82海里目 行う尋問
「人間じゃないだと?」
俺の報告に、まるで理解が追いつかないような言動を取るトーラス補佐官。
そりゃ誰だって目の前にいる人間が人間じゃないのなら、そういう反応をするだろう。俺だってそうなる。
しかし、現に「そういうこと」が発生してしまっているのだから仕方がないだろう。
「はっ、今頃気が付いたのか」
シクスはまるであざ笑うかのように、俺たちの方を見て言った。
それに反応せず、俺はトーラス補佐官のほうを見たまま続ける。
「今、俺の能力で彼の体の組成を調べました。すると、人間の体内には微量しかない鉄分やアルミニウムの量がkg単位で存在しているんです。これだけの鉄の量が体内にあったとすると、中毒になってあっという間に体調不良になっていてもおかしくないはずです」
「しかし鉄やアルミなら、体内の骨の補強で使うとか聞いたことあるのだが…」
「それなら金属が体内の局所に存在していないといけないでしょう。しかし、彼の体内には金属が全身くまなく偏在しているんです。それに、体内に埋められるインプラント用の金属はチタン合金などが一般的に用いられています」
「そうなのか…」
そんな情報を交わしていると、またシクスがうるさく騒ぎ出す。
「お前ら!いつまで俺をこうしているつもりだ!」
それにうんざりしながらも、俺はシクスに疑問を投げかける。
「シクス。ここからは正直に答えてくれ」
「はっ、誰が答えるかよ」
反抗的な態度を取ったシクスに、俺はこん棒を生成する。
そして、俺はそのこん棒をシクスの足に思いっきりぶつけた。
「いっで!」
「いいか、これは質問だ。君は質問に答えなければならない義務が生じているんだ」
「おい!今の拷問に当たるんじゃないのか!」
「トーラス補佐官、捕虜の扱いはどうなんでしたっけ?」
「あくまでも人道的に、だ」
「それに、ハーグ陸戦条約には拷問に関しては規定されてないと思ったんだがな」
「それは十分古いものだろ!現行法として国際人道法を適用しろ!」
「ここは異世界だし、異世界で施行されている法律に則るのが常識だと思うんだが?」
「…ぐ」
シクスは押し黙る。
「じゃあ、質問する。お前は一体何者だ?」
俺の質問に視線を逸らしたあと、つぶやくように言う。
「…人工知能搭載人類完全模倣型自己自律式直立二足歩行ロボット、通称アバターだ」
ロボット。
その言葉を聞いたとき、俺はやはりという感覚を覚えた。
「人工…なんだって?」
トーラス補佐官が聞き返す。
「その名称は長いから、通称のアバターだけでいい。俺はそれの第七世代の分類に入る」
「第七世代…。ずいぶんと世代が重なっているんだな」
「それだけAIとしてのレベルが高いというわけだ」
「さっき体内を調べさせてもらったときに、内臓や骨格まで再現しているようだったけど、それは何か理由でも?」
「特に意味はない。もともと俺たちの製造コンセプトが『人類のコピー』なんだからよ」
「それにしてみれば、人類のコピーと言うか、人間の言動そのもののようだな…」
「当たり前だろ?俺はAIレベルが仲間の中でもずば抜けて高かったんだからな」
「この船はどこから手に入れた?」
「ヴァンガード号だ。ヴァンガード号は俺が一から作り上げた。造船の経験はなかったが、知識で何とかなった部分も多いがな」
「そういえば、シクスの流浪者としての能力って一体なんだ?」
「それまで言わないといけないのか?」
そんな質疑応答をやっていると、どこからともなくフラッとアルトさんがやってくる。
「あ、アルトさん」
「こいつが例の流浪者か」
アルトさんがシクスのことをじろじろ見る。
「な、なんだこいつ…」
「んー…?あぁ、思い出した」
アルトさんは何か思い出したように、手を叩いた。
「全身機械で出来たロボットのシクス、能力は革命家だったな」
「革命家?なんだか不穏な能力ですが、一体どんな能力なんです?」
「確か、この能力の影響下に入った生命体は彼のことを熱狂的に崇拝するようになり、彼から言われた指示をこなすようになる能力だったな」
「お前そこまでバラすのかよ」
アルトさんの解説に、シクスが食って掛かる。
革命家の能力、確かに恐ろしいような能力であるが、これは逆に言えば使えるかも知れない。
「シクス」
「あ?なんだ?」
アルトさんとの言い合いを止め、俺はシクスのもとに座り込む。
「折り入って頼みたいことがある」
「なんだよ。単刀直入に言ってくれ」
「分かった。シクス、連合艦隊に来てくれないか?」
その言葉に、トーラス補佐官が反応する。
「司令長官、それは本気で言っているのか?」
「もちろんです。シクスは曲がりなりにもこれだけの亜人を引っ張ってきた。それなら統率の取れた指揮官として適切なのではないかと思った次第です」
「しかしだな、一度は我々に攻撃をしてきた人物だぞ?」
「それでも有能な人物であることには変わりはありません。彼の能力を陸戦に応用すれば、必ず良い戦果を生み出してくれることでしょう」
しかし、とトーラス補佐官はブツブツと小言を言う。
俺は改めてシクスと向き合った。
「それで、どうする?」
「…お前は本当にそれでいいのか?」
「あぁ、別にかまわない。シクスはクレバイルとも防衛連盟とも違う第三の勢力だ。すなわち己の信念があってやっていることだろう。それを思い切り連合艦隊でやってみないか?」
「お前、俺のことどこまで知っているつもりだ?」
一瞬、シクスがキレそうになった。
しかし、一呼吸置いたところでシクスは語り始める。
「確かに、俺は俺の執念があってやっている。それは誰かに邪魔されて折れるようなものではない」
「なら、誰かと協力していけばいいじゃないか」
「…確かにそうかも知れないな」
シクスは静かに笑う。
「それに、俺が暴走したとしても、お前が簡単に抑えてくれそうだしな」
「確かに」
「よし、協力してやってもいいぜ。その代わり、いいポジションに就かせてくれよ」
「まぁ、そこは俺の頑張り次第だな」
そんな感じで、俺はシクスとの協力を行うことを約束したのだ。
俺はシクスに取り付けていた手枷と足枷を外す。
「しかし、機械が流浪者だと生命の線引きが曖昧になりそうな感じだな」
「俺はしっかりと生きてるぜ。そこに機械も人間も関係ない」
「いや、哲学的な意味でさ…」
「そこは世界の選択に疑問を投げかけることになるな」
「アルトさん」
「世界が彼を生命体と判断した。それなら彼は生命体、ひいては生物ということになるのだろう」
「なんか難しい話だな…」
そんな話をして、俺たちはヴァンガード号から引き上げる。
「…本当に撃沈してもいいのか?」
「あぁ、かまわない。元はと言えば、ハリボテのようなものだからな」
「それならそれでいいんだけど…」
そういって、俺は連合艦隊に指示を出す。
十分に距離を取ったあと、駆逐艦による雷撃攻撃を行う。
十数本に及ぶ魚雷が一直線にヴァンガード号に目掛けて進む。
そして魚雷は命中する。
ヴァンガード号は轟音とともに海底へと沈んでいった。
「しかし、もったいないなぁ」
「何がだ?」
「あの中には多連装ロケット砲とかあったじゃん?あれが使えれば陸戦でも結構使えたんだろうなぁ」
「それならあるぞ」
「…どこに?」
「トグラン国だ。あそこには近代から現代に至るまでの多種多様な火器が存在しているぞ」
「本当か?」
「嘘を言ってどうする」
もし、これが本当なら、今後の艦隊運用や陸戦隊構想に拍車がかかる。
「行ってみるか」
もともと旧トグラン国領土に向かうからな。ちょうどよかったとも言える。
「目標、旧トグラン国領土」
連合艦隊は旧トグラン国領土に向けて舵を切った。
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