5海里目 発現
(あれ…。ここは…どこだ?)
真っ暗な空間に浮いているような感覚。
目の前には一筋の光が見えた。
(なんだか、臨死体験をしてるみたいだ)
しばらくの間、この奇妙な体験をしていた。
そして、ふと気がつくと、ただの点にしか見えなかった光が、ゆっくりと大きく、いや自分に向かって近付いてきていた。
やがてその光は、人のような影を伴うようになった。
『…海原駆よ』
声が聞こえた。
その声は、頭の内側から発しているようだった。
『覚醒の時は来た、創造主よ。森羅を操り、万象を創り出すのだ』
次の瞬間、俺の体は後ろ向きに引っ張られるように急に動き出した。
(うわあぁぁぁ!)
若干デジャブを感じたが、それでも勢いは衰えるどころか増していき、やがて人のような影も光も見えなくなった。
ゴンッ!
「ってぇぇぇ…」
背中打った…。
どうやら俺は、ベッドから転げ落ちたらしい。
窓の外を見ると、空は既に白み、明るくなっていた。
異世界でも、朝日は変わらないもんなんだなぁ。
そんな風に考えながら、今日夢で見た事を思い出していた。
創造主…か。
何かのお告げのようなモノなのだろうか?それならば、今後の生活に影響を与えるものなのか?
その答えは、ふと目を落とした先にあった。
少しすると、カイ君が朝食の時間だと呼びに来てくれたので、俺はダイニングに向かった。
「おはよう、カケル君」
「おはよう」
「おはようございます」
「朝から騒がしかったようだけど、何かあったのかい?」
「いやぁ、ベッドから盛大に落ちちゃいまして…」
「あら、そうだったの?突然大きな音がしたから心配したのよ」
「いやぁ、ホントすいません」
という四コマ漫画のオチが無いような会話をしたところで、俺は本題に入った。
「実は、ちょっと相談があるんですけど…」
そう言いながら、右手の甲を見せた。
それを見たリフレットさんとアスナさんは少し驚いた顔をした。
「これ、たぶん紋章ですよね…?」
「うむ…。これは確かに紋章じゃな」
朝食の後、俺とリフレットさんは島長さんの家に来ていた。今朝もサラの機嫌が悪かったのは言うまでもない。
「話を聞く限りでは、その創造主とやらは、おそらく『オリジナル』に分類される『力』じゃろう」
「『オリジナル』…ですか?」
「そうじゃ。流浪者の『力』を大まかに2つに分けた時の名称なんじゃが…。詳しく話すと時間が無くなってしまうから今回は省くが、要するに『広く浅く』というのが『オリジナル』の特長なんじゃ」
逆に『狭く深く』『型にはまった力』というのが、ある程度分類されているらしい。剣術や弓術に長けた『力』がその例だそうだ。
「まぁ『力』さえ分かってしまえば、後は上に連絡して一段落じゃ」
そう言って島長さんは立ち上がり、後ろの壁に掛かっている木箱と向かい合った。
「何ですか、それ?」
「通信機じゃよ。少し古いがのぉ」
島長さんは木箱、もとい通信機のボタンを押した。
が、しかし…。
「…む、んん?」
島長さんは、ひっきりなしにボタンを押してはうなった。
「…リフレットよ」
「はい?」
「ライディを呼んできてくれんかの?」
「はい、わかりました」
―10分後―
「あー、これ導線が切れてますね。蓄魔器もオーバーヒートしてますし」
島長さんの家に道具屋のライディさんが来て、そう言った。
島長さん曰く、通信機が動かなかったらしい。それでライディさんを呼んだら、このありさまだったという。
「どうにかしたいのは山々なんですが、いかんせん材料がなくて…」
「材料を頼むにも肝心の通信機は壊れとるし、そもそも船は昨日の内に出港しとるだろう」
「てか親父さん、もう『アレ』受けちゃっても良いんじゃないですか?」
「そうですよ。国から散々通達が来てるんですから」
「うぅむ…」
何だか段々と話が反れてる気がする…。てか、付いていけてない…。
「取りあえず、明日商船が来たときにどうにかせんとんな」
島長さんの呟きを横目に、ライディさんは通信機を再び組み立て、『では、また』と島長さんの家を去っていった。
「どちらにしても、『力』の詳細が分からん限りは下手に報告出来んじゃろう」
結論として事実上の後回しとなり、特に何もなく帰路についた。
「今帰ったよ」
「あら、お帰りなさい」
玄関先にアスナさんが木箱を持って立っていた。
「ちょうど良かったわ、これ裏に持って行って頂戴」
渡された木箱には、野菜と生肉が入っていた。
「えっ、何これ?」
「ラウ達の餌だよ」
『ラウって、誰の事だろう?』と思ったが、そういやリフレットさんは飛竜使いだ。恐らくドラゴンの餌なのだろう。
「ほら、あと3箱あるんだから早く運んじゃって。あなたもよ」
「分かってるよ」
リフレットさんも同じように木箱を持って、家の裏手へ向かう。
そこにあったのは、木に覆われた牛舎のような建物だった。
その建物をぐるっと回ってみると、一面だけ壁が無く、中がまる見えだった。
そこから見えるのは、3頭のドラゴン。本物のドラゴンだ。
「この子達は『ドースレイン』って言う種類のドラゴンなんだ。スピードならドラゴンの中でトップクラスだし、体力もそこそこある。人にはちょっと懐きにくいけど、スペックの高いドラゴンなんだよ」
ドースレインの見た目は、首から先を除くとティラノサウルスにデカい翼を付けたような姿をしていた。
そのドラゴン達にカイ君とサラが餌を与えていた。
「サラ、カイ、残りの餌持ってきたよ」
リフレットさんの声には反応するけど、俺を見るとそっぽを向いてしまうサラ。そんなに嫌われるような事したっけ…?
「カケル君、サラと一緒に水を汲んできてくれないか?」
「あ、はい」
「良いわ別に、一人でやれるわよ」
そう言ってサラは、一人で行ってしまった。
俺はサラの後ろ姿を見失わないように付いていった。
「ちょ、待って…!」
「来ないで」
早足で進むサラは、家のすぐ側にある井戸で立ち止まり、此方を振り向いた。
「アンタ、流浪者だからって調子乗ってんじゃないわよ!」
「い、いや、調子も何も乗ってないけど…」
「とにかく、アンタは何も手伝わなくていいから」
サラは釣瓶を落とし、水を汲む。
その時だった。車井戸の根元が腐っていたのだろう。サラが縄を引っ張った拍子に、それ全体がバキバキと音を立てて崩れたのだ。
崩れる先にはサラがいる。このままでは怪我だけでは済まないだろう。
『危ない』
そう思った時には、既に体が動いていた。
だが、間に合わない。その刹那…
自分の体の中から『何か』が出て行く何かを感じた。
その『何か』が崩れた車井戸を包み込んでいく。
そして俺は無意識の内に『止まれ』と心の中で叫んだ。
皆さんどうも、紫です。
長らくお待たせしました。と言ってもこれまでもまったり投稿だったので、こんな調子で頑張っていきます。
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