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異世界艦隊 ―軍艦好きな奴が異世界でゼロから艦隊を作ったら―  作者: 紫 和春
本編

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76海里目 試験と会議

 「長門」の公試運転と連合艦隊の熟練度向上を目的とした艦隊訓練は無事に終了した。

 結果として「長門」の公試は問題なかったし、艦隊全体の訓練も大きな支障はない。

 それが終わると、俺は大発のテストを行う。

 機関の動作や、前方にある跳ね上げ式の開閉扉は問題なく動作している。

 そこで俺は、一型タンカーに大発を数隻載せ、近くの浜辺に上陸させることを考える。

 とは言っても、テラル島にはまともな浜辺もないため、ヒルノ海上国家にある浜辺を借りることにした。

 早速ヒルノ海上国家の運営を担う中央議会に連絡を取る。

 通信による許可取りだったが、意外にもあっさりと許可がとれた。

 早速一型タンカーの公試ついでの航海を行う。

 俺はテラル島の兵学校の新人隊員を十数人連れて出発した。

 速度は帆船とほぼ同等であるため、連合艦隊の艦と比べるとかなり遅い。

 いつもなら1時間程度で着くヒルノ海上国家も、数時間かけて移動する。

 そして目的の浜辺に到着すると、隊員の数名に大発に乗るように促す。

 俺は艦橋にいる隊員に、一型タンカーの艦尾のバラストタンクに海水を注入するよう指示した。

 これにより、全通式の格納庫から搭載されている大発が一斉に発進できる。

 実際にハッチを開き、艦を傾かせ、大発が発進する様子を、俺は艦の後方上空から眺めた。

 すると、発進の際に後方で詰まってしまって、互いが衝突しそうになっていた。

 これでは大量の大発を発進させたときにぶつかってしまい、上陸する前に戦力を失ってしまう。これは対策を講じねば。

 次に、大発を浜辺に向けて前進させる。

 浜辺に上陸する際には、全速力で乗り上げるのではなく、次第に速度を落としながら上陸するように伝えている。これによって浜辺に完全に乗り上げてしまい、沖に戻れなくなるという心配がなくなるはずだ。

