。
小銃や迫撃砲、対戦車砲なんかも検索してみた。
どれも検索に出ることを理解する。
俺は気まぐれで「艦艇」と検索してみた。
しかし結果は、これまでの検索結果に比べてかなり少なく表示されている。
疑問に思ったが、後ろから様子をうかがっていたオーウェンが答えを言う。
「武器庫はこの空間に入るものなら召喚出来るのだが、逆に言えばここに入らないものは召喚出来ないことが経験則で判明している」
つまりこのガレージに入る程度の、それこそ小型ボート程度の大きさでないと構築することが出来ないということだろう。
なるほど、それならこの一覧の少なさにも納得が行く。
「それで、これからどうするんだ?」
俺はシクスに聞かれる。
「俺としては、武器庫を確保して防衛連盟に持ち帰りたいと考えている」
「個人的には問題ないのだが、それを亜人解放機構のメンバーが了承するとは思えないのだがな」
俺の提案に、オーウェンが反論する。
その言葉に、俺は考え込んでしまう。
「確かにな。血気盛んな奴らが多いもんな」
シクスがそれに同意する。
とにかくここは一つ、説得を試みるしかないだろうな。
早速オーウェンが亜人解放戦線の人々を集めて、説明の場を設けてくれた。
「それでオーウェンよ、一体何事であるか」
集まってきた亜人がオーウェンに尋ねる。
しかし、こうしてみるといろんなタイプの亜人がいるものだな。
どちらかというと、神話や伝説に名を残すようなタイプの、人間の姿とはかけ離れた姿の亜人が多い印象である。
「集まってもらったのはほかでもない。この防衛連盟の指揮官から要請があった」
オーウェンは語りかけるように、亜人たちに話し始める。
「これまで我々は、バンイ帝国および帝国と同盟を組んでいるクレイル連邦から多大なる攻撃を受けた。我々はそれを武器庫と、戦場に散った仲間と共に退け続けた。しかしそれも今日で終わりとなる。今、武器庫の所有を我々から防衛連盟に移し、我々は防衛連盟の一員として戦うことになるのだ」
その言葉に、亜人解放機構のメンバーはざわざわしだす。
「それは本当か?」
「防衛連盟が味方になるのは大きい」
「だが、それも罠なのでは?」
「しかし、これを逃せば我々の立場も危ういことになるだろう」
賛否両論である。
しばしの討論の後、話の内容は防衛連盟と合流する方向に動いていく。
「分かった。我々は――」
「待て」
総意が取れると思った所で、一人の亜人が声をあげる。
「どうした?」
「我は反対だ。それは権力に屈服する上に、同胞たちに顔向けできるというのか?」
「それは違う。我々は権力に屈服するのではなく、協力するというのだ」
「いまいち信じられんな。それに、そこの指揮官はひ弱に見える」
一人が騒ぎ出したことで、反対の声は次第に大きくなっていった。
オーウェンが止めに入るものの、声は勢いを増していく。
まぁ、こうなることは予想できていた。
俺は体内にある魔力を自身の周りに収集する。
そして高まった魔力を周辺に向かって一気に拡散させた。
その魔力は、亜人解放機構のメンバーがいる場所全体に広がる。
それと同時に亜人は感じ取ることが出来るだろう。
自分たちよりもはるかに高い魔力が、俺一人から放出されたことに。
亜人たちは本能的に察知する。
逆らってはいけないと。
俺が魔力を拡散させた瞬間から、誰一人として何もしゃべらなかった。
「…何か問題でもありますか?」
俺は朗らかにそう聞く。
「…べ、別に防衛連盟に合流してもいいよな」
誰かがそうつぶやいた。
「そうだ、それで問題ない」
「あの指揮官ならうまくやってくれることだろう」
そんな声が覆いつくす。
かくして連合艦隊は亜人解放機構と協力体制に入ることが出来たのだった。
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