81海里目 敵が現れる
狭い通路内部で、いくつかの発砲音が響き渡る。
船内では、獣人のほかにも多種多様な亜人が出てきた。ケモノ型獣人やドワーフのような見た目の亜人などである。
その誰もが拳銃やショットガンのようなものを所持していた。
「どうしてこんな先進的な武器を持っているんだ?」
俺の疑問は募るばかりである。
そんな感じで、俺は名状しがたいオーラのする方向へと歩みを進めていた。
とある通路を曲がったところで、俺はまた一人の亜人と遭遇する。
そこには、なんと機関銃のようなものを持っていた。
「おいマジかっ」
直後、俺に向かって機関銃の弾幕が襲ってくる。
俺は素早く通路の角に隠れた。
どうにか被弾は免れたようだ。
しかし、こうなってはどうしようもない。
しばらくこのまま待つことにした。
十数秒後、敵の弾薬が尽きたか、もしくは砲身が加熱したのか、弾幕が止んだ。
今だ。
この瞬間を逃さず、俺は通路を飛び出て亜人の方へ突っ込んでいく。
その時、俺はあるものを見る。
そこには二人目の亜人がいたのだ。
二人目の亜人は俺を視認すると一瞬驚いたが、直後に携帯していた拳銃をこちらに向けてきた。
「ウッソだろおいっ!」
俺は思わず魔力の壁を生成する。
直後弾丸が発射された。
弾丸は魔力の壁に衝突し、そのまま弾く。
俺は最高速度で突っ込んでいった。
そして思い切りジャンプする。
能力も駆使して通路の天井付近まで飛び上がった。
そのまま二人の亜人の上を通過すると、後ろの方へ着地する。
そして亜人に対して俺の大量の魔力を浴びせた。
こうすることで、彼ら自身の体内に存在する魔力と共鳴し、失神状態に陥らせることができるのだ。
こうして二人を無力化したところで、俺は彼らの持っていた銃を拾い上げた。
あの短時間ではブービートラップを仕掛ける暇もなかっただろう。
一応能力を使って変なものが仕掛けられてないか確認する。
どうやら杞憂だったようだ。
俺は詳しく機関銃を見てみる。
「なんだかAKのようだなぁ」
だけどもAK-47は自動小銃であり、機関銃ではない。よく似た別の何かであろう。
機関銃はその場に置いて、俺は先を急ぐ。
オーラを追っているうちに、俺は広い場所へ出た。
格納庫にも似た広い空間だ。
すると、そこに声が響き渡る。
「よく来たな侵入者」
「誰だ?」
俺は声の主に質問する。
「質問する前に、まずは自分の名前でも名乗ってみたらどうだ?」
広い空間の奥の方から、誰かが歩いてくる音が聞こえる。
俺はそちらの方へ体を向けた。
すると、奥から俺と同い年くらいの青年が出てくる。
「それが礼儀ってものだろ?」
まるで挑発するように、青年は言う。
「…海原駆、防衛連盟理事会直轄独立統合戦術機動部隊の司令長官だ」
「俺はこの船の船長であり、武力革命戦線のリーダーをしているシクスだ」
お互い挨拶のようなものを交わした。
そして、俺はシクスと言った青年の様子をうかがう。
シクスの手には、特に飛び道具の類いはない。
となると、彼の攻撃方法は体術か?
そんなことを考えていると、シクスのほうから何かつぶやくような声が聞こえてくる。
「なんでだ?なんで能力が効かない?それにこの寒気にも似た感覚、一体なんなんだ?」
どうやら俺以外の流浪者に会ったことがないようで、流浪者の能力が互いに干渉できないことも、オーラのことも知らないようだ。
これはチャンスなのでは?