 俺は上空から様子をうかがう。

 数隻の大発が浜辺に突入する。

 少しづつ速度を落とし、浜辺へと突入した。

 乗り上げた所で開閉扉を下ろす。

 これによって上陸の際の一連の動きは確認できた。

 そのまま開閉扉を閉じ、沖に戻るように指示する。

 それぞれが扉を閉め、全力後退する。

 すると、すべての大発が無事に浜辺を離れ、沖の方へと出てきた。

 撤退も問題ないようだ。

 このまま一型タンカーに収容するところまでやる。

 タンカー艦尾に接近した大発は、上部に跳ね上げられたハッチに沿われたトロリーワイヤーを大発艇首に手動で取り付けた。

 そのままトロリーワイヤーで艦内に収容する。

 こうしてすべての大発が収容され、今回の実験は終了である。

 今回の件によって、今回は発進時に大発同士が衝突する可能性があることが判明した。

 テラル島への帰還中、これの対処法について考えた。

 現実的に思いつくのは、発進時には後方に全速力で進むというものだ。

 発進時には一型タンカーは停泊した状態であるから、こうしないと大発同士でぶつかってしまう。

 今後は大発の運用方法についての解説書でも作ったほうがよさそうだ。

 テラル島に戻った俺は、松型駆逐艦の建造を行っている民間造船所に連絡を取る。

 そろそろ松型駆逐艦の後続艦が完成する頃合いだろう。

 実際、どの造船所もあとは竣工を待つのみという状態にあった。

 早速俺は「龍田」に必要な人員を乗せて、造船所に受け取らせに行かせる。

 その間に、俺はヒルノ海上国家を訪れていた。

 防衛連盟軍総合参謀本部と今後の作戦について協議するためだ。

 総合参謀本部に到着すると、ダリ中佐が出迎えてくれた。


「やっと来たな。さぁ、こっちだ」


 俺はダリ中佐に連れられて、とある会議室に通される。

 そこには、将官や佐官クラスの重鎮が何人もいた。

 用意された席に座ると、目の前に座っていた少将が話し始める。


「私は総合参謀本部作戦課のクリコール・グライディンだ。こうして対面するのは初めてだったな」

「以前どこかでお会いしましたっけ?」

「覚えてないか?予備役士官教育課程最高部長を兼任しているのだが」

「あぁ!思い出しました」

「今日は作戦の立案をするからあまり関係ないのだがな」


 そういってグライディン少将は机に置かれた地図を指す。


「以前君はダリに防衛連盟軍が想定している作戦案を聞いたそうだな」

「えぇ、ずいぶんと前ですが」

「今は連合艦隊の戦力がある。なるべくなら君の意見を最大限に取り入れたい。いかがかね?」

「別に構いませんよ」


 そういって俺は、想定している作戦案を伝える。


 まず第一段階として、連合艦隊を使ってバンイ帝国の海上戦力を壊滅状態にする。制海権を得た状態になったところで、一型タンカーを使って防衛連盟陸軍戦力を輸送する。バンイ帝国本土の浜辺に橋頭堡を構築し、以降の作戦前線基地とする。


「陸軍戦力を輸送する艦は、今後民間の造船所を使って量産するつもりです。それでも間に合わない場合は、自分が身を削って建造を行っていくつもりです」

「ふむ、なるほど…」


 そういってグライディン少将は腕を組み、思考を巡らせた。


「我々防衛連盟軍の出番は、上陸作戦と陸軍を輸送するときの護衛のみというわけか」

「極端に言えばそうなります」

「…分かった」


 グライディン少将は立ち上がる。


「まずは連合艦隊の能力を見せてもらおう。そのためにも、上陸作戦の前段作戦としてバンイ帝国海上戦力の漸減作戦を承認する」

「わかりました」

「ちなみに、そのタンカーとやらは一体どれだけ量産できるというのかね?」

「建造の熟練度にもよりますが、最低でも1ヶ月程度はかかりますね」

「ふむ。現在協賛している造船所は6ヶ所あると聞いている。ここは一つ策を講じよう」

「少将、あれを使うのですか?」


 グライディン少将の発言に、ダリ中佐が聞き返す。


「あぁ、戦時造船法を適用する」


 「防衛連盟における戦時中の船舶の建造を指定する法律」、通称戦時造船法を持ち出してきた。

 これは、民間の造船所に対して軍が指定した船舶および艦艇を建造することを可能にした法律である。

 グライディン少将はこれを一型タンカーに適用し、防衛連盟全体で量産することを提案したのだ。

 仮にそれが可能だとしても、一型タンカーを建造できる造船所は限られてくるだろう。

 念のため、俺も量産状態を整えておくか。

 こうして、ひとまずは前段作戦として漸減作戦を実行することになった。

 決行日は詳しく決定していないが、一型タンカーの量産のめどが立つころになるとのことだ。なにせ大規模な陸軍戦力を輸送していかなくてなならない。そのためには一型タンカーの量産は必要不可欠なのである。

 テラル島に戻った俺は、松型駆逐艦を受け取りに行った「龍田」の帰りを待っていた。

 今回の竣工によって、松型駆逐艦は19隻となる。

 これで駆逐艦は合計で31隻となり、戦力としては十分なものになるだろう。

 ちょうど「龍田」と松型駆逐艦がテラル島に戻ってくるころ、防衛連盟軍総合参謀本部作戦課から書類と技術職員がやってくる。

 その書類には、戦時造船法に指定する造船所の一覧があった。どうやら作戦課が主導になって、関係各所をまとめ上げたようだ。

 今回指定する造船所は大小合わせて65ヶ所となる予定である。

 またこれらの造船所には、これまで建造に協力してくれた6ヶ所の造船所から技術者を派遣し、円滑に造船が進められるように手配するようだ。

 早速技術職員は一型タンカーの模型や簡単な設計図、そして試作船の内部を視察しながら、詳細な設計図に書き起こしていく。

 また、大発の設計も一緒に行っていった。大発の建造は小さめの造船所に依頼するつもりだ。

 こうして取得した設計図を元に、各造船所によって建造が進められるだろう。

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