70海里目 編成する艦隊
「古鷹」に航空兵力として、気球を搭載したところで、俺は次の段階に移る。
そう、古鷹型重巡洋艦2番艦の「加古」の建造だ。
2隻目ともなれば、要領は掴めているため、比較的簡単に建造できる。
と、いうわけで早速建造だ。
そんな中、ふとアルトさんがフラッと船台のところまでやってきた。
「建造の状況はどうだ?」
「まぁ、ぼちぼちってところですかね」
「何にせよ、そなたには一刻も早くクレバイルの攻略をしてもらいたいのだからな」
「そんなプレッシャーかけても早くできるわけではないですよ」
「分かってはおるのだが…。うぅむ、もどかしい」
そんなことをぶつくさ呟きながら、アルトさんは建造の様子を眺めていた。
俺はそんなアルトさんを横目に建造を進めていく。
竜骨を設置し、船殻を張っていく。
そこに梁や各種装甲板を貼り付けて船体は大まかに完成だ。
船体内部に、タ号魔術式可変速主缶機や高魔力変換機、超高密度の魔力貯蔵庫を設置したら、上から蓋をするように装甲を張っていく。
また、この時に隊員用の部屋なども一緒に作る。
こうして船体の大部分が完成したら、次は上部構造物の建造だ。
上部構造物とは言っても、環境や煙突、主砲の設置などである。
その辺は比較的簡単だ。
こうして、古鷹型重巡洋艦2番艦「加古」は完成である。
そんな「加古」の建造だが、1ヶ月かそれ以上に時間がかかった。
その理由は、松型駆逐艦量産計画にある。
現在、防衛連盟中で建造が進められている松型駆逐艦は、船体の部分を委託中である。
しかし船体はできても、肝心の主缶機や主砲は製造できない。というか俺しか製造できないのだ。
そのため、松型駆逐艦に搭載する主缶機および主砲、その他諸々の製造をするため、各地を転々と回っていた。
そんな生活を続けること2ヶ月半。
「いよいよ松型駆逐艦第一陣の竣工かぁ」
ここまでよくやって来れたなぁとしみじみ感じる。
今回協力してくれた造船所は6箇所。そのため、「松」も含めて7番艦まで竣工したことになる。
また、松型駆逐艦の搭乗員には、艦橋で指揮を執る連合艦隊隊員数名と、アルトさんが呼びかけた防衛連盟中にいる次期隊員候補のアルトゥル教徒である一般人数十名を当てがった。
こうして松型駆逐艦7隻は、テラル島へと集合する。
「こう見てみると壮観だな」
「でも駆逐艦ですし、大げさじゃないですか?」
「だが、この艦型が何十隻も揃うのだろう?」
「今のところ、その予定です」
「なら、壮大な光景になること間違いなしだろう」
そんなことをトーラス補佐官と話す。
だが今回、テラル島に集まったのは、その光景を見るためではない。
今回は訓練の一環として集まったのだ。
つまり、実際に松型駆逐艦のみで艦隊運動を行い、防衛連盟領域内で哨戒艦としての真意を発揮できるかどうかを確かめる。
「では、早速始めましょうか」
俺は新しい連合艦隊旗艦の「古鷹」に乗艦して、松型駆逐艦隊の様子を見守る。
まずは、周囲の索敵をするため、魚鱗の陣形を行う。駆逐艦のみで構成された艦隊ならこれが効果的だと思われる。
そのまま艦隊運動を行う。しかしまだ練度が足りないのか、結構バラバラになっている。
続いて単縦陣。これは前の艦のあとをついていくだけなので、案外うまく艦隊運動をしているようだ。
そのまま砲撃戦を行う。俺が指示する方向に主砲を向け、砲撃するというものだ。
これも練度不足のようで、1分間に10発もいかないくらいだった。本当はもっとうまくいくはずなんだけどなぁ。
そんな感じで松型駆逐艦7隻による艦隊運動は終了した。
総評としては、初めてにしてはまぁまぁやれていたというところだろう。だが、ところどころ甘さも感じたため、その辺を重点的に訓練していくしかないだろうな。
そんなことを考えながら日々を過ごしていると、トーラス補佐官から一つの情報を受け取る。
「どうやらリクア共和国近海で不穏な動きがあるらしい」
「不穏な動きですか…」
「あぁ。まだ確定事項ではないのだが、クレバイルと思われる艦艇数隻が現れているそうだ」
「うーん。威力偵察ならまだいいんですけどねぇ」
「おそらくそうはならないだろうな。クレバイルは何度か偵察を行ったあとは中規模の艦隊を寄越してくるからな」
「それで、防衛連盟本部からは何か通達が来てたりするんですか?」
「いや。今の所は何もない。だがこの後何かしらの出動命令が来るだろうな」
「…念のため準備だけは進めておきましょう」
「そうだな」
そういって連合艦隊はリクア共和国方面に向かうための準備を進める。
その数日後、防衛連盟本部から正式な通告がやってきた。
その内容は「リクア共和国西側の海域を哨戒せよ」とのことである。
「では、防衛連盟本部から正式な通告が来たので、連合艦隊を出撃させます。今回の出撃は全艦とします」
こうして連合艦隊は、松型駆逐艦も含めた合計19隻で出撃する。こうして見てみるとだいぶ大所帯になったなぁとしみじみ感じるなぁ。
ちなみに、今回はリフレット一家は連れてきていない。彼らの立場はいまだ民間人みたいなものだからな。
約1週間の航海のあと、連合艦隊はリクア共和国の軍港に寄港する。ここで食料などを補給するためだ。
それが終わったのならば、すぐさま目的の海域に出撃する。
「カケル司令官、そろそろ目的の海域だ」
「了解。全艦、複縦陣から魚鱗陣形へ転進」
複縦陣から、松型駆逐艦が矢印の先端になるように艦隊の配置を組み換える。
そして周囲の索敵を始める。
今回の索敵では、目視はもちろん、新技術を使用している。
それが強力なレーダーである。
仕組みは比較的単純で、魔波を飛ばし、その跳ね返りの時間から距離を算出するというものだ。
現代のレーダーでいうとPPIスコープに近い。そんなレーダーを松型駆逐艦に装備させている。
さて、南側から周辺海域を一掃するように、念入りに周辺を捜索する。
「レーダーに感あり。10時方向、何かが接近してきます」
早速何かがかかったようだ。
俺は双眼鏡で確認してみる。
なにやら集団のようだ。
「友軍かも知れない。念のため、防衛連盟軍の標準通信で呼びかけてくれ」
「了解」
通信機でコンタクトを図ってみると、どうやらリクア共和国の領海域警備部隊のようだ。
「これじゃ分かりずらいな。観測用の気球を上げよう」
俺の指示によって、古鷹型に装備されている気球2機が上空に上がっていく。
そのまま北上しながら捜索を続けていく。
だが、どこにも見当たらない。
「古鷹」の艦橋にいた連合艦隊司令部は、一度作戦会議に入った。
「今回西方戦闘海域に程近い場所を約1500km捜索したが、まったくの手がかりがない」
「まぁ、これだけの海域を1つの艦隊が捜索しようとするのが無茶ですからね」
「そもそも、搭載しているレーダーはどの程度の範囲をカバーできるんだね?」
「大体20kmってところですかね」
「これじゃあ話にならんだろう。明日は各艦の距離をもっと広めて行うべきだ」
「しかし、それでは艦隊に穴が開く可能性があります」
「しかし、現状気球による目視とレーダーに頼るほかありませんから、仕方ないと考えるべきでしょう」
こうして夜間も捜索を続けながら、連合艦隊は進んでいくのだった。