そう思った俺は、床を思い切り蹴り飛ばし、そのままシクスのほうへと一気に近づいていく。
それに反応したシクスは、反射的に後方へと飛んで回避しようとする。
俺はそれを逃すまいと、さらに加速してその距離を縮めた。
手の届く範囲に収めたところで、俺は拳を突き出し、シクスの腹部にお見舞いしようとする。
だがシクスは、この拳をあっさりと手で防いだ。
俺はその手を払いのけるように外に振り払うと同時に、今度は逆の手で脇腹を狙った。
しかしこれも、まるで俺の拳に合わせるように防ぐ。
「ちぃ!」
この一連の流れを見て、俺は圧倒的な体術の差を感じ取った。
これでは俺のほうが分が悪いと感じたため、一旦距離を取って仕切りなおそうとする。
だがしかし。
「どこに行く気だ?」
今度はシクスの方から仕掛けてきた。
ほんのわずかな時間で俺との間合いを詰めると、目にもとまらぬ速さで拳を繰り出してくる。
俺は思わず、両腕と能力を使って顔と体をガードした。
直後、シクスから高速ラッシュが繰り出される。
このラッシュは正確なようで、俺の腕、鳩尾、脇腹に的確に拳を打ち込んできた。
おそらく能力がなかったら一発で倒れこんでいただろう。
どうにかしてこの状況を逃れなければ。
俺は自分の魔力を周辺一帯にまき散らす。それはさながら全周囲攻撃のようだ。
「なんだ!?」
異変を感じ取ったのか、シクスは思わず距離を取る。
しかし、俺の魔力はこの広い空間すべてに広まった。これから逃れることはできない。
そしてこの魔力は、俺にとってみれば手足のようなものだ。
すなわち、この空間にいる限りは俺から逃れることはできないということである。
俺は手を前に出し、そして何かをつかむような動作をする。
すると、シクスの首元に何かが巻き付くような感触があることだろう。
「な、ぐっ」
これは俺が魔力を操作して、シクスの首元に実感のある手のようなものを作り出しているに他ならない。
しかし、それは本物に近いものである。すなわち、シクスにとっては俺の手によって首を絞められているような感覚を覚えるはずだ。
「う、ぐ…」
シクスは首を圧迫している何かを外そうと必死になって手を首元にやるが、残念ながらそこには何もなく、ただ虚空があるだけだ。
シクスの首部分に手のへこみのようなものが現れる。俺の手をトレースしたものがシクスの首に現れているのだ。
シクスは必死になって首をひっかくよう動作をするが、自分の首に傷をつけるのみでまったく効果がない。
その状態でしばらくいるものだから、シクスは次第に体に力が入らなくなる。
そして最終的に腕がだらりと落ち、シクスは完全に気を失った。
俺はゆっくりとシクスを床に下ろし、横たわらせる。
「…とりあえず、手足でも縛るか」
俺は手枷と足枷と生成し、それをシクスへ装着する。
とりあえずほかの場所まで探索したい気分ではあるものの、この船を隅々まで一人で探索しているのは大変だから、応援を呼ぶことにした。
一回船外に出て、連合艦隊に知らせる。
不審船に連合艦隊の船が横付けすると、45式小銃を持った隊員たちを多数船内に解き放った。
隊員の必死の捜索の甲斐あって、船内の様子がだいぶ分かった。
どうやらあちこちに亜人が生活する船室があり、そこには機関銃や自動式拳銃、ショットガンが多数配置されていたらしい。
そしてどの亜人も敵対の意思はないとのこと。
その報告を受けた俺は、少し不思議に思う。
「亜人全員が敵対の意思がないって、さっきまでの攻撃はなんだったんだ?」
そう、シクスと出会うまでに対峙した亜人たちは、誰もが俺に対して敵対心をむき出しでいた。それがたった数時間でなくなるというのは、いささかおかしな話だ。
そのタイミングで、横たわっていたシクスが目を覚ます。
「お、おい!なんだこれ!?外せ!」
シクスは目を覚ますやいなや、枷を外すように要求してくる。
「ずいぶん眠っていたようだな、シクス…だったか」
「おい、お前!いいからこれを外せ!」
「貴様が黙って我々のいうことを聞いてくれれば、外してやらんこともないがな」
そばにいたトーラス補佐官が威圧的にシクスに対応する。
そんなシクスのことを見ていた俺はあることに気が付く。
あれだけ圧迫していた首元に、一切の痕跡が見られらなかったのだ。
普通ならうっ血の一つでもしていないとおかしいはずなのだが、それが見当たらない。
疑問に思った俺は、首周辺の様子を見るために首元に手をやり、能力を使って内部を見ようとした。
「おい!何するんだ!おい!」
シクスの言っていることを無視して、俺は能力を使う。
すると、衝撃的なことが判明する。
「なんだ…これ…」
俺はそのまま能力を駆使して全身を調べ上げる。
「どうした、司令長官?」
俺の様子に、トーラス補佐官が反応する。
全身を調べた俺は、ある事実をトーラス補佐官に告げた。
「こいつは…人間じゃありません」




