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異世界艦隊 ―軍艦好きな奴が異世界でゼロから艦隊を作ったら―  作者: 紫 和春
本編

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69海里目 飛ぶ兵

 あれから数日。

 今日も今日とて「古鷹」での飛竜発着訓練は行われていた。

 実際、この間のリフレットさんの発艦と着艦は成功だった。

 今は上空にいる飛竜使いと艦橋とを無線で繋ぐ試験をしている途中である。


「もしもし、リフレットさん?聞こえますか?」

「あぁ、感度良好だよ。はっきり聞こえる」

「それじゃあ周囲の様子を教えてください」

「そうだね…。船の進行方向に航行中の商業船がある。多分大丈夫だろうけど、ぶつからないように気を付けてくれ」

「了解です。ではそろそろ戻ってきてください」

「分かった」


 そういってリフレットさんとそのDP(ドラゴンパートナー)は「古鷹」に戻ってくる。

 着艦も見事なもので、直接甲板に降り立ってくれる。

 やっぱり飛竜は水上機として活用した方がいいのではないかと俺は思う。


「ふぅ」

「お疲れ様です、リフレットさん。どうでしたか?」

「うん、良い感じだったね」

「それは良かったです。それじゃあリフレットさんたちは少し休んでいてください。あとはこちらでやることがあるので」

「分かったよ」


 こちらでやることと言えば、砲撃訓練であろう。

 実際、このクラスの主砲を撃つのは若干ながら自信がない。

 もちろん、事前に射撃試験は行っている。だが、前みたいに主砲が壊れるのは勘弁したいところではある。


「主砲射撃用意」

「主砲射撃用意!主砲1番2番、右90度!」

「主砲旋回!1番2番、右90度!」


 前部甲板にある1番砲塔と2番砲塔が旋回する。

 もちろん、今の所は空砲である。


「主砲斉射、撃て」

「てー!」


 腹に来るような衝撃のあと、鼓膜を破るような重低音が響き渡る。

 どうにか射撃は問題なさそうだ。

 だが、どうも後部甲板が騒がしい。

 その時、一人の隊員が報告に入ってくる。


「司令官!飛竜たちがパニックを起こしているようです!」

「なんだって?」


 俺はすぐに後部甲板へと急ぐ。するとそこには、翼を広げ、まるで威嚇するような3匹の飛竜の姿があった。


「まずい、さっきの主砲の音で飛竜たちがびっくりしている!」


 甲板に上がっていたリフレットさんがいう。

 これは大変だ。もしパニックで上部構造物なんか壊されたら一巻の終わりだ。

 俺も飛竜たちをなだめに入る。


「どうどう、大丈夫だよー、問題ないよー」


 そんな感じでなだめても、一向に収まる気配はない。

 ここは一つ、力で止めるしかないか。

 そう考えた俺は、能力を使って飛竜たちの動きを止めた。イメージは文鳥を包み込む手のような感じだ。

 するとどうだろうか。

 先ほどまで何を仕出かすか分からなかった飛竜たちが、たちまちにおとなしくなったではないか。


「ふー、これでOKかな?」

「いやー、助かったよカケル君」

「いえいえ。これも俺のしたことが悪かったんですから」


 これはちょっと考える必要がありそうだ。

 そのあとは、何事もなくテラル島へと帰還した。

 テラル島に戻ると、ひとまずはリフレット一家には暫定的な階級を与えることにした。

 とりあえず、リフレットさんには中尉、サラとカイ君、それにアスナさんには少尉の階級を与えることにして、みんなにはテラル島の兵学校に入学してもらうことにする。

 一応指導者のルクシュー少佐には話を通しており、ここで我が連合艦隊の雰囲気を感じ取ってもらいたいと考えている。

 さて、無事に航空兵力問題は解決したと思われたが、まだ物足りない感じがする。


「飛竜に頼ってばっかりいるのも問題だなぁ」


 そう、テラル島に戻ってくる時に露見した問題である。

 人間でもビビる程度の主砲の発砲音が、人間に飼われているとはいえ生物がパニックにならないのはおかしな話だ。

 そのため、飛竜やその他生物に頼らない、人間の手で作られた航空兵力が必要である。


「とは言っても、何かあったっけなぁ…?」


 今から航空機を作るにしても、労力がかかるし、かと言って作らないわけにもいかない。

 そこでいろいろ考えた結果、一つの結論にたどり着く。


「そうだ、気球だ」


 俺は観測用の気球、もしくは飛行船を作ることを思いついた。

 かの長門型戦艦も竣工時には着弾観測用の気球を搭載していたし、これで代用するのもありかも知れない。

 というわけで、俺は早速気球を作るために技術研究班とともに、気球の製造に入る。


「まずは諸元を決めないとな」


 まず浮力を確保するためにヘリウムを使う。

 ここは水素でもいいかなと思ったが、事故を起こしたときの代償が怖いから却下した。

 全長は20mくらいで搭乗員2名。上空100m程度まで上がれることを想定すれば、現状は問題なさそうだと判断した。

 気球の球皮にはナイロンを使用する。あとは骨格を作ってバスケット周辺の安全を確保すれば完成である。


「やっぱり司令官は違いますねぇ」


 そうミラが呟く。今回技術研究班の出番は、バスケット周辺の設計ぐらいだった。

 今後は技術研究班の人員も増やさないといけなさそうだなぁ。

 そんなわけで完成した気球を、飛行試験させてみる。

 搭乗員はもちろん俺だ。


「それじゃあ、行くぞ」


 気球にワイヤーを取り付け、早速飛ばしてみた。

 風船部分にヘリウムを注入し、膨らませる。

 風船部分が膨れ上がったら、地上に設置してある巻き取り式ワイヤーアンカーを伸ばす。

 すると、気球は次第に上空へと上っていく。

 だがその途中で、風にあおられて、船体が激しくロールしだす。


「うおっとと…」


 俺は能力を使って船体の姿勢を戻していく。

 そうして100mほど上がっていくと、テラル島を一望できる場所に来た。


「おぉー…」


 どうにか気球自体は完成したようだ。

 だが、同時に問題点も見つかった。

 それは船体がロールしやすいということだ。

 これは重心が上に上がっていてバランスを崩しやすいということである。

 乗っていたのが俺だったからよかったものの、この問題は直ちに修正しなければならない。

 早速地上に戻った俺は問題の修正に入る。

 要するに、バスケットや風船部分の下部におもりを載せればよいのだ。

 そして問題を修正したら、再度上空に上る。

 今度は問題なく上がることができた。


「どうでしたか?」

「これなら問題なさそうだ。乗ってみる?」

「いいんですか?」


 そういって技術研究班のみんなを交代で気球に乗せた。

 ミラは楽しそうだったし、他の人たちは腰を抜かしていたり様々であった。

 こうして、連合艦隊の航空兵力の問題はひとまず解決したのである。

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